ざざむし。





ドスイカの味が聞いてた話と違いすぎた件


セイコマっていいですよね。近所に欲しい。

昨年、北海道の海に浮かんでとあるイカを狙っていました。
触腕しか釣れたことのない謎の深海イカがいるということで全国から変態が集まって船を出した訳ですが、なにせ身切れしやすいらしくどうやったら水面まで上げられるのかも全くわかっていません。
サイズ的にもかなり大きいらしく、学術的にも貴重ということでなかなか夢のある話ですが、それが手が届くところに転がっているのにどうにもならないでいるというのがなんとも夢があるではないですか。良き。

ツノやスッテによるシンプルなイカ仕掛けからタルイカ用の大型カンナの吹き流しなどまで各々思うような仕掛けでチャレンジしたのですが、エサにはちょいちょいイカの咬み痕らしきものがついてきます。
エサはサンマかスルメイカの1本掛け。


フグにしては鋭角すぎるついばんだ痕は多分イカでしょうが、目的のイカにしては小さい。
まぁ、大きな生物も最初から大きい訳ではないから希望は捨ててはいけないけど。


私もいくつか考えてはいったのですが、足が自切されるならボディーに掛けたらどうなのかと、巨大なテコ式フックを自作していったものがやたら反応よく、何かにサンマが食われる。
しかしアタリはわかるのになかなか掛からない。
やはり外套膜もクラゲダコのようにいかにも深海イカな柔らかボディーなんだろうか。


うそやろ・・・
ここの深海中層に何がいるの?
魚かイカかすらわからない。
うっかり口に入ることも想定してウニ通し式で食わせ鈎もサンマの中に仕込んだのに、見事にその鈎に達したところで避けられている。しかもそれを何度もくらった。完全に金属を避けている感じがする。
巨大カンナの鈎先には何かのイカの赤い表皮だけが残ってきたりもした。
本命なのかドスイカなのかもわからないが、ドスイカにしてはサイズ的にこの位置に掛かるのはどうなんだろうか。

今回のターゲットとしては外道となるがドスイカは結構いるらしい。
しかしこのイカもまた異常に自切するのでアタリの数に対してそうそう水面まで上がってくれない。

そんな中、MonsterKissの吉田さんがやりおった。

ドスイカ・・・ですよね。
生きてるドスイカ初めて見ました。
なんで海中から上がってきたばかりでこんなきったない見た目なんですか。
しかも写真撮ろうとしたらファインダー越しに触腕がポロリと落ちた。
は!?
こんな簡単に自切するんじゃ簡単に上がってこない訳だよ。

この日は船中でイカはこのドスイカ1杯のみで終了。
せっかくの超鮮度のドスイカなので冷やして大切に宿へ持ち帰った。


汚いだろ・・・これ釣れて5時間後くらいなんだぜ。
知らなかったら腐ってるんじゃないかと思う見た目だよね。
真水にも触れてないでこれだよ。
釣れた時から腐ってそうな見た目だったけど、更に腐敗度が高まった見た目になった。


でも目は生き生きしてるんだよな。

ドスイカは見た目の汚さもさることながら、水っぽくて味が薄いと聞く。
ネットで魚介類を検索するとよく出てくるので参考にされることが多いであろう市場魚類図鑑ですら「刺身は味がない」となっている。まぁ深海イカにありがちなアンモニア系じゃなきゃいいじゃん。鮮度よさげなら食感とか違うかもだし、貴重な経験は大事にしておきたいよね。

とにかく剥きにくい皮をなんとかしつつ刺身にしてみた。


見た目は普通にイカだね。
よく見ると水っぽさも伝わってくる感じはなくはない。

問題の味は
・・・甘エビ!?
は?
なんで!?
ドスイカなんで!?
味ないんじゃなかったんですか?
歯応えはイカとしてはおとなしすぎるが、甘味はちゃんとあり、なにより口に広がる風味が甘エビことホッコクアカエビだ。鮮度抜群の甘エビの弱めの甘味と鮮度の落ちた夕方の値引き甘エビの食感を合成してエビの筋肉食感を取り去った感じ。ナンダコレ。聞いてた話と違いすぎる。

