ざざむし。

トゥンポヤが意外な味だったので

食べたことがあるなしはさておき、ドリアンを知らない人は少ないと思います。
果物の王様と言われながら悪臭の王でもありますね。
その臭気は強すぎて、産地でもホテルなどは持ち込み禁止になっているところが多くあります。
実際のところその悪臭といわれる臭気には熟成段階や種類により差があるので、食べたことがあるという人によっても感想が変わってしまうのが実情だと思います。日本のバナナが未熟で輸入されて追熟してから販売されるように、国により事情や趣向も違うでしょうから普通に販売されているものを一度購入しただけでドリアン自体の評価を決めてしまうのも勿体ないかもしれません。
私はフレッシュな状態ではまだ数回しか食べたことはありませんが、その中で偶然にかとても美味しいものを食べたことがあるので、ドリアンが果物の王様と呼ばれるのは納得できます。

反面、ドリアンの加工品はイマイチ好きになれないものが多いです。
あのうんこ臭みたいな表現に困る特徴的な臭気ばかりが変質して際立っていて、新鮮な時に感じる舌にねっとりと絡みつくような旨味と素直に舌に染み入ってくる甘味、そして臭気の下に感じる南国フルーツ然とした爽やかでふくよかな香りが潰されてしまっているものが多いのではないか。ただ臭くて甘くしてあるだけとかね。
いままで食べた中では、ドリアンとココナッツを使ったライスプリンみたいなやつがなかなか個性残したまま美味いんじゃないかと思ったのですが、加工しすぎたものに関しては二度目はないかなぁというものが多いです。個人的な感想ですが。

そんなドリアン加工品の中に、マレーシア近辺で家庭料理として受け継がれているらしいものがあります。


これです。
綴りとしては「Tempoyak」で、発音は「タンポヤ」でいいみたいなんですが、私が食べたボルネオの集落では聞こえた通りにトゥンポヤで通じたので、ここではトゥンポヤで通すことにします。
一体何かと言われると完熟ドリアンの漬物の油炒めということになるんでしょうか。
どう表現したら正確なのか実物を口にすると迷うのですが、工程を考えるとそういうことになります。


ねっとりしつつ、ドリアンの香りはするものの爽やかな香りも放っています。
これを御飯に乗せて食べます。


ドリアン版ごはんですよ。
これが一口目はいろんな情報が頭を駆け巡って「???」な感じになるんですが、だんだんクセになる。
まず、香りには紛れもなくドリアンの香りがあるのですが、半分は「君、乳酸発酵してるだろ」って言いたくなるほどはっきりと爽やかな香りが混ざっています。そして口に入れるとまず酸味を感じ、甘さとコクの後に軽くドリアン臭がやってきます。


これ、現地で泊めていただいた時にしれっと出てきて何度か食べたのですが、向こうではメジャーらしいけど販売されている話は聞いたことがありません。食べたい家庭では当たり前に作っているし、食べたければ作ればいいじゃないっていうことなんでしょうかね。

実は食べたことがある方から、もしあったら貰ってきてほしいとも言われていたのですが、なかなか興味深いものだったので作り方も聞いてみました。
完熟ドリアンに塩して1週間以上放置すればできるそうで、1年はもつそうです。これに砂糖を加えて油で炒めたらできあがり。


いただくことができました。
いつまでもつのかと思ったら「臭くなるまで」ということでした。なんの参考にもならなそうな情報ありがとうございますw

乳製品は発酵食品も検疫対象のようですが、その他の発酵食品は殆ど検疫対象外のようなので続きは日本で試すことができます。
ヤッタネ!


最初から結構な臭気なので2重に包んでくれたのですが、これを更にジップロック的な袋で3重にして計5重に封じ、更にビニールに包んでEVAポーチに入れて持ち帰ってきました。

なんだか分離した水分が目視でき、開封途中で既にかなり臭気が漏れてきていることがわかります。漏れてくる臭気は完全にドリアンです。臭さしかない。

簡単な作り方は聞いたものの、作っている現場を目にしていないので分量がサッパリわかりません。ただ、できあがりは口にしているので想像で再現していくことにします。


袋から出してみると、わさび漬けみたいですね。

この時点でドリアン臭と乳酸発酵臭が強く存在しているのがわかりますが、このまま食べてみてもそこまで美味しいものとは感じません。
聞いた通りに油と砂糖を加えて炒めてみます。


