ざざむし。





クロスジギンヤンマが逃がすに逃がせないので食べてみた話

最近は自然を相手にしているとですね、情報発信の結果9の利点と1の欠点が想像できた時、その1の欠点が近い未来に5とか8とかの威力に成長してしまうような気がして、何も発信したくなくなることが増えました。
食べることに関して言うと、大多数が真似しないであろう理由のあるものならともかく「非常に美味しい」「高価」「希少」などといった付加価値になるものの公開は結果的に自分の首を絞めるだけでなく、人類の損失にまでなりかねないと感じることがあります。
それはそれとして、うまく使わないと勿体ないだろと感じてしまう事象との狭間でジレンマが発生してしまう。


今回は普段ならこんなに持ち帰ることはまずないなというクロスジギンヤンマのヤゴの話。

とある個人宅の池の水ぜんぶ抜かない掃除をしていたところ、めっちゃヤゴがいた訳です。

この池、実は流行りのお高いメダカがわんさか放されているのですが、何故か聞いていたほどには派手なメダカが見当たらないんですね。鳥避けのテグスは張られていたのですが、犯人はどう考えてもトンボです。そりゃ目立って捕らえ易いメダカがいっぱいいるわ、スイレンはたくさんあるわ、サギからは守られているわ、いろんなトンボが喜んで産卵もしますわな。

で、こんなにいたんですが、いつもはもっとたくさんいるんだとか。
当然ここでは害虫ということになるので駆除するしかない訳です。
ゆーても減ってるところでは減ってる生物ですし、近所に同様の水辺があったら避難させたくなる気持ちもある。でも生物って必ず何かを食べている訳で、トンボに関しては肉食なんですよね。しかも今回のこの大型種はクロスジギンヤンマ。昆虫の中ではわりと上位捕食者になりモリモリ食べるので小さな水塊に放てば一時的にでもなにかしらのバランスは変化します。
そもそもがそんな水溜まりすら近くになかった訳ですが。

そして近所でもなかった為、「食べるしかないよね」ということでお持ち帰りすることになりました。
いつもはアオミドロや腐ったスイレンの葉などと共に陸揚げして腐っていたようなので、まぁ有効利用かな。で、先に言ってしまうとそこまで強烈に推せる結果にはなりませんでした。蟲喰ロトワさん的な評価をすると、伸びしろである将来性の点数がいろんな面で低すぎるんですね。だからUPしてもいいかなと思った訳です。

いわゆる赤トンボ系のものやイトトンボの仲間を含め複数種が混ざっていました。


3月でしたが、持ち帰った時点でクロスジギンヤンマ以外の小型ヤゴは食われまくっていました。
クロスジギンヤンマの小型のヤゴと思われるものもいたのですが、彼らは全く食われておらず、共食いは最終手段なのかもしれません。


採ってきた段階でこのサイズ。
オニヤンマに比べてツルツルしたヤゴなのでなんとなく清潔感があり、食べるならこういうヤゴであってほしいという姿をしています。サイズや時期的に、もう次の脱皮は羽化になるでしょう。


いろんなヤゴを食べ比べようかとも思ったのですが、小型ヤゴは相当な数がないと食材としては非効率なのでしばらくこのままヨコエビなどをエサとして投入しながら飼育することに。
・・・最強のヤゴが残るだけかもしれないが。


約2か月経過。
クロスジギンヤンマ以外のヤゴは全て食われてしまい、朝起きたら羽化がはじまっていました。
そろそろ食べねばなりません。

ちなみにクロスジギンヤンマはRDB的には4県ほど準絶滅危惧種になっている程度で、まだ割といるほうみたい。


何するにしてもとりあえずタンパク質を固める為に一旦茹でるとします。
2分。
色はエビのように赤くならないどころか殆ど変化がなく、伸びも縮みもしないのでイマイチ食欲が湧いてこない。
そして何故かツクシを茹でた時のような香りがする。

茹でクロスジギンヤンマ


いつも通り、ひとまずは茹でただけで味見してみます。
ヤゴは尻からジェット噴射で移動するので塩茹でだと塩分過多になる可能性があるかなと思い、ただの湯で茹でてあります。味が足りないようなら塩をつけていきましょうか。


まずは成虫。
残念すぎる見た目ですが、普通に飛んでいたトンボと違ってまだソフトシェル気味なのもあってか、頭も意外に柔らかめ。どことなくナッツ系の風味があるが、微妙に皮が口に残るので単体で食べるものではないなという感じ。


トンボ成虫を食べる上ではここが本体というか、ここしかないとも言える胸部。
やはり肉の味が濃い。セミと鶏肉を足したような感じで旨味が強い。塩いらないな。しかしやはり皮が若干気になる。
腹は羽化したままということで内容物を気にせず食べられるが、基本スッカスカなのであまり意味がない。なんか不思議な甘味があるが、皮残りのほうが気になるので万人受けはしない。
そして翅は茹でただけだと噛みきれもしなくてただのゴミ。
しかしこの薄さでこの強度を誇るというのを考えると昆虫ってすごい。