意外に美味しいのでペロリとなくなった。

翌日もチャレンジは続く

もうちっとだけ続くんじゃ。


またしても吉田さんがドスイカを上げた。
相変わらずきったない見た目だけど、途中で何かに襲われてる痕跡があるな。フグなのか他のイカなのか。フグっぽいかな。


しかも2杯目まで。
上がってきた時点で触腕がない。ショックで自切したんだろうな。
こんな程度で自切するんじゃエサによっては暴れたショックで切れてなくなることあるんじゃないかと思ってしまう。船長が「何故か足8本のと10本のがいる」と言ってたのはそういうことだろうと納得した。
ここまででわかったのは、このイカ、いわゆるカラストンビに掛からない限りよっぽど運よくなければ釣り上げるのほぼ無理。足や胴に掛かったら切れてしまうようだ。噛む力が必要なのか何なのかわからないがカラストンビだけは丈夫。これ重要。

試行錯誤するも結果が出ないので、私も小型狙いに変更。
運よく小型の本命が掛かればヨシ、外道のドスイカでもまぁヨシ、ドスイカが掛かってそれに本命が抱きついてきてくれたら最高。という希望。


しかしゲソしか釣れてくれない。
ヘタクソだと触腕だけ釣れてくるということはイカ釣りではよくあることだけど、このイカは足に掛かると自切してしまうのか負荷に耐えられないのか、アワセようがアワセまいがゆっくり上げてきても触腕でなくとも問答無用で切れてしまうようで皆大苦戦を強いられた。


テカギイカ科であることがわかりやすい吸盤の爪。
スルメイカなどのツツイカは吸盤が一周ギザギザになっているが、この仲間は吸盤1個1個に鋭い爪がついている。


まだ動いてる超鮮度のゲソなら味はどうだろうか。
皮を剥いて食べてみる。
・・・さすがに味は薄いな。
食感は鮮度の落ちた甘エビから筋繊維食感を取り除き、更に寒天のダマを合成したような感じか。
しかし薄いとはいえ、この鮮度ですらほんのり甘エビっぽさはある。
とりあえず、このイカは超鮮度にこだわる必要はなさそうだ。昨日持ち帰ったやつのほうが確実にうまい。

で、結局、本命は体のパーツすら釣れず今回のチャレンジは終了。
夢はおあずけとなった。

持ち帰ったものを食べてみた

帰るのに意外と時間がかかってしまい、真空パネル入りのクーラーBOXの中とはいえ釣れた時間から2日近くが経ってしまった。


ざわ・・・ざわ・・・

どう考えてもヤバさしかない見た目。
さすがにアカンのでは・・・


いやー、釣りたてを知ってると確実に鮮度落ちてるのわかりますね。

これはさすがに生はアカンやつだろうか。
でも流通させること考えるとこれくらいはギリギリもってくれないと困るよね。


息苦しさからかテンタクラリアかニベリニアかわからないが体内から出てきていた。

まだ元気。なんとなくイカも生でいけそうな気がしてきた。


口は一般的なイカとあんまり変わらない感じ。


少ない内臓を取り除いた状態。

サッと真水で洗ったらこのありさま。ひどい。


市場魚介類図鑑に50度の湯をくぐらせると皮が剥きやすいとあるので1杯は試してみることに。

しかし思いのほかめんどくさく、いまいち楽になった気がしない。
エビは表面を湯通しすることで別の甘味が引き立つが、イカではあまり感じたことがない。甘エビっぽい風味を感じたイカだからそのへんはどうなるかちょっと気になるところ。


残り1杯は初回に気づいた方法で最初から試してみる。

それはそれとして内臓の色が移ってしまうほど鮮度低下していてこれはいただけない。
鮮度低下した部分は生食はやめておこう。


やっぱりね。

イカは刺身にする際に皮を剥いてから薄皮を剥くものが多くあるけど、ドスイカは最初から薄皮を掴んで剥くと一気に皮が剥けるのがわかった。これがいちばん早そう。


エンペラも同様にいける。

これで次回からはだいぶ楽になりそう。
・・・次回とは。


ゲソは・・・マシそうなところだけにしておこうか。

ちょっと怖いわ。


生きている時を知っていると明らかに瞳孔開いたみたいな見た目に見えるけど、これだけ見たらそこまで酷く鮮度落ちているようにも見えないんだよね。


はい。

「湯剥き」と「いきなり薄皮剥き」での2日目刺身比較。

比較した結果、やっぱり湯剥きしたところでエビのような甘味は出ない。
風味や食感がよくなった要素は一切なく、剥くのも薄皮から一気に剥がすほうが早いのがわかってしまったので、うっかり湯通ししすぎるリスクを考えると今後は湯通しはしなくてよさそう。

