今回のミズウオは釣ったのも拾ったのも鮮度は変わらないので、持ち帰ったものをまとめて調理してみました。
とにかく不味いことで有名なのですが、「水っぽくて不味い」という以上のわかりやすい感想は意外に少ない。
できるだけいろいろ試して、わかりやすく記録できればと思います。
できたら美味い食べ方を見つけたい。
えーと
まず、なんですかその大量の水は。
そんなもの入れた覚えはないんですが。
これが噂に聞く、ミズウオから湧き出る泉ですか。
ミズウオはなんでも食べてしまうので汚染度の指標にもなるなどと言われています。
中にはミズウオヒレギレイカのようにミズウオの胃からしか発見されていない生物もいます。
胃袋チェックは欠かせません。
まず、釣れたやつから。
スルメイカっぽいやつを主体に、クラゲとかよくわからないものが少々。
次に拾ったやつその1
バラン・爽健美茶の皮・紐・石・コンビニ割り箸の袋・その他
模範的なゴミですね。
更に拾ったやつ2
!?
まな板が48cmあるので、体に対して触腕がめっちゃ長いです。
何かと思いましたが胴を噛み切られたユウレイイカのようです。
魚は半消化でよくわかりませんが、ナメハダカかクロタチカマスかミズウオの子か何でしょうね。
ミズウオの子がそのまんまの形してるかどうか知らんけど。
肛門から後ろが妙に短いし、鰭は全部溶けてなくなってるし、身も真っ白になっちゃっててよくわからん。
いくつか食べてみたのは副産物編で。
胃袋は裏返してみたら、3匹ともアニサキスとニベリニアやテンタクラリアのような寄生虫が10~20匹寄生していました。
こんなでも栄養は搾取できるんやろなぁ。
さて、ここから、長い長い戦いが始まることになります。
噂に違わぬぷるんぷるんっぷりですね。
ここまでなら他の魚でもあるので驚くほどではないです。
しかし
これは前のほうの背中側。
決して身割れしている訳ではなく、まるでゼリーのような透明な組織があるのがわかる。
背骨。
結構太いのに、なんという透明度か。
背骨はとりあえず干してみよう。
心臓までなんだかわからない透明なものに覆われている!
そして130cmの魚体に対して小指の先くらいの小ささ。
おかしいだろw
なんだよその肝臓に対する胆嚢の大きさは!
しかも肝臓も体に対して小さすぎる。
まずは内臓と共に煮付け。
奥から時計回りに、本体・胃袋・肝臓・心臓。
目玉も煮たのだが、水晶体とガワ以外溶けて消滅したw
心臓は味も食感も鶏のキンカンのような感じ。しかしサイズが小さすぎて、魚類の心臓としては弱すぎ価値なし。
胃袋は適度なコリコリがあってなかなか良い・・・のだが、プルプルで水っぽかった胃袋が胃液も封じていたのか微妙に苦味を感じる。
肝臓は適度な張りがありつつも柔らかく、最も旨味は強いが、いかんせんサイズが小さすぎる。
そして問題の本体。
縮んだことで骨が露出してわかりやすいでしょう。
さばいていた時からわかってはいたが、この骨が厄介すぎる。
縦の背骨に対して平行に近い形で両サイドに埋没している骨がある。
しかも更に、写真では埋まっていて見えないが、背骨から90度両サイドに向けて生えた小骨が尻尾のほうまでずっと並んでいる。
ウツボやクロシビカマスに慣れた身でもこいつは柔らかすぎる筋肉も手伝ってか、骨を避けてさばくのが規格外に難しい。
そして
まっずい(確信
なんだこれ
なんだこれ
なんだこれ
なんだこれ
なんだこれ
本当に水っぽい。
煮込んだにも関わらず、ほぐしたところからは透明な液体が溢れ出てくる。
純粋な水という訳でもなく、脂由来と思えるような旨味が僅かに舌に感じられるが、それでも殆ど水のような液体だ。
鼻水のような液体と言ったほうが近いかもしれない。
熱が通ったはずの筋肉すら透明感があり、意外なのは皮が丈夫になってしまったことで中の水分を完全に封じ込める役割をしてしまっている。
温かいうちはまだしも、冷めてくると庇いようのない不味さ。
早く食べてしまいたいが四方から厄介な角度で埋没している骨が邪魔すぎ、食べている間に冷めてしまう。
すると途端にでゅるんでゅるんの生臭い半透明な何かに成り下がる。
