ざざむし。





超有名なゾウムシ幼虫らしきものの味の実態

2016年のガイアナ奥地への遠征でゾウムシの幼虫らしきものは2種食べた。
完全に電波圏外のアマゾンなので食毒不明のものは調べようもなく、やたらめったら口にはできないがゾウムシの仲間ならばある程度の安心感はある。

小さなゾウムシの幼虫

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ひとつはこれ。
アブラヤシか何かの種子だが、見事に1個に1匹ずつ入っている。
間違いなくゾウムシの一種だとは思うが、専門じゃないから幼虫だけ見ても何ゾウムシだかサッパリわからない。
現地人がパクー(コロソマ)を釣るエサのひとつとして使っていたものを貰って味見した。
腐敗も発酵もしていない新鮮な木の実を食べている昆虫ならば危険な雑菌や寄生虫の可能性はかなり避けられるだろうと考えての特例の生食だ。

噛み締めると柔らかいが弾力があり簡単にプチッとはいかない。
歯で噛み切るように潰してようやく中の味がわかる。
クリーミーで味は濃いが、若干青臭くて室温で緩くなってるバターのような感じ。
やはり実の風味をストレートに引き継いでいる印象だ。
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あちこちに生っていて、見た感じ落ちているものは100%虫が抜け出した穴が開いている。
こんな確率でゾウムシに食われて、ヤシは子孫を残せるのか心配になるくらいだ。

これなら数も集まるし、きっと炒めれば美味しい。
でも一鈎に2匹刺して、1~数kgの美味しいパクーが釣れるならわざわざ食べないよね。

そして、もうひとつが大本命の次
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

大きなゾウムシの幼虫

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よくTVで「カブトムシの幼虫」なんていい加減なことを言われているやつだ。
だいたいヤシオオオサゾウムシが多いんじゃないかと思ってたけど、アマゾンにもいたの?
幼虫だけ見ても私にはサッパリわからない。
しかし、明確に違う点はカブトムシの幼虫のような脚がないこと。
やはりゾウムシではあると思う。
そして、やたらアクティブで、もの凄い勢いで手の上から逃げる。

実はヤシオオオサゾウムシ自体は日本にも侵入してしまっている。
どの程度まで増えているかわからないが、日本ではさほどヤシが伐採を繰り返されるような状況がないので、簡単に食べられるほどの機会はないと思う。

突然それをおばちゃんが持ってきたのでテンション急上昇。
ついていくと、脇に倒れてたヤシの木の芯を手で掻き出していた。
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ぇ、毎日歩いてた道の横のコレに入ってたの?www
中心の柔らかいところに結構いるらしい。

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しかし、掻き出したオガクズを見ると、かなり特殊なニオイがする。
よく見ると、ショウジョウバエを3倍に拡大したくらいの赤いウジも結構涌いている。
ちょっと・・・いや、かなり想像と違う。
エンマムシの仲間も出てくるから糞属性の好むニオイを想像してもらえばだいたい合ってる。

日本のカブトムシの幼虫がどうやっても腐葉土味で不味いのは、幼虫の食べ物のせいだとしか思えない。
いままでヤシオオオサゾウムシは生木に近いものを食べているから美味しいんじゃないか?と思っていた。
しかし実際のところ、これはかなりヤバい感じが漂う。
そして幼虫を触った手は油っぽくベトつき、なんだかわからない不思議で有機的な異臭が激しくこびりつく。
端的に言うと、ベトベトして臭い。
これ、ほんとに美味しいやつなの?

「美味しいから、今夜のディナーにでも出してあげるわよ」
なんて感じのこと言ってたので、もの凄く楽しみにして釣りに行くも、帰ってきたら何も残ってなかった。
昼に全部食っちゃったらしい。
なんなん?
マジなんなん!?
期待させといて叩き落された。
これが海外クォリティーなん?

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夜、ヤシオオオサゾウムシと同じくらいのゾウムシの成虫を発見した。
トイレに一時的に灯る光に飛んできていた。
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明らかにヤシオオオサゾウムシではないが、やはりオサゾウムシの仲間だろうか。
ヤシオオオサゾウムシではなかったにしろ、同じ食性の大型ゾウムシならば味も近いものと想像できる。
朝の大きな幼虫はおそらくこいつのものだろう。

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諦めきれず翌日、伐採され投棄されているヤシを観察して歩いていると、多くは硬すぎてゾウムシが生育しているとは思えない。
しかし、よく見ると1本のヤシの鱗片でも質にバラツキがあることに気付く。
なんとなく直感で入っていそうなものを1枚引っぺがし、割っていくと・・・

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イターーーーーーッ!!!!!

