ざざむし。





クロオオアリで伝説のお菓子チョコアンリ復元の練習

昆虫食というと「イナゴ・ハチの子・カイコ・ざざむし」しか頭に浮かばない人は今でも多い。
しかし、かつてアリを使ったチョコレートが高級品としてアメリカなどの外国向けに輸出されていたことを皆さんはご存知だろうか?
一般には「アリチョコ」とされていたらしいが、「昆虫物語-昆虫と人生-」に登場した名が「チョコアンリ」とのこと。

アカヤマアリはクロヤマアリなどの巣を襲い、サナギを連れ帰って自分の巣の労働力として働かせることで知られる。
このアリを揚げたものを1個あたり20匹程度使ったチョコレートは甘酸っぱく、長野県百科事典によれば1957年頃に作られていたアリチョコの価格は一粒で180円、一缶55 g入り。何粒なのかわからないがアリの大きさからして11gで5粒あたりが妥当なところか?だとすると5粒900円。
当時の900円と言ったらタバコが30円、ビールが113円の時代だからかなり高級な嗜好品ということになる。
アメリカでも高級品とされ、2000万円の外貨を稼いだとも伝えられる。これも当時の2000万か???
一日で二百匁程度は簡単に採集でき、百匁あたり四百円程度で買い取られた。そのため、一家総出で三日間働いて、一万円稼いだという話も残っている。現地には集荷場も作られ、乾燥させたものが長野市内を経由して東京の工場に運ばれた。地元では、思わぬ現金収入として喜ばれ、嫁入り支度をこれで整えたなどといった話も伝えられている。また、このために戸隠や飯縄高原では一時アカヤマアリが減少したとも言われる。

それほどまでに収入源となったものが何故忘れ去られるほどに衰退したのか、それが知りたかった。
調べても復元したものすら殆ど見つからない。
単純に減少したからというだけでここまで無かったかのように廃れるものだろうか?
それに、揚げても蟻酸の効果がそんなに感じられるものなのだろうか?

ちょくちょく見かけるアリなので機会はあるだろうと思っていたが、全く時が訪れないので探しに出た。
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これはムネアカオオアリだろうか?
いくら大きくても1匹や2匹では仕方がない。
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最初はアリだけ探すのもめんどくさいのでキノコ探しのついでに

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飴を置いておき、戻ってきた時に寄っているかチェックしてみたり。
しかし他の小さなアリは集まるが、飴にアカヤマアリは集まってくれなかった。

仕方ないのでアリ中心に探すも見つからず、完全に欲しい時に見つからないパティーンに嵌る。
アカヤマアリは南限が富士山あたりだというし、確かに富士山周りでも山梨でも見た覚えがある。
通る人に聞いても「あぁ、あのアリね」と、皆が知っていたがいざどこに?となると全くお手上げ。

そのうち、死んだキリギリスに寄っているアリにアカヤマアリが混ざっていたのを発見した。
半分以上がクロヤマアリだったから彼らが奴隷なんだろう。
しかしアカヤマアリはたったの3匹。
これではどうしようもない。
結局、3日間でアリ探しに450kmくらい走り回ったが4匹しか採れなかったorz

そこで考えなおす。
ここまで採れないものを疑問が残ったままの状態で一発勝負の調理をして大丈夫なものか?
練習しておいたほうがよくね?
どうせ蟻酸があるアリなら似たようなもんだろうし(言っちゃった)

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ということでクロオオアリ確保。
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試しに揚げたのを3匹食べてみる。
・・・あまり酸味を感じない。
こんなので本当に甘酸っぱくなるのか?
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20匹っていうとこれだけ。
軽く塩を振って、キッチンペーパーで挟んで油を吸い取る。
蟻酸も吸い取られていないか心配だ。
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カップに入れて溶かしたチョコを注ぐも全くまとまらず一発目は失敗。

そこで先にチョコを流し込み、アリを置き、更にチョコを流し込んで挟むことにしてみる。
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しかしそれでもアリの隙間が埋まらない。
まぁそりゃそうかという気がするが

甘酸っぱい!

確かにこれは甘酸っぱい。
なんていうかこれアポロチョコのストロベリーを彷彿とさせながら酸味がもう少し鮮烈な感じだ。
蟻酸の多い種で作ればきっともっと明確に美味しいものになるんだろう。
これはアリだ。
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きっちりチョコに封じられないのが気に入らないので100匹採ってきた。
1匹ずつ捕まえた。
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クロオオアリだよね?
大きいのは1cmを超えている。
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揚げた。
塩を振った。
ここまではいいはず。
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100匹なので50gのチョコでいいんだろうが蟻酸が弱いものと考えて40gに。
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チョコを溶かして、今度は先にアリを入れて練ってしまったらどうか。
味さえ同じならいいじゃないか。

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チョコを溶かすのを失敗したのか揚げた油が悪さをしているのかわからない微妙な空気になってきた。
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うーん

うーん

ま、いっか。
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所々に生き埋めになったかのようなアリが見える。
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あれ?
上下で挟んだ時に比べて甘酸っぱさが弱い。
抜けるようなストロベリーっぽさもない。
何故???
全く意味がわからない。
これ、実は調理の上で絶妙なバランスが必用だったりするのか?
材料集めからチョコの扱いまで問題が多すぎるし、寒くなると見かけなくなるから今年はここまでかな。