そして期待の幼虫。
頭の皮かたっ!
硬いというか、厚いのか。頭も味は良い。


胸部の見た目は成虫と似た赤身だけど、風味はセミっぽさというより蛾に多い芋虫系幼虫の味のほうが近い感じがする。

そして成虫と異なり、腹も中腹までは身が詰まっているのだけど、最後1/3くらいはやはり推進力を得る為の空洞なのだろう、スカスカで更に尻の先が硬い。
茹でて食べた感じ、「味は濃くて美味しいが外骨格がかなり気になるので上級者向けになってしまうな」という印象。

揚げクロスジギンヤンマ

茹でてみたものの、皮が気になりすぎるのでセオリー通りに揚げてみる。

全くピンとは戻らず見た目は期待外れ。
翅は軽すぎるほどの食感で食べ易くなり、全体に風味がバッタ類よりもエビっぽさが強い。アスタキサンチンとエビっぽさは無関係なんだなと実感させられる。ただ、胸肉の風味はわかりにくくなり単調化した感じ。
よく考えたらヨコエビをエサに多く与えていたから風味に影響が出た可能性もあるので要再確認ではある。

ついでに揚げてみた脱皮殻だが、成虫同様のエビっぽいキチン香でもするのかと思いきや意外にほぼ無味。
ただひたすらに軽くサクサクなので食感の邪魔にはならないから飾りには使えるかも。


もちろん主役なのでヤゴも揚げる。
抜け殻は全く伸びなかったが、幼虫自体はやはり殆どの昆虫同様に腹節が伸びて見た目だけはお得感がある。
殻に若干粘りというか弾力を感じつつサクサクする食べ応え食感。成虫ほどエビ殻っぽさは強くなく、典型的な虫風味と半々な感じ。気をつけたほうがよいと思ったのは三又に尖った尻の先で、口の中に刺さる。僅か5匹なのに2回刺さった。能動的に刺してくるんじゃないかと言いたくなるような刺さり方をした。確実に横から噛むためには尻先から食べるのが正解なのかもしれない。もしくはこのために口の中を日頃から鍛えておくかどちらかだ。

旨味は強いものの、思ったほど皮が食べ易くはなりきれておらず、もっと本格的に水分を飛ばす調理のほうがいいのかもしれない。水分飛ばす方法もいろいろあるが、本調理で飛ばすものと予め干して飛ばすのがあるがどうするか。

玉子ヤゴ

小型のカニを甘辛く仕上げたおつまみに玉子カニってあるじゃないですか。あんな甘く濃い味付けにしてあるにも関わらずカニの風味が強くて、調理って相性なんだなぁと思わせられるやつですが、ヤゴの風味が残ってくれるかどうかはやってみないとサッパリわからない。


やってみた。
赤色1号を使ったばかりに溶岩から出てきたモンスターみたいになってしまった。
クッソめんどくさい。とにかく焦げないように仕上げるのがめんどくさすぎてやってられない。
見た目はなかなか良いが味はどうかというと、茹でた時の旨味と揚げた香気が半々くらいでちょうど間をとったような感じ。問題の皮の強さもじっくり焼き上げたことで茹でただけよりもかなり食べ易くなっており、甘さと風味の相性も悪くはなく食べ易さとしてもオススメできる。
ただ、作りにくさゆえに全くオススメできない。

もっと簡単なものでないと再度作ろうとは思えない。

チョコヤゴ

チョコバッタが美味しいんだからチョコヤゴも多分美味しい説を提唱したい。
茹でたヤゴを電子レンジに入れ、様子を見ながら計1分半ほど加熱。

ちなみに最初の10秒で尻に刺した串がレンジ内でポンポン音をたてて全て射出されるという珍事が発生。
中身は微妙に乾燥しきっていないかなというくらいで止め、湯煎したチョコにくぐらせ冷やす。


チョコヤゴ完成。
チョコを薄めにコーティングしてヤゴらしさを前面に押し出すも、チョコを厚くしてヤゴ感を消し去るも自由自在。


問題の味はどうか。


小枝っぽいやーん
ほんのり香るナッツっぽさというかパフっぽさというか、ああいった香ばしさと冷やされたチョコで中途半端なサク感がキレのよいザク感に変わったことが合わさっていきなり完成度が上がった。
これならまとめて作ってもたいした手間ではないし、機会があればやってもいいだろう。


ただ、意外なのはヤゴの姿がわからないようチョコを厚くしたほう。
チョコを厚くしたほうが何故か皮を強く感じてしまう。これがバランスの妙なんでしょうね。
うまさで言ったら確実にチョコを適度に薄く纏わせて固めたものが圧勝だ。
見た目を気にするばかりに不味くしてしまう現象の例として最適ではないか。
見た目は慣れろ。

ヤゴせん

やっぱりカリッとした食感は重要なのがわかったけど、なんやかんや言ってチョコは強すぎるのでもうちょっとシンプルなものでなんとかしたいところ。姿も大切にと言ったらアレしかないでしょう。