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1枚の鱗片から4匹出てきた。
やっぱりでっけぇ!
味見には十分だ。

嬉々として洗っているとオバチャン登場。
今日のは渡さないからな!
聞いたら、塩して揚げるだけでいいという。
採ったばかりで、あのニオイのヤシを食ってるんだけど大丈夫なんかいな・・・
やってあげるわよって、塩かけて3回揉んで、ちょうど熱してた油に放り込んだ。
いやいやいや、それ絶対に塩の意味ないだろw

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一気に膨らみ、中身が身と空気に分離して風船のようになる。
思いのほかしっかり熱を通すようで、雑菌がヤバイのは経験上わかっている・・・のか?

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美味しそう!
ちょうど朝食中だったので持っていったら遠征メンバーに盛大にドン引きされた。
めっちゃ有名なのにマジで食べないの?
ヘタなガイアナ料理よりよっぽど知名度あると思うんだけど。
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何度見てもやっぱりでかい。
とりあえず1匹プレーンで皮を剥いて食べてみる。

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甘い!

凄く上品な甘さだ。
クリーミーで、砂糖をガラクトースなんかのおとなしい甘さに変えたカスタードクリームみたいな感じか。
セルロースを分解して栄養としているなら、その糖化由来の甘味なんだろうか。
余計な味つけを極力控えたトロトロのオムレツといったほうが近いかもしれない。
心配していた未消化物はそのまま入っているのだが、異臭もないし、オオスズメバチのそれみたいに固くもないから違和感なく食べられる。
問題は腹を壊さないかどうかだけだ。
ちなみに塩味はやっぱり皆無である。

次に皮ごと食べてみると、皮は比較的柔らかいので爽快感はないものの、昆虫特有のキチンの香りがするので中身の味と相まってバランスがいい。
これは丸ごと食べたほうが確かに美味い。
そして、よく揚がっているから頭はパリパリと香ばしくてアクセントになっていてこれまた良い。

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チリソースを少しかけて朝食のパンに挟んで食べたら、これも美味い。
結局、誰も食べないので4匹全部食べたが腹を壊すこともなかった。
未消化物は気にしなくてもいいらしい。

普段の料理を見ていて思ったのだけど、ガイアナの家庭料理ってシーズニングで絡めて加熱して終わりってのが多い。
店に行ってもシーズニングの種類が豊富で、どこかで食べたなぁって味が揃っていた。
だから似たような味ばかりだし、濃いし、味わかんねーのかなと思ってた。
でも、このゾウムシの揚げただけのが美味いってわかるならば、味覚は壊れてる訳ではなさそうだ。

しかし聞くと、既にこのあたりでも食べる人のほうが少数派のようだ。
揚げた幼虫も現地人にiphoneで写真撮られてたくらいだしねw
この時も、結局採ってたおばちゃん以外には食べる人はいなかったみたい。
ここでも文明の進歩と同時に忘れ去られていくものはあるんだな。
地球の裏側なのに、長野県に似たようなものを感じたのでした。

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Comments & Trackbacks

  • コメント ( 6 )
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  1. やっぱり現地でもあまり食べないんですね・・
    ちょっと残念です。

    • アマゾンも広いので地域によるんでしょけど、ガイアナではそうみたいですね。
      でも、ということは放置されててヤシの倒木の中はゾウムシだらけということに。

  2. あーやっぱり美味いんだなぁ…(´・q・`)羨ましいです
    日本でも、宮崎あたりの枯れたフェニックスをほじくってたら出てこないかしら。。

    • ヤシオオオサならそれなりに進入してるみたいだから、探せばいるんじゃないですかね。
      味も同じかどうかわからないけど、揚げただけであれだけあからさまに甘い昆虫は初めてかも。

  3. はじめまして。
    旧ざざむし から読ませて頂いています。
    昨年末に何気なく検索して復活&旧ざざむし も閲覧できることを知り、嬉嬉として毎日チェックしております。
    いつかせつな氏がこの虫のレポをしてくれると信じていました!

    旨そうですねぇ!羨ましいです!
    僕は桜毛虫で我慢します。

    • ちょいちょい止まるから毎日もチェックしなくていいですよ。
      ゾウムシは純粋に高レベルでしたね。
      モンクロシャチホコも完成されてますけどね。

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