煮付けるにしても切り方が重要になるし、皮も剥いて煮たほうが良さそうだ。
全ての基準となるので刺身も試しておかないと。
普通の刺身と、ヅケ。
刺身コンニャクか何かかと思える見た目だが、遥かに柔らかい。
いや、柔らかいなどという感じではないな。
やる気がない肉質だ。
骨の位置を避けてこんなクニャクニャで脆いやつを綺麗に造るとか私には無理。
これでもヅケにしてる間に普通のサクは給水シートで水分とってたんだけど、無意味かのように無尽蔵に水分が皿の上に溢れ出す。
味はある。
あるけど薄~い塩味に何か混ざったような感じ。
釣り場でも少し切って味見はしたのだが、もっと透明感があってプリプリした見た目。
でも味は誤差範囲で、ナタデココの中に密度の薄~い柔らかい感じのナタデココって混ざってることあるじゃないですか。
あれをちょっと塩っぽく生臭くしたような感じだった。
どのみち短時間で食べきれる量ではないので、これくらい時間が経過したものの判断も必要と思ったのだが。
僅かにジャキッという繊維が切れる感じはあるが、繊維1本1本に分厚い痰が絡んでいるような酷い歯応え。
不味い不味い言われてる魚とて、実際はそこまで不味い魚もあまり経験がなかったけど、これはひどい。
ならば、身の柔らかい魚なら大抵は悪くならない吸い物ならどうか。
ちなみに黒いのはキクラゲではなく、ミズウオの脂鰭。
脂鰭は想像もしなかったほど柔らかく、舌で押し潰して霧散するほどになっていた。
皮由来か微妙な苦味みたいなものがあるが、身に比べればネタの一部には使えると思った。
水には水。
これなら筋肉の水っぽさもどうにかなっ・・・
・・・・・・ぇー
フワッときて
モチッとくるとこまではいい。
最後にニチッ
素直に口の中で溶けてくれればいいのに、なんで中途半端な噛み応えが生まれるのさ。
しかもこの味・・・味だけはべつに際立って悪くもないんだけど、なんかどこかで・・・
あっ
卵のカラザだ!
カツ丼に乗ってる半熟溶き卵の半熟カラザの味だよ。
あの黄身に付いてる痰の絡んだバネみたいなやつ。
よくよく考えたら刺身も生卵のカラザに近い感じがする。
全身がほんのり塩っぽいカラザだ。
しかも加熱しても完全には固まらないカラザ。
需要ねーよ!
正直なところ、よく聞く刺身の感想などからマンボウ程度の肉質ならなんとでもなると思ってたんだけど、ちょっと次元が違いすぎる。
しかも厄介な骨が扱いにくさを跳ね上げてる。
こんなの、干すにしたって水出まくって干し網が涎カピカピみたいになっちゃいそうだし、ミキサーにかけたら砂混じりのゲルみたいになっちゃうでしょ。
どうしたらいいの?
ピチット使ったらありえないほどの水風船ができるのは他の深海魚でもうわかってるから意味ないし
とりあえず、ペット用の給水シートで染み出してくる水分を極限まで抜いてみよう。
3枚にしたものを並べて封印。
1日経過。
どうなったかな?
・・・・・・。
そっ閉じ。
シートめっちゃ重くなってるのに見た目変わってねーし!
ぷるんぷるんいってるし!
どうしようか。
煮ても不味かったし、汁気を利用したほうがマシだったからゲンゲみたいに使ってみるか。
完全にミズウオ違いだけど、ゲンゲも地方名でミズウオと呼んでいるところもあるしね。
水っぽい魚を利用する方法は共通してイケるかもしれん。
煮た時に若干皮が強くなったので、今回は皮を剥ぐ。
色味だけはちょっとだけイセエビみたいなんだけどなぁ。
あんなプリプリ感は全くなくて、相変わらずぷるんぷるん地獄。
ゲンゲと違って骨が邪魔なので、頑張って骨を切り出す。
じゅんじゅわぁ~
こいつ肉の中で水生産してるんじゃないのか!?
ここまでどれだけの水分出したと思ってんのさorz
とりあえず、骨を避けて切り出したものを酒・味醂・醤油・生姜・青葱と和えてレンジでチン。
ゼラチン感ゼロなのでゲンゲやホテイウオ・アンコウ・クサウオのような心地よい舌触りは皆無。
柔らかいのに歯切れ直前に歯を押し返してくる微妙な弾力がムカツク。
しかも水っぽいにも関わらず味も染みにくいときた。
ならばと、更に味も塩分も濃いポン酢だけで和えてレンジでチンならどうだ!
うん、不味いね!