実際に作られていた時代の漁期は8月頃という話。
いまのところアカヤマアリがそんなに大量に採れるイメージが全く湧かない。
どちらかというと大きく山のような蟻塚を作るエゾアカヤマアリのほうが攻撃的で簡単に集まり、おまけに蟻酸が強く多いらしいので効果的にアリチョコが作れるのではないかと思うのだが。
心底疲れてしまったので、こいつらのでっかい蟻塚のある場所なら知ってるよ!という方がいらっしゃったら教えて頂けると嬉しいなぁ。
あと、揚げたアリをうまくチョコにまとめる方法も考えないと。


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Comments & Trackbacks

  • コメント ( 18 )
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  1. 製菓ようのチョコならもう少し融通がきくかもしれません。
    ちょっと邪道ですが、ウイスキーボンボンみたいに外骨格を作ったらどうでしょう?
    中にアリ入りガナッシュを流し込む。
    百均でシリコンの型が売っていたような…
    かなりの手間ですけど。

    チョコを餌に飼育したらアリからチョコ風味がするか興味が出てきました。

    • なんにしてもチョコで包むというのは決定事項でよいようです。
      しかしいつになったら本番ができるのやら。
      完成さえすれば保存も利くのでアリによる味比べもできそうなんですが。

  2. 通りすがりです。

    いつも楽しく拝見させていただいております。
    ほとんどの蟻酸が水溶性だそうなのでチョコに混ぜ込む方はチョコに流れ出てしまって酸味が薄く感じられた。という事は考えられないでしょうか?
    憶測ですみません。。

    • 憶測でしか考えようがないですしね。
      多分、カプサイシンが牛乳やチョコで和らぐのと同じような現象が起こっちゃったのではないかと。

  3. チョコレートを入れてから、こういうので空気を抜いたらどうでしょう?
    http://item.rakuten.co.jp/pivot-sanyoh/4973307195532/

  4. ゴキブリも
    チョコにしたなら
    くえるかな?

  5. 逆転の発想で、チョコにしたら旨そうな虫で試してみるとか。
    旧ざざむしでもでてきたジョロウグモとか、
    クスサンでくるみチョコとか(笑)

  6.  はじめまして。旧ざざむし時代から楽しく拝見させて頂いています。
     趣味でショコラ寄りの製菓を20年近くしていての感想なのですが、チョコレートに素材を入れるとき、記事の作り方2のようにバラバラのものをチョコに混ぜ込むより、作り方1のように層にしてまとめて入れた方が素材の味がはっきり感じられるような気がします。
     出来上がったチョコの表面からアリが覗くのが気になるようでしたら、
     1.カップ(型)の満タンまで溶かしたチョコレートを注ぐ
     2.しばらくしたら(外側のみ固まったら)ひっくり返して中のチョコを出す
     3.中にアリと詰め、更にチョコを流し込みフタをする。
     4。完全に固まったら型から出して出来上り
    ↑面倒ですがこれでアリが見えなくなるとおもいます〜
     更にチョコの味と舌触り、型離れの良さなどをお求めでしたら、チョコは製菓用をテンパリング(温度調節)してから使用されると良いと思います。作り方2でアリと混ぜた時にチョコが分離したのは、温度調節のせいか、もしくは揚げたアリの油分のせいかもしれません。
     
     しかし今まで虫と料理(製菓)は私には無縁だと思っていたのですが、せつなさんの記事を読んで作ってみたくなりました。1番の難関はアリを見付けることですね!
     長々とすみません。素晴らしい記事をありがとうございます。これからも楽しみにしています〜

    • あれ?みとさんってあのみとさんですか?
      非常に参考になります。
      やっぱり包んで封印する方向で商品化されていたのは間違いないんだろうなと、やってみて実感しました。
      菓子作りなんてほとんどまともなものが記憶ないので全く応用が利きません

      なんでもチョココーティングされる流れで昆虫もやる人いるんですが、個人的には正直チョコが合うって感じることあまりないんですよ。
      そんな中にあって、アリチョコはなるほどと思いました。
      果汁や酸味料・香料が自由自在な現在では全く無用なんでしょうけどね。

  7. 長野市だけど蟻の話は聞いたことがない。
    チョコは温度管理が重要らしくて、油がはいるのも良くないらしい。
    あらゆる物をチョココーティングする虫チョコ職人への道が開かれる瞬間に立ち会おうとは。

  8. アカヤマアリも奴隷狩りをするんですね。
    てっきりサムライアリくらいかと思ってました。

  9. とおりすがり虫屋

    いつも楽しく拝見しております。
    当方北海道(札幌)住みですが、エゾアカヤマアリは都市部でも少し木がある場所に普通です。山ではより多い印象です。塚を蹴飛ばせばもちろんワラワラ吹き出してきますが、石垣の隙間とか石の裏にも巣ができるのでそういうところを不意にいじくって怒らせてしまうこともあります。さすがにこの時期にいるかは分かりません。夏の虫ですネ。

    • やたら攻撃性は高いって話ですね。
      しかし北海道ですか・・・しかも蟻酸に硫黄のニュアンスがあるという話も聞いたのでエゾアカはちょっと微妙かもという気になってきています。

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