初日レポで流した部位ごとの感想は以下。


いわゆる胴の部分。

初日よりも更に若干柔らかく溶けるような感じが加わった。
風味は僅かに落ちたが、それでも甘エビ風味はある。
あんな見た目まで鮮度低下したにも関わらず刺身としてなんとかなっていることに驚き。
初日のほうが美味しいな。


鮮度のよいイカだと別格のコリコリ感があって歯応え重視のエンペラだが、初日のものも含めこのイカのエンペラは価値を感じない。初日も2日目も関係なしにコリコリ感はなく、サクサクな訳でもなく、中途半端に柔らかい。

それでいてなにより甘エビ風味もイカ風味も他の部位に比べてめちゃくちゃ薄い。
こんなもの皮剥く手間を考えたら加熱してしまえばいいと思う。


なによりよかったのはゲソ。

サイズ的にも甘エビくらいというのもあるが、甘エビ風味が強めにある上で食感もザク感が微妙に強めなので何食ってるのかよくわからない気持ちになる。それでいてエビの筋繊維のジョキジョキ感を一切感じないので面白い。
僅かに柔らかくなっては感じる上に甘エビのようなネットリ感が増している訳でもなく、本家に比べるとイカ感もエビ感も中途半端に下がって感じるので、僅差でやっぱり初日のほうが美味しいとはいえる。


部位ごとに少しずつ茹でてもみたが、これは本当に味がなくなる。

甘味も風味もどこに消えるのか完全に消滅。
無味というか18倍希釈イカというか。
そのくらい微妙。

これは刺身用に湯剥きする際にうっかり熱を通しすぎると味がなくなる危険性を感じる。


色が変わってしまったヤバそうな部分はフライにしてみました。
北海道でもフライ定食にドスイカがあったので食べましたが、多少鮮度落ちても同じですね。
異常に柔らかく、頑張れば舌だけでちぎれそうな柔らかさですがイカらしい弾力がある不思議な感じです。イカの風味はありますが弱く、イカらしいのにイカっぽくないというのはなんとも表現に困る。小さな子供や歯の弱い老人に好かれると現地で聞いたけど、なるほどそれはそうかと納得できる感じではあります。

が、湯通しした時と同じでやはり刺身の時の甘味や風味は完全に消滅しています。
ドスイカは北海道だけでなく東北から北陸にかけて水揚げされるイカなのですが、この通りの見た目なので鮮魚での流通は地産地消にとどまることが多いと思われます。
しかし生でないとわからない風味が意外すぎたので、知っている人しか楽しめない面白さとして鮮度のよいものを見かけたら買ってみるとよいかもしれません。

イカは鮮度や熟成によっては大きく食味が変化しますが、魚類と違ってサイズ差や季節差で基本的な味の要素が変わるということはあまりない生物だと思っているので、今回のドスイカがたまたま甘エビ風味だったとはちょっと考えにくいです。
あるとすれば輸送時に水に触れることで旨味や風味も抜ける可能性?
でもイカって普通は水氷にも漬けないですし、謎は深まります。
なんにせよ、巷で言われていることもアテにならないことは時々あるのですが、ドスイカもまさにそれでしたというお話どす。

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Comments & Trackbacks

  • コメント ( 8 )
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  1. 昨日、札幌の居酒屋で羅臼産ドスイカのフライを食べました。柔らかくてとても美味しかったです!店主によると、湯引きしてから揚げないと油が跳ねて大変だそうです。

  2. 皮の表面に取れやすい皮が覆ってる感じでしょうか。見た目は酷いですが身の鮮度自体はそんなに落ちてないのかもしれませんね。

  3. せつなさんがシビレエイかなんか食べてる記事の時にまだ結婚してましたが、別れてうん年。
    久しぶりにTwitter経由で発見、覗いたら新しい世界が展開されていてわくわくが止まりません。
    ゲスイカ、誰かくれないかな、九州だから無理か(釣りにいく気は更々ない)
    そういえば近年割りと御目にかかるヒョウモンダコって食えるのだろうか…
    いや、食わなくていいです…マジで

  4. スギ花粉を食べて1年

    もっと投稿頻度増やして

  5. ざざむしさんが復活してた(ブログ)
    これからも色々と食べてって下さい

  6. ちなみに本命はなんだったんですか?
    秘密?

  7. 甘海老の味がするのは興味深いですね…

  8. シノノメサカタザメ

    いつ出てくるかと思ってたら最後の最後に語尾のどすがでた!
    その様子じゃ冷凍しても解凍の過程でダメになりそうですかねぇ。

コメントしたければしてもいいのよ?(カエストハイッテナイ)

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