浅瀬でなんかパチャパチャと音が聞こえる。
ソ~っと覗いてみると、アオサギがドジョウを食ってた。
l_・) ・・・。
オレにも食わせろー!
ほら、あれですよ。
べつにどうってことないものでも誰かが食べてるのを見ると食べたくなったりするじゃないですか。
皆さんにもありますよね。
生活廃水も殆ど流入しない玉砂利にほんのり泥が体積した水路。
べつに干からびてる訳でもないのに今日は何故か浅瀬でドジョウが暴れてる。
よく見てたらカワセミもドジョウを咥えてた。
この場所なら臭味もあんまりないんじゃなかろか。
ってことで、ザザッと捕れたのを持ち帰った。
シマドジョウも何割か混ざってるけど気にしない。
時々水を換えながら一晩糞出しをしてから調理。
ドジョウの場合は腸呼吸である程度酸素を補ってくれるので泥抜き中の管理が楽でいい。
それでも水中の尿酸値などが上がると水槽臭くなるので、止水ならば水換えだけは怠らずに。
一晩も経てば糞も出なくなり、水は殆ど濁りが出なくなる。
今回は狙ってた訳でもないので小ぶりのものが多いが、数はそこそこいるので食べ出はありそうだ。
普通に柳川でもいいが、べつに取り立てて言うほど強烈にドジョウだから美味いという訳でもないし、せっかくだから地獄鍋を試してみましょうか。
地獄鍋とは「どじょう豆腐」「地獄煮」などとも呼ばれ、中国では「泥鰍鉆豆腐」と呼ばれているらしい。
昔からあったようだが、知名度に対してここまで製法が疑われている料理が他にあるだろうか。
日中いずれも基本は同じで、鍋に豆腐とドジョウを入れ、加熱していくと熱さから逃げようとドジョウが豆腐に潜り込んで煮上がるというもの。
しかしいままで様々なTV番組や探求者達が試みるも、ことごとく失敗してきたらしい。
暴れるだけで豆腐に潜りはしないというのだ。
私も試したことはないのだが、想像するに自分がドジョウだったら
入る訳ないだろうな
と思う。
だってドジョウは豆腐なんて初めて見るんだよ?
水中にいても接触してなかったらその中が冷たいなんて思わないだろうね。
ましてやドジョウの脳の大きさで、しかもパニックだったら絶対入らないだろう。
木綿だ絹だといったレベルの話ではない。
また、ドジョウが弱らないような速度で温度を緩やかに上げていくのでは豆腐の表面も同時に温くなりドジョウが豆腐の芯が冷たいと知る由もないし、雑菌の繁殖を待つようなものでもある。
しかし、料理自体は確実に存在していると思われる。
日本の伝承にもあまりに多いし、グルメ漫画にも登場する。
昔、吉四六さんとかアニメの一休さんでもそんなエピソードがあった気がする。
ソウル郊外のコンソリという豆腐専門店では今でもメニューにあるそうだが、どうもこれはドジョウを豆乳で固めている説もあるので食べてみないとわからない。
日本でも「昔親が作ってくれた」など、食べた経験者の話は散見されるが、実際に目の前で作ってくれて詳細まで覚えているという例は殆どない。
1つには、うまくいかないので熱湯で死んだドジョウを豆腐に突き刺して料理したという例は間違いなく多いだろう。
軽く湯通ししただけのドジョウは真っ直ぐで硬いのでいとも簡単にできるはずだ。
しかし、今回はあくまでも豆腐に潜らせる方法があると仮定して試してみたい。
私は根本的に考え方を変えるべきと判断した。
専門店で出していて、話題性があるにも関わらず誰もが失敗するような料理を
質問されたからって簡単に製法を教える人がどれほどいるのだろうか?
企業秘密は伏せて、もっともらしい製法を教えて「へぇ~」と思わせたら勝ちなのではないか?
