ざざむし。





アオミドロって美味しいんですか

アオミドロといえば顕微鏡の使い方を習うようになって早々に経験する藻類との遭遇というイメージが残っていますが、いまの時代はどうなんでしょうか。
個人的には小学生になる前から水路で遊んでいたので、どこにでもある藻というイメージ。
夏場は水田に水を送るために地下水が囂々と流されていたので、綺麗に見える水路に生えたアオミドロはなんとなく食べられそうに見えなくもなかったのですが、なんとなく口にしてみた時に「ゴワゴワして食えんやつや」と思ったっきり、食べようと思ったことはありませんでした。


それが実は食用になるというではないですか。
タイなどでは加熱調理はもちろん、サラダでも食べられているとかなんとか。
アレが!?
と思ったところでよくよく思い出してみたら口にしてみたことがあったやつはアオミドロではなかったような。余計な経験が混濁することにより視界に食べ物でないフィルタがかかってしまっていた模様。それなら今度見かけたら食べてみようと思っていたけど、忘れていたので今年は食べてみました。

さて、そのへんにある淡水の藻類の中からまずアオミドロを探さないといけない。
アオミドロ属だけでも世界には500種以上あるという。
それどころかアオミドロっぽく見えてもアオミドロ属でなく顕微鏡で確認しないとわからないようなものもあるらしい。
しかし、そもそもタイで食べられているものがどのアオミドロで、それも確実に特定の一種なのかがよくわからない。味さえよく同じ環境に有毒種でもなければ種を特定することがそこまで重要とも思えないし、アオミドロを食べることになる状況の半分以上はそんなことどうでもいい状況ではないかとも思う。
映像で見る限りではよく見る典型的なアオミドロに見えるので、そんな感じのものを使っていくことにする。
いつになくアバウトです。


とはいえ、これは違う。
昔かじってみて「思ったよりゴワゴワしてるだけで不味い」と思ったやつ、これや。
いくら綺麗な湧水にあっても不味いんじゃ仕方がない。


これはアオミドロのはずだけど黄色っぽくなってドロドロと溶けてしまうようなものは枯死していると思われるので食用としてはいかがなものか。気分の問題もだが、清掃する間に粉々になって殆ど消滅してしまうので、食用にするには実質不可能だといえる。


これくらいなら鮮やかで濃い緑のものを狙って集めればなんとかなりそう。
もっと清流の溜まりなどにもあるのだけど、綺麗すぎるくらいの場所でないと食用に適さないというのでは使い勝手が弱いし、かといってあまりに汚い場所ではアオミドロが細胞壁表層に重金属を集積する性質から考えても食用にはよろしくないので、今回は氾濫した時に繋がる水溜まりに繁茂していた写真の程度のものを使って試してみることにします。


わかっちゃいたけど、混ざってくるゴミが酷い。
エビや水生昆虫、またその抜け殻や、泥の粒の塊はエビや巻貝などの糞だろうか。そして無数の枯れ草の破片など。
帰ってから清掃するとウンザリしそうなので本流の綺麗な場所で手網に入れた状態でゴミを取り除いていく(混入した生物を移動させることにもなりうるので全く別の水系には持ち込まないように)。何度か試すうちにだんだんと効率よく綺麗にするコツがわかってきたが説明が難しい。重い小粒の砂泥などは網目から落ちるので楽だが、絡んでくる軽いゴミは厄介なのでよほどゴミが減ってくるまではフワリと浮かせつつ、ゴミよりも綺麗な部分を摘まんで集めるほうが早い感じがする。


だいたい綺麗になりました。


水から上げるとこんな感じ。
最初からこの状態でいてほしい。
これでも実際は後からまだ0.1%くらいのゴミが見つかるので、調理前に適宜取り除く。


ちなみに綺麗になったアオミドロですが、光の要求量の問題なのか、栄養の問題なのか、水の問題なのかわかりませんが、バケツに水を張っておいても下部からどんどん死滅していきます。冷蔵庫に入れると5日程度は大丈夫なことがわかりましたが、いずれにしても鮮度が重要なことがわかります。
アオミドロのくせに!

