ざざむし。





ミョウガの実を初めて見たので食べてみた

皆さんは「ミョウガの実」って見たことありますか?

私は見たことありませんでした。
それどころか、花は見るけど実には興味が向くこともなく、どんな実ができるのか気にしたこともありませんでした。

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これです。

10月下旬に差し掛かった頃、たまたま某所にてミツバを摘みに寄った時のことでした。
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あちこちに群生しているミョウガですが、夏の薬味なのでこの時期は気にもしません。
草本自体も枯れかかっていますし、用途のない時期ですから普段は目を向けることもありません。

そんな時です。
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なんだ?
誰かこんなところにゴミ捨てたのか?
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おおおおおぅ!?

なんぞこれ!?
滅多にない脳が混乱するこの感覚
ミョウガという、知っていて当然の姿から全く想像もしない色形のものが出ているというだけのことが意識を変なところに持っていきかける。

僅か数秒もないだろうが思考と動作が停止した後、ググってみるとミョウガの実だという。
ミョウガなんか実家にも生えていたし、花はいつも見てたけど実なんか見たことなかったよ。

それもそのはず、結実にはかなりシビアな条件が必要なのだそう。
そもそもミョウガは5倍体で野生種がない上に結実しにくいが根で増えるという特殊な植物。
それなのに全国に定着しているということは、それだけ多くのヒトに愛されて栽培されたということなのだろう。
(侵略的外来生物などそういった植物については五月蝿い時代になったけど、ここでは園芸や農業の問題はとりあえず横に置いておく)

植えられてしまえば根茎でどんどん増える。
12品種のミョウガを育てたことのある知人曰く、結実し易さも品種によって違うんだとか。
それでもやっぱり自然に結実しているというのは激レアらしい。
調べてみると、授粉には20度くらいの温度維持が重要で、更に結実まで50日もかかるんだそう。
なにその効率の悪さ。夏なのに20度維持って難易度高すぎでは。
なるほど、だから夏に咲いていたから、いま結実しているのか。
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殆どのミョウガはこんな感じで、カタチだけは残っているがブヨブヨに腐っていた。
結実したものは選ばれたものだけなのだということがわかる。
通常、食用とされているのはこの花穂もしくは花蕾と呼ばれる部分の若いもので、各隙間から白い花が出てきます。


採取シーズン中に一般によく見られるのはこのミョウガの花だと思います。

・・・。
今年ここに何度か来たんだけど、もしかして自分が採ろうとして花咲いてたからやめたやつが受粉してたりする??
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双子とか
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まだこれから出てくる子達もいた。

探してみると15個くらいはあっただろうか。
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なんともフォトジェニックではないですか。

どこからこの紅い色素を引っ張り出すんでしょうか。
これだけあるなら少し食べてみてもいいでしょうかね。どうせ根で増えるし。

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今回はこれだけ頂いてみよう。

本当に目に焼きつく紅さだ。
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なんか単眼のモンスターっぽいよね。

鞘の部分が大きく開いてしまったり、低い位置にあったものは泥が入っている可能性が高いので分解していきます。
ついでに観察してみる。
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本当に脆い接点で繋がっているだけの種子。
ポロリもあるよ。
こんなのを落とすことなく50日もかけて表に出すなんて気が遠くなる。
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実って結局これだけ?
果肉って無いの???
種子を皮が包んでるだけって感じで、食べてみたがシャリシャリするだけでほんのりミョウガの風味がするのみ。こんなの紅く着飾ったって何も食べに来る訳ないから、結局は足元に落ちるだけで全く繁殖地を移動する気ないだろw

種の食感や味はどうなのか。
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ガキッ

絶妙に不快な硬さ。
そして変な辛さを感じる。
成分が全くわからない種の内部は無闇に生食すべきではないと考えているので、現時点では食用不適としておくことにする。
大豆は生で食べれば少量でも中るし、リンゴの種ですらアミグダリンによる青酸中毒の可能性がある。
そもそも生の種子というのは植物が子孫を残したいから育んだものなので何かしら防御機能が備わっていても不思議ではない訳で、あまり油断すべきではないのです。多分、ミョウガは大丈夫なんじゃないかという気はするけどね。

種はスルーして他の部分を見てみよう。
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これは・・・花の落ちた根元の部分が、他とちょっと違って少し膨らんでいるがもしや?
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やはり受粉していたのですね。
ここまで何日かかったのか知らないけど、これから1ヶ月も経ったらここ雪や霜で枯れるんじゃないか?
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上から見ると果肉っぽい容姿をしているが、やっぱり裏から見ると花弁というよりガクのような、葉が変化したような感じ。
花の鞘一枚一枚よりは厚く脆い感じだ。
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未経験すぎて美味しそうとも不味そうともなんとも形容しがたい。