あっという間にネトネトになって固まり、それっぽいものができました。

ただ、油の分量が多かったようで分離しすぎました。
比率は要改善です。


あぁ、これこれ。この味。

見た目はチャツネみたいなのに全然違うという面白さがあります。

トゥンポヤは油で炒めて御飯に乗せて食べる以外に、豚や筍と合わせておこわにしたりもするようです。
これは食べたことがないのでどんな配合なのか想像するしかないのですが、竹に入れて作るそうなのでクロランみたいな感じをイメージすればいいでしょうか。
手探りで試してみることにします。


といっても、クロランはココナッツミルクが主体なのでトゥンポヤおこわの場合どうしたらよいのか。

ドリアンはココナッツミルクとの相性が悪くないのもわかっているけど、トゥンポヤだけだとどうなるのかも気になるので2通りを試してみましょうかね。


どちらも軽く炒めた豚肉と、筍を混ぜます。
気持ち的に猪がよかったんだけど在庫がなかったので豚にし、筍は保存してあったネマガリタケで代用することにしました。


片方は水だけ、もう一方はココナッツミルク入りです。


焼いていきます。

本当は焚火で豪快にいきたいところだけど、最近はどこでも気軽に焚火ができる訳ではなくなってしまったので辛いところですね。風情もなにもない。
火力も足りないので横向きのほうが焼き易いんだけどイメージが縦なので縦で強行する。


焼けたかな


やっぱりちょっと焦げたけどなんとか。

どちらもトゥンポヤ使用だけど手前はココナッツミルクあり。

結論としては、いまいちトゥンポヤの存在意義がわからない。
いずれもドリアン臭は残っているが、肝心の爽やかな香りや酸味はあまり感じなくなっており、これではイマイチなドリアン加工品の二の舞だ。どちらが好みかは人によるとしか言いようがないが、むしろトゥンポヤ入れずにココナッツだけのほうが絶対にうまいと思う。
ダメじゃん。

と、ここまでやってうっかりしていたことに気付く。
油で炒めたものを使ってないじゃん。
結果が大きく変わるかもしれない。


めんどくさいから炊飯器でいいや。

しかし炊飯器からドリアン臭が溢れだし、部屋に充満しはじめる。


あぁ、油で炒めてから使ったほうが明らかに爽やかな香りも残りますね。

あと、豚肉と合うというのも納得。肉の臭味みたいなものが抑え込まれて旨味だけ感じるみたいな。これなら臭めの猪でもなんとかなりそう。

ただ、そこまで絶品というものでもないなぁと思うので、この先はいつか実物を食べて感動するようなものだったら考えるということでFA。

それよりも、完熟果実を塩漬け発酵させて油炒めして食べる食品って他に何かあっただろうか。
ドリアンで再現するというのは、わりと高価な日本で試す価値をそんなに感じないので、他のものを試してみたい。


候補としては何がいいだろう?

あのネットリ感からしてマンゴーやバナナであれば近いものができるだろうか?
南国フルーツっぽい肉質であればヤマボウシが大量に採れた時に試してみるのもいいか。でも今年は不作。
そういえば今は秋。
柿って、結実しはじめるとめちゃくちゃ収穫できるので貰える時は処理に困るほど貰える人も結構いると思う。これで面白いものができないだろうか。


塩分どのくらいかなぁ。

何も入れないとアルコール発酵して怒られが発生しそうだし、入れたら入れたで薄いと腐りそうな気持ちになるの何故だろう。こんなのはじめて。

ということで仮に塩5%でやってみることにする。
トゥンポヤは味見した感じでは2%あるかどうかな印象なんだけど。


攪拌して、蓋したまま常温放置で2か月半経過。
見た目は水分が浮いてきただけに見えますが、途中で水分が蓋の隙間から溢れて大洪水していたので何かしらの反応は起こっているのだと思います。
こういうのを残したまま死ぬと「あの人頭おかしかったんだね」ってことになりかねないので注意しましょう。

よくわからん発酵物を口にしようとするといつも緊張しますね。
軽く味見した感じでは致命的な腐敗は起こっていないようですが、5%でも明らかに塩分が強すぎます。やっちまった感が強い。なんで濃度変えて3パターンくらい作らなかったのか後悔先に立たずですが、できてしまったものは仕方がないのでやるだけやってみましょう。


精度を上げていくついでにブランクとしてトゥンポヤを炒めてみます。

油:砂糖:トゥンポヤ=1:2:4

無駄な油が分離することなく、かなりうまくできました。
柿もこの比率でやってみましょう。


あるぇー?