実際やってみるとわかると思うんですが、既にこの時点まででめんどくさすぎて食用利用されない理由がこれでもかというほどわかる。
しかし、岩海苔摘みなどを知っている人から見たら誤差程度かなという見方もできる。
美味ければ全ての苦労を押し流せるというくらいのビッグウェーブにアオミドロは乗ることができるのでしょうか。

実食です。


まずはシンプルに味噌汁へ投下。
見た目は採取現場の泥水にぼんやり見えるアオミドロの再現にしかなっていませんが。
おままごとの泥水をすする気分でアオミドロをすすります。
・・・あー
舌触りはちょっと「とろろ昆布」っぽい。
1本1本の太さも半分くらいになったように見え、生の張りのある感じは一切なくなって頼りない、頼りなさすぎる柔らかさ。しかし昆布のような旨味が強い訳でもなく、海苔のように香り高い訳でもない。ただ、こんな頼りない感じなのに歯切れがチャキチャキする。明確なチャキチャキ感は特有なもの。近いものが思い浮かばない。海藻のマツモのチャキチャキ感をTVでよく耳にするボイスチェンジャーを通して音声を異様に高くしたみたいなチャキチャキ感。


味噌の風味が強すぎるのかもしれないので吸い物にも投入してみる。
アラの脂が強すぎたので見た目はちょっとアレだが、風味は明らかに味噌汁よりわかる。
何故かアオサっぽさのある香り。
そしてやはりとろろ昆布っぽさとチャキチャキ感が同居する珍妙な感じだが、残念ながら売れるバランスかと聞かれたらNoかなという微妙な感じ。
悪くもないんだが、だったら薫り高さが尖っているだけアオサでいいじゃないかとなってしまう。


現地では炒めものにも入るというので冷蔵庫にあったアナグマとパプリカで炒めてみた。
細いから髪菜みたいになるのかなと思ったけど、緑は補えるが、これでは歯応えもよくわからなくてあまり意味を感じない。加熱前の歯応えが活かせるのなら話は変わってくるのだが・・・。


酢の物ならどうですか。
赤ずいきとの対比で色はまぁ良いんだけど、やっぱり秒の湯通しでも舌触りが心もとなくなってしまう。
あいかわらずのチャキチャキ感はあるので悪くはないんだけど、もっとよくできる方法があるのではないかと期待してしまう。

これは生を活かす方法を考えたほうがいいんじゃないだろうか。
少し味見した限りでは、薄味の冷製スープや出汁などで生食したらきっと美味い部類だと思う。
しかしどれだけ見た目を綺麗にしたところで雑菌だらけだ。菌類や原生生物の寄生もあるそうなので、どれだけ害の可能性があるのかは不明だがやはり現代日本ではある程度の殺菌工程がないと一般には勧めにくい。いくつか試してみた。

・生 → 適度な張りと強めのチャキチャキ感、のどごしを助ける程度の弱いぬめり。
・80℃1秒 → 極端な軟化・細り、歯応えチャキチャキ感残存少。
・食酢(酢酸4.2%) → 一瞬で極端な軟化・細り、歯応えチャキチャキ感残存少。微妙にぬめり強くなる。
・料理用清酒(Alc.14%)10分 → 生に近いチャキチャキ感、香りも悪くない。

14%程度のアルコールなら歯応えなど生に近いままということがわかったが14%では殺菌効果など微々たるものだろう。


50度ウォッカぶっかけたら一瞬で軟化してダメになった。
ちなみに14度で漬けたものも水洗いしてアルコールを流し、三杯酢に入れたら一瞬で軟化してしまったので酢の物事体がアオミドロを活かしきれないのかもしれない。アルコール濃度ギリギリのラインを探した上で、酢や浸透圧の影響を与えにくそうなドレッシングで食べるサラダなどがいいんだろうか。やはり冷製出汁か。
生は諦めるか、覚悟して食べるしかないのか。
いざという時のために安全の保障はないけど食べられるということだけ覚えておくか。