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種がついていた基礎の部分はわかるが、そうでない突起は子孫になりきれなかった痕跡なんだと思うと不思議な感覚になる。
気がする。
いや、そうでもない。
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とりあえず、丸ごと食べられそうなものは丸ごといってみますかね。

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ミョウガだけってのも面倒なので適当に食べられる草を脇から摘んで天麩羅に。
ミョウガは比較用に実と芯だけの部分、結実した鞘全体、受粉しているであろうがまだ結実は遠いしっかりした鞘の3種を使用。

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うーん
正直、普通のミョウガの天麩羅より下。
どうしても芯の近辺が柔らかくなってしまっているのがよろしくない。しかも泥が混入してないか警戒しながら食べても美味しくない。
かといって赤い部分だけ揚げたものも単なるミョウガ風味でしかなく、たいした歯応えでもないのであまり意味がない。
しかも一瞬で鮮やかな紅さがくすんでしまうのでとことん意味がない。

これはやはり生食一択なのではないか。

さて、生食といえば魚を刺身で食べると「寄生虫ガー!」と騒ぐ人種がいる。
ここを読んでいる常連の方々はもうそんなバカなことで騒ぎはしないでしょうが、では植物ならば完全に安全なのか。
実はまさにミョウガやクレソンなどの生食は稀に肝蛭を拾うことがあるって話なんですよね。
稀に、ですが。

肝蛭(かんてつ)は獣やヒトを終宿主とし、ヒメモノアラガイやコシダカモノアラガイを経由してメタセルカリア状態で生摂取し腸内で脱嚢して腸粘膜に侵入することで寄生が成立します。
腹腔から迷走し(時に子宮や気管支に入るらしい)肝臓で成長すると総胆管において産卵する。
ミョウガもクレソンも湿気・水気のあるところを好む植物なのでモノアラガイに好適な環境は確かにありえる話。
隙間に入っていた小さなモノアラガイの誤食や、這った粘液に混入していたなどの可能性は考えられるのではないかと思う。
レバーの生食で肝蛭を拾う確率に比べれば低いらしいですがね。

自分で調理して食べる場合はそこんとこもよく理解しているので洗浄なども気を使っていますが、店で食べる場合は果たしてどうでしょうね。
ましてや無農薬や有機栽培が流行っていると・・・はてさて。

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ま、わかった上で気にしない。
実が生長したものの多くは隙間が開いてしまって泥が混入しているものもあるので、バラバラにしてよく洗浄します。
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今回は試しに甘酢漬けに。
まるでパプリカの内側のような見た目、何もしていないのに1日で漬け酢も赤く染まってしまいました。

味は・・・完全にミョウガですね。
ただ、食感が細胞を10倍くらいに大きくしたピーマンみたいな感じで、サクサクしていてなかなか面白い。
これはアリかなと思います。

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あとはテッパンの冷奴ですかね。
色鮮やかで、まずはとにかく目に美味しい。
風味はミョウガなんだから不味くなる訳がない。

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うん、美味い。

こうして見ると、スライスすることで思ったより厚さがあることもわかりますね。
夏の薬味であるミョウガだけれど、晩秋に食べるミョウガの印象にはこの見た目とセットで新しい季節感が刻み込まれました。

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こっち見んなwww

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Comments & Trackbacks

  • コメント ( 17 )
  • トラックバック ( 0 )
  1. はじめまして。本日我が家の庭でミョウガの実を発見し、私のブログに書きました。こちら様の記事にリンクを貼らせていただきました。

  2. かっ…かわいい…
    でも自然の中にポツネンと存在していたらギョッとしてしまうかも。
    ポケモンとかデフォルメモンスターっぽいなあと思いましたが、確かにソフビっぽい
    このレア度は見つけられる気がしないなあ

  3. ミョウガがそんなに特殊な植物だったとは
    知りませんでした!

  4. ミョウガ…子供の頃実家で夕飯前に母ちゃんと摘んでました♪
    当時、えっ⁉︎こんな近くに生えてんの?って思いつつも突如現れたウシガエルにパニクったのは良い思い出^^
    あんな目立つキョロ目なら記憶に残るはずだけど記憶にないなぁ〜w

  5. 見た目の派手さに軽い恐怖を覚えます。

    すみまでん、初コメです。

  6. 茗荷いいですねー
    ガキの頃はあの風味か苦手でしたが20超えた辺りから好きな部類になりましたねー

  7. なんかウルトラ怪獣みたいな色合い

  8. びっくりするほど鮮やかな色ですね。
    みょうがが苦手だけど少しだけ食べてみたい

  9. 初めて見たよ~

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