味が染みないから、噛んだ瞬間にポン酢味の中にプじゅるっと溢れ出す鼻水っぽい味が余計に際立って不快極まりない。
こんなに水分を抜いて、頑張って骨を外したのにまるで役に立っていない。
愛情込めて育てた娘に保険金詐欺で殺されたらこんな気分だろうかと思うような裏切られっぷりだ。
ミズウオ・・・恐ろしい子。
利用されていない魚はできるだけ良い所を見つけてやりたいが、マジでこいつ庇いようがないぞ。
食べるより先にこの保水能力を研究したほうが有意義なんじゃないかとすら思えてくる。
これじゃ普通に揚げても絶対同じオチだよな。
サクッときた直後に生臭い水が召還されるのが目に見えている。
多分、体の構造が意地でも水分を保つようにできてるんだろう。
こうなったら極限まで水分を抜くしかないから、やっぱ干すしかないか。
根本的に、こいつの水分と共存しようというのが間違いだったんじゃないだろうか。
吸水シートである程度抜いた半身をそのまま干し、同時に輪切りにしてヅケにしたものもある程度水分を抜き、干してみる。
カリカリまで干したいが、干しあがる前に腐らないことを祈るのみだ。
同様に、違う下味をつけたものやプレーンなども切り方をいろいろ変えて干してみる。
どこまで固くなれば頃合なのか、ここまで食べた感じでは1日では絶対無意味なのがわかる。
水分が抜けて固くなるまでしっかり干し上げよう。
そうこうしてるうちに、2日で先に骨が干し上がった。
寒天かな?
なんだこのスッカスカで軽いのは。
背鰭なんて、畑のうねにかぶせてる紫外線で劣化した黒ビニルみたいな感触になってる。
こんなの出汁も出ないだろうし、揚げる以外にないよね。
しかし切ってみたら骨の中にも水分の層があったorz
あれだけ念入りに水切って、縦にぶら下げて2日も干したのにこれかよ。
更に1日干して、刻んで、揚げた。
なんだこれw
見た目はお世辞にも美味そうには見えないが・・・
あ、エビだ
どこからこのエビ味でてきたんだよ!
背骨の部分はおつまみのアラレなんかに混ざってる小エビの揚げたやつにほぼ一致。
よく昆虫の唐揚げがエビっぽいとか言われるが、あんなもんじゃなく本当に小エビそのものだ。
背鰭はクシャクシャするだけだが、味自体は普通の小魚の鰭を揚げたのと変わりない。
見た目では区別がつかなかったが、鰭の付根のあたりだけは脂があったのか、魚の旨味を感じる。
これなら普通につまみになるわ。
干している間、ぷるんぷるんすぎる身と鬱陶しい骨がなんとかならないかと、軽く塩してから酢に丸1日漬けてみたりもした。
なんかもう、見た目だけで食欲失せる空気が漂っているが、期待を裏切らない酷さが待ち受けていることをこの瞬間の私は想像もしていなかった。
表面が硬くなってくれたのでスライスはしやすくなっていたのだが、中身はプルンプルンのまま。
そして問題の小骨は、飛び出た部分すら全く柔らかくなっておらず意味なし。
筋肉の表面はまるでゴムのようになっていた。
スライスできる分だけマシかと、小骨を切る方向に薄めにスライスして口に入れてみた。
ゴムの中からでゅるんでゅるんのしょっぱ苦い半透明の液体が溢れ出るという惨状の完成です。
さすがにゴミ箱へダンク。
そうこうしてるうちに、4日してようやく干していた切身が干しあがり始めました。
こちらはヅケの輪切りを干したもの。
想像はしていたが、骨が残ったまま身だけが縮んだせいで酷い見た目。
ここまでそのままだと揚げるしかないかな。なんとおぞましい・・・
そして、揚げたては何故か柔らかく不快、冷めると固くパリパリになる不思議揚げ。
食べられなくはないが、大失敗な点がひとつ。
乾燥して異常に縮んだ為、軽くヅケにしただけのつもりなのに醤油が濃縮されすぎて塩辛い。
プレーンも同時に干していて感じるのだが、塩なり醤油なりで加工したもののほうが干している時にも浸透圧が影響するのか乾燥が早いので、意図せず味が濃くなることも踏まえて薄~く塩味をつけてから干すのがいいのではなかろうか。
次は同時に干しあがった別バージョン。小骨を無駄に細かく切らない方向に削ぎ切りにし、醤油・味醂・一味唐辛子で味付けしてからは全く同じ工程。
しかし骨が目立たないだけで見た目が断然良い。
皮だけ見ると縮んでいるように見えないのですが・・・同じ厚さで2週間干したワラサと比べてみましょう。
ペラッペラなんですけどw
どちらも切った時は暑さ1cmくらいだったのですが。