そう考えると、海外で提供された料理に生っぽいアオミドロが入っていて歯触りがよかった場合は「そもそも種類が異なる場合」と「ちょっと覚悟したほうがいい場合」の二つがあるのかもしれない。この食感を覚えておくことが役立つ日は来るんだろうか。


もう、加熱した際の食感が期待できないのならいっそ粉砕してしまえばいいじゃない。
青いものと混ぜるとどの効果なのかわかりにくくなりそうだし、バターナッツが1個余っているから混ぜてポタージュにしてみましょうか。
バターナッツとアオミドロのポタージュ。
オレンジ色と混ぜたら汚くなるだろうなと思ったけど、思ったほど汚らしくはならなかった。


持ってかれたァァァァァッ orz
一口含んだ瞬間、全開の青海苔臭。
青海苔臭からのカボチャっぽい風味へのグラデーション、そして何故か後味は急激に抹茶オーレ。
乳製品と合わせると抹茶っぽくなる野草はいくつかあるけど、まさかのアオミドロおまえもか。
しかしこのポタージュは売れない。
不味くはないけど、これだからこそ美味しいと言われる要素が見当たらないエクストリーム風味すぎていけない。

だがしかし

大量にあるので保存が効くかどうか、乾燥も試してみます。
まずは採取してきたものを軽く洗いなおして、そのまま平たく伸して乾燥。


猛暑なのですぐ乾くかと思ったのですが、これが意外と水分を保持していて時間がかかる上、海苔のように隙間がつまった紙状にならないゴワゴワのものしかできない。しかも暑すぎることで組織は確実に死んでいくようで、固着しきらないくせに半分溶けるので汁物に入れてしっかり形が残る訳でもないから、そのまま干す意味があるのかどうかいまいちわからない結果に。
ちなみに1枚目は気付いたら乾燥してどっか飛んでいってしまって行方不明。


ということで生アオミドロをザルに入れて、沸騰した湯にザルごと1秒くぐらせ冷水にとり、細胞を壊してから同じことをやってみる。


バットに水を張り、100均の滑り止めシートを使うと剥がれ易くて楽。
広げて引き上げた湯通しアオミドロを干し網の上に反転させ、乾燥。


結着力が上がっているせいか、生のまま乾燥させるよりは薄くてもパリッとするようにできた。
一旦、板アオミドロの完成とする。


余談だが、湯通しすると壊れたアオミドロが網目から抜けて細かくなったものが溜まるので、それもキッチンタオルで濾してみた。


干せたけど、海苔っぽい粘性と細かさのせいか板状のものに置いて乾燥すると全く剥がせない。


仕方なく粉砕。
・・・アオサの香りがする。
アオサほど強烈ではないが、香りそのものはかなり近い。

タコヤキ焼いてふりかけてみた。
同じベクトルだけど明らかにアオサより香りが弱い。
これなら安く大量生産されているヒトエグサとかでええやん。

話を板アオミドロに戻す。

適当に切った板アオミドロを熱々の吸い物に落としてみる。
生よりも香りは豊かになったがやはりアオサほどではない。乾燥して戻ったアオミドロは生からの投入ほどトロトロにはならないがチャキチャキ感は残っており、これはこれでまぁ悪くはない気がする。
急に「〇〇とアオミドロのお吸い物でございます」と言いたい病になったとしても、乾燥保存しておけばいつでも使えるから良いかもしれない。

せっかくなので胡麻油と塩を使って韓国海苔的に韓国アオミドロを作ってみたのだけど、胡麻油に香りを抑え込まれてザクザクするだけの残念な物体に成り下がってしまった。やっぱり合う合わないが顕著に出る。というか、「良い!」と言い切れる料理少なすぎだろアオミドロ。