ちょっと誤算は感じるものの、近い感じのものはできました。

拡大して見ると、かつて柿であった何かであることがわかりますね。
ドリアンと大きく異なるのは、加熱開始からこうなるまでの時間がドリアンの4倍くらいかかっていることです。ドリアンのほうは10秒台で変化します。


柿は水分量が違うのか油の配合比率に問題を感じますが、固形部分を食べる分にはあまり気にしなくてよいことが本家トゥンポヤでわかっているので気にせずいきましょう。


柿でできていると思うだけで御飯に合いそうにないじゃないですか。

正解。
しょっぱい柿味。
柿自体はサラダに使うこともできるので組み合わせ次第でおかずになるのは理解できるんですが、これは全く御飯に合わないです。まだ偶然ながら今回は塩気が強いので米に寄り添っている感じを受けなくもないですが、本家のように塩分も控えめだったらただただ甘いだけで全然ダメでしょう。
粘りはあるもののドリアンほどではなく、そもそも全く乳酸発酵している感じがしません。

やっぱり酸味を少し感じるくらいのマンゴーだったらワンチャンある気もするなぁ。


ということで本家トゥンポヤはいまのところオンリーワンですね。
酸っぱクサ甘ねっとり味。

ただ、紛れもなく味はボルネオで食べたまんまなんだけど、現地で食べた時ほどには体が欲しない。
ひとつにはジャポニカ米が甘く粘性があるのでインディカ米ほど合わないこと、ひとつには暑くビタミンが欠乏する環境にないことが挙げられると思います。
食の多様性ってすばらしい。
こういうものこそ環境の合わない国で食べて評価するのではなく、現地を訪れた時に味わってほしい例だなぁと感じるのでした。

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Comments & Trackbacks

  • コメント ( 8 )
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  1. 乳酸醗酵させるのなら種菌入れたら良かったんじゃないですかね
    糠漬けのぬかかキムチ混ぜればなんとかなるんじゃないかしら

  2. ドリアン大好き派、よう判る、
    後半の柿は渋柿の塩漬けみたいなモンか
    酸味甘み薄い渋みの順で塩漬けは味を感じて御茶にあわせて食べたりするけど
    ご飯にあわせる発想は無かったわ

  3. 私の友人が世界中の料理をレトルトにして販売しており、
    その中にドリアンを使ったカレーがあります。
    「世界のごちそう博物館 ドリアン」で検索してみてください。
    ドリアンカレーの他にもアカミミガメのカレーなど興味深いものがたくさんありますよ。

    私が経営している店でドリアンサイダーを販売してますが、
    かなり売れます。
    買う人は、怖いもの見たさの人が9割、ドリアン好きが1割くらいです。

  4. まずドリアンを米に乗せて食べるってことにシンプルに驚く

  5. 全く同意見です
    ツイッターも見させてもらってますがやはりブログが読みたいです

  6. よもや連日拝読できるとは。
    貯めてある物があれば躊躇なく是非またよろしくお願いします。
    本当に興味津々な題材が多くて過去記事すべて読んでます。

  7. まことに勝手なイメージですが、なぜかせつなさんはそこそこ臭いものをそれなりの頻度で取り扱うひとだと思っているので、赤ちゃんのおむつなどのくさいものを入れても袋口をしばれば臭いがもれないと評判の袋「ボス」をおすすめいたしますね

    • 同じものをお勧めしようと考えていたら、先駆者さんがいらっしゃいましたね。
      我が家のオムツ期は終わりましたが、まだ手放せません。
      出先でおかずのおすそ分けをいただいたときや、
      食材の廃棄部位が臭すぎて瘴気を放っているとき、
      食材を試行錯誤中にダークマターを錬成してしまったときに心底頼りになるアイテムです。

      連日の更新うれしい限りです。
      ものすごい情報量を脳が処理しきれず、味を想像しようとしてパンク寸前で幸せです。

コメントしたければしてもいいのよ?(カエストハイッテナイ)

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