ワラサは2週間で7~8mmまで縮んだだけなのに、ミズウオは4日で0.5mmくらいの極薄になっちゃってるんですけど。
そこまで存在感薄くなるほど反省したのでしょうか。
炙って食べてみましょう。ほう・・・普っ通ー。
同じように水っぽいことで有名なマンボウは、昔よく市場で拾ってきてはこの味付けで干して、炙って食べてました。
マンボウはここまで干さずとも十分食べられたので、同じ方法でなんとかなるんじゃないかと思っていたのですが、ミズウオの場合は厄介な骨を差し置いてもここまで干しきらないと快適には食べられない。
それほど、干している最中の過程を見ているだけで異質なのがわかるのだ。
全体から水分が抜けるのではなく、芯に水の塊を残したまま風船が縮むように水分が抜けていくのだ。
ほんと、ここまでくると魚というよりクラゲのほうが近いんじゃないかという水分量だ。
骨がないだけクラゲのほうが使える。
ちなみに干し方も考えて、洗濯バサミで縦にぶら下げて干してみたのもあったのだが、重力で水分が下部に溜まって上のほうから先に乾いていき、富永 一朗が描くババアのオッパイみたいになったところでハエにたかられて腐りました。
ここでもう一度、干しはじめの写真を見てみましょう。
先ほど食べた干物がどれだけ薄くなったかよくわかると思います。
しかしこの左手のサク達はまだ干し上がっていません。
やはり体積に対して表面積を大きくしたほうが良いのでしょうね。
ちなみに4日目の時点での途中経過はこんな感じ。
筋肉どこ行った?
既に薄くなってきていますが、まだブニュブニュしており見た目も触感も老婆の皮膚といった感じです。
骨はそのまま残りつつ、身だけどんどん無くなって行くのです。
このままいくと、「ほしあがる」というより「ひあがる」といった様相になりそうです。
まだ2日くらいかかるかなぁ。
一応、干上がったら水戻しや粉末にしての利用を試してみようと思っています。
あと、生のサクのまま冷凍して細胞組織が壊れてくれないか試してもいるのですが、相当先になりそうなのでレポは一旦ここまでで上げておこうと思います。
ちなみに頭の骨はカッコイイので、拾ったやつを1匹軽く茹でてほじくりました。
頬肉だけは物凄くジャキジャキした歯応えで、ここだけ別物だった。
餌を捕らえる瞬間だけに全てを賭けてる感じ。
こいつは頬肉と内臓以外は食わなくていいんじゃなかろうか。
子供が考えそうな怪獣みたいな歯並びがたまらんよね。
しかし牙までペナペナの中空でゼリーが詰まってるとは思わなかった。
どうりで牙が折れてる個体が多かった訳だ。
「見た目チンピラ」
「何にでも噛み付くチンピラ」
「背鰭も何に使ってるのかわからないけどカッコイイだけで生やしてるならチンピラ」
味も酷い、攻撃力高そうな歯すら見た目だけの鈍らだった。
キングオブチンピラフィッシュの称号を与えよう。
真面目に、乾燥地域向け保水材の研究用とか…ネタの域出ませんが、真空凍結乾燥遣ってみたいです。
フリーズドライは考えちゃいますね。
戻す段階で合う味付けでやれれば道は開けるかも。
家庭でできるならいいんですけど。
でもあの食感じゃやっぱりダメな気がする。
ぷるんぷるん天国ですねわかります。
やっぱり深海魚は面白い
深海魚楽しいんですけど、釣るには案外金がかかるのがいかんです。
陸でも狙えるこいつらや、底曳きのゴミを漁らせてもらうだけならいいんですけどね。
すごい、凶悪な魚。
これだけ手をかけて、美味しく頂けないのは残念っですね。
ミズウオだけに努力がミズノアワですね(笑)
この間、アナゴが釣れたのでちゃんと血抜きして食べましたよー。美味しかったです。
口に入れた時に、ほんとに意味がわからない水の出方をするんですよ。
こんな体のつくりに進化しなくても他に比重合わせる方法あったろうに。
結果、好んで持ち帰られることもなく、狙われないので勝ち組なのかもしれませんけどね。
アナゴは美味いですよね。今は心底まともな魚が食べたいです。
お疲れ様でしたm(_ _)m
スカルがカッコイイ。
胃の中身にロマンが詰まっていることもある。
現代日本人にとって、食糧としての価値はない。
以上、肝に命じ、たまたまミズウオが拾えても、記念写真に留め、持ち帰らないようにします。
不快感なく食べられるようにするには労力が全く見合わないですね。
ここまでの奴だとは思ってませんでした。
現時点で味だけならワースト1候補の魚ですね。