そういえば揚げて食べてないから揚げも試さないとですね。

フレッシュアオミドロを衣に溶いて、安直ですが磯部揚げ的なものにでもしてみますか。


磯部揚げっていうか川辺揚げとか沼辺揚げですかね。
名に合わせて完成度上げるならニゴイあたりで竹輪作れそうだけど、綺麗に竹輪作るのすごく難しいですよね。


添えたのは海苔天ならぬアオミドロ天。
乾燥させた板アオミドロに片面だけ衣をつけて低温で揚げる。
海苔ほどの香りが出ないので、やっぱり海苔は優秀なんだよなぁと思い知らされる一方、このザクザク感は海苔にはないもの。これはこれで面白いのでハイブリッドにすると面白いものができるかもしれない。あくまでも食材なので、単品で使わなければならないということはないのだから。


たいして期待していなかったんだけど、竹輪とアオミドロが意外にも合う。
海苔ほど尖った芳香はないのだけど優しく香る海藻臭がとても上品で、個人的には天婦羅なのにジャンキーなイメージのある磯部揚げを見直したくなるようなバランス。むしろ普通の磯部揚げよりも飽きがこないのでいくらでも食べられて危険だ。
衣を作りすぎたのでついでにいろいろ揚げたのだけど、ほのかな海藻臭が青野菜の香りを押し上げるようで大葉やオクラなどは一層香り高く感じる仕上がりになったし、白身の魚も良さを邪魔しない支えになるバランスに揚がった。色も悪くないので、やる前は安直かと思ったけど衣に混ぜるのは一つの正解なのかもしれない。

あとはあれかな。
加熱し続けてどこまで歯応えが残り続けるのか。
結果次第では佃煮でも個性は出るかもしれないけど、おそらく香りは弱いので組み合わせる相方が必要かな。

アオミドロをそれなりに食べてみた結果をまとめると
・生は食感がはっきりチャキチャキして小気味よいが安全性に不安が残るので勧められない。
・生で衣に混ぜれば天婦羅にはそこそこ使える。
・加熱や調味料に合わせると歯応えは激減するが消失する訳ではなく、溶けるように縮むがそこまでトロミが出る訳でもない。
・1秒加熱後に乾燥させると香りも上がり、粉砕してアオサの代用、または汁物に入れて戻して使うなど用途は広がるが力強さはない。
・漁業権の対象になることはまず無いと考えられるので有用だが、手間を考えると採取できる場所はわりと綺麗な場所に限られそう。

一言で済ますならアオミドロは人件費かかりすぎな割に食品強度が低い。
せめて海苔並に香ってくれたらもうちょっと積極的に採ってもいい存在になると思うんだけどなぁ。ひとつだけ試すなら川辺揚げがオススメですかね。
ただ、最初にも述べたようにアオミドロ属は一見同じに見えてもあまりにも種が多く、同じ遺伝形質でも多様性がある場合すらあるとかいう話なので、実際には凄く美味い条件がある可能性はあります。それを見つけるのは沼に沈む覚悟でないと無理かもしれませんね。アオミドロだけに。

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Comments & Trackbacks

  • コメント ( 8 )
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  1. アオミドロは、生体をちょっと取ってきて、
    水槽で増やせばゴミなしで食べ放題になりそう。

    液体肥料とお日様でどうか。

  2. 祝 桐谷さん巻末登場

    昔の大和川やその支流周辺で育った人達に、これらの料理を出した後に「アオミドロ料理です」と伝えれば、人類の限界を越えたBダッシュや無双乱舞を披露してくれると思います(笑)
    (流石にせつなさんは半端ねえっす!!)

  3. 旧ざざむしの情報と合わせて知的文化遺産にしたい❤️
    散逸させるには惜しすぎる内容

  4. あらこんなところにアナグマが♪

  5. メダカ飼ってる蓮鉢にこれでもかってくらいある
    なるほど食べられるのですか
    メダカの卵がついてるやつは子持ち昆布みたいなものですね

  6. >食品強度
    超人強度みたいですね。
    ランキングが見てみたいかもw

  7. アオミドロを食材として(一瞬でも)考えたことに脱帽です。

  8. あの藻って食べられるんですね…
    いかに日頃から食べられないフィルターをかけていることがわかります

コメントしたければしてもいいのよ?(カエストハイッテナイ)

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