ポイッと乗せて


ガッとやって
仕上げにレンチン2分


化石みたいな煎餅ができました。
エビせんやイカせんが美味しくできるならヤゴで煎餅作ったって美味しくなるのでは?
・・・と思ったのですが、残念。

揚げた時のようなエビの香りが出ない。
焼く際に表面に軽く油を使ったので香るかと思ったのに、全く足りていないのかなんなのか香ばしい米の香りに潰されてしまいました。食感はサクサクになったのですが旨味もボヤけてしまった印象。
なんでやー
むしろ米の優秀さを思い知らされてしまう結果に。
見た目は化石みたいな感じで悪くないのになぁ。


ちなみに右下は生地に乾燥アオミドロを入れたもの。
もっとストレートにアオサっぽい香りに仕上がるかと思いきや、「アッ、この風味の煎餅食べたことあるわ」っていう海苔の混ざったデンプン系煎餅の味になった。


そして風味からヤゴの存在感は更になくなってしまった。
一体どうしたらよかったんだ?


まぁ、悪さをしている要素は何もなくて、普通に美味しい煎餅として「ちゃんと食べてる感」は得られるので、ヤゴを大量に処分しなければならないという時でなければこれでいいのかなと思えなくはない。
ただ、ヤゴである必要性を問われると微妙といわざるをえない。

ヤゴはタイなどでは普通に食材として売られているし、昆虫食の世界では商品としてヤゴパウダーなんてのもありましたね。
どんなヤゴか知りませんが、タイでは生きたまま溶き卵に投入して尻から溶き卵を吸わせて炒める料理があるんだそう。なるほど空洞があることを逆に利用する訳かと感心するものの、今回使ったようなヤンマ系のヤゴくらいの数と大きさがないとあまり結果に結びつかなそうではある。

トンボ自体が更なる捕食者にも農薬にも弱い生物なので昔に比べれば減っている生物だけど、かといって野生生物はどこで捕れてもどこにでも増やして放ってよいかというと、そうではないことがわかってきている昨今、トンボって飛んできてわりと変なところにも卵を産んでしまうので扱いに困ることがたまにある。
大量捕獲して食べてもいいというほど安定した場所もあまり知らないので率先してヤゴを食べる為に採るということは今後もあまりないとは思うけど、いずれ今回みたいな行き場のない大型のヤゴがまとまって手に入ったらタイ式で調理してみますかね。


それまではガサガサで捕れても愛でるだけでいいかな。
叫ぶほど美味い評価にならなくて良かったな君達。

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Comments & Trackbacks

  • コメント ( 10 )
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  1. 旧ざざむしからのファンです。
    せつなさんの文章は、わかりやすく、しかも読み物として楽しい。下手な書物よりもずっと勉強になります。出版してくれないかなくらいと思っておりました。
    また、一連のコンテンツは、学術的にも優れていると思っております。あくまでも個人的な意見ですが、これらの素晴らしい経験と知識を発信しないままとは、大変な損失であると思います。
    ただ、冒頭でおっしゃられている事も確かに。残念な事ですが、発言には常に何らかのリスクが伴うというのも、事実です。ご自身の思うままになさるのが良いかと思いますが、ファンとしては、今までのように、楽しいコンテンツがアップされるといいなぁと思っております。

  2. ざざむしの記事は面白おかしく興味深くて大好きで、復活してからは毎日更新が無いか
    身に来るようになってました。なので更新が少ないのを寂しく感じています。
    ただ、記事などが滞る理由に冒頭の様な話を聞くと、
    いつまでも子供ではいられないというか、大人になって複雑な社会にもまれて
    目に見える物見えない物色んなものに配慮していかないと行けなくなると
    まぁ、仕方が無いですね……。
    自然を大事にするのも良いですが、ご自分の心も大事になさってくださいね。

  3. 記事の本筋ではないのですが
    クロスジギンヤンマのヤゴ同士の共食いは無く、他の種のヤゴだけ食べられていたと言うのが興味を惹かれました。

    他種ヤゴが居なくなり余裕が無くなれば同種の共食いは発生するものと思いますが、あの時点では選別をしてると言う事でしょうか?

    他種のヤゴを食べるというのはカラスが鳩を食べるような感じ?
    自分が何者かも認識も出来てる?
    目の前の動くものをなんでも捕食する程度の認識でいたので目からウロコでした。。。

  4. 思ったより肉肉しい中身…

  5. 他に上手に発信してる人がいますから、あなたはもう発信しなくていいと思いますよ

    狭いコミュニティで楽しく過ごしてください

    • 他に上手に発信している人をご存知なら、あなたはもうここに来なくていいと思いますよ

      他所のコミュニティで楽しく過ごしてください

  6. チョコを厚くすると外骨格が湿気るのかな

  7. 味とか度外視して「化石せんべい」みたいな感じで売れば少し売れそう
    と思うくらいには化石感ある。

  8. せつなさんだー!
    生きてたー!

  9. 冒頭で「ああ、昔の無邪気に宝物を紹介してくれるせつなさんはもう戻ってこないのか」と感傷に浸って読んだら、そうでもなかった件です。
    肩書きが「料理研究家」でも良さそうな向き合い方になってきましたね。
    チョコヤゴがナスカ絵みたいで笑いましたし、とっても楽しい内容でした!

コメントしたければしてもいいのよ?(カエストハイッテナイ)

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