と、ここまでの長い前フリを理由に伝承の方法は無視。
私なりに今までドジョウに触れてきて、これなら入るだろうという方法で試してみることにした。
豆腐が入っていたパックに泥抜きした元気なドジョウを適宜。
この時点では水は入れない。
そして木綿豆腐半丁にストローで穴を開ける。
穴はドジョウよりも小さいもの。
やってみればわかるが、箸などで何本も刺して動かせば豆腐は割れて崩れてしまうので多少の穴は必要なはず。
あと、今回はドジョウの数が専門店で扱うような数ではないので、穴を下から斜め上に角度を変えて開けるようにした。
これを先ほどのパックに入れてあるドジョウの中央に置く。
そしてこのパックを少量の水を張ったボウルに浮かべ、その水に熱湯を注いでいく。
要するにぬるま湯での湯煎だ。
ぬるま湯というよりは熱めの風呂くらいの温度を超えたところか、ドジョウが激しく動きはじめた。
それも慣れるのかすぐ動きを止めるので、更に熱湯を足す。すると限界突破してしまったのか暴れだし、飛び出して熱湯に入って死亡するものが出てきたので様子見。
熱湯を注いでから1分半ほどで豆腐を確認してみる。
入ってるじゃん!
どんなに検索してもガセ扱いで都市伝説としか出てこない姿がそこにはあった。
こればっかりはウソと言われても困るので改めて動画撮ってみた。
クソ画質で申し訳ないけど、結構な数が豆腐に入っていることがわかってもらえると思う。
同時に、ギリギリの温度では豆腐に触れるような位置にいても潜る素振りを見せないこともわかるし、少し苦しい温度になると暴れ出し遠くに逃げようとするので、それが水の中であったとしても数々の人が失敗を繰り返してきたことは想像に容易いと思う。
ここから、念の為、もう少し熱湯を加えて弱らせる。
あとはこのドジョウの詰まった豆腐を、予めゴボウの笹がきを煮ていた鍋に入れて煮込むだけだ。
投入した直後、弱らせていたにも関わらず2~3匹が豆腐から飛び出し鍋の中で暴れて昇天。
やっぱり弱っていても熱いものは熱いらしい。
豆腐に潜らなかったドジョウも勿体無いので無駄にはしない。
すぐ後ろに生えてたセリと溶き卵で仕上げ。
ちょっと卵入れるタイミング失敗したけど気にしない。
小ぶりなものは同じ場所で採れたマシジミと共に吸い物に。
中サイズ以上になると背骨がちょっと気になるが、小型のものはシロウオに近い舌触りで悪くない。
水質がよかったのか、これでも臭味は全くなかった。
同じところで網に入ったスジエビと一緒に片栗粉だけで唐揚げに。
唐揚げはやっぱり安定で不味くなる理由もなし。
材料の大半が水田の脇で揃ったね。
名づけて
路傍の泥鰌地獄御膳。
抜け出す途中で息絶えたのが想像できる感じで煮えていますね。
死んだドジョウでの人為的な結果でこの角度はないよな。
結局、今回は小さめのドジョウが多かったということもあるだろうが、煮上がった豆腐半丁の中に7匹詰まっていた。
投下直後に2~3匹抜け出したことから考えると、10匹くらい潜っていたことになる。
味はというと、当然のことながら
豆腐に詰まっている意味は全く無い。
今回は全く臭味もなかったから良いが、臭味があるようなドジョウだったらむしろ豆腐に入らないほうが美味いだろう。
しかも、一般的に開いて柳川にするサイズのドジョウとなると背骨が硬く気になるので、豆腐に詰まった状態では柔らかくなるまで煮るのは困難。
あえて豆腐に潜らせる意味がないのである。
まさに、食卓の話題のタネにしかなり得ない感じだ。
しかしこれで、伝承されている製法を守らなければドジョウを豆腐に潜らせることは可能だとわかった。
更なる改善法もある程度は考えたが、もうあまり意味を感じないので割愛。
しかしこんな効率の悪いことを大陸の専門店では本当にやっているんだろうか。
想像では、専門店の取り扱い量ならば水を切ったドジョウの山に穴を開けた豆腐をゴロゴロ入れるだけで埋もれた豆腐の中に入りそうではある。
豆腐を拾い出しながら詰まっているものから使う感じだったら無駄はなさそうだが、効率悪いのに果たしてそこまで正直にやってるだろうか。
長時間ドジョウに揉まれた豆腐の安全性も疑わしいものだし。
証明できる技術だけは持っておきつつ、やっぱり
普段は死んだやつを突き刺してるような気がするなぁ。
むしろ逆で冷水に湯豆腐とドジョウを入れたら潜るんじゃ?w
1965年生まれです。
夏場はどじょうが売っているのが当たり前な世代です。
子供の頃、何度も食べました。
ある日、祖父がどじょう鍋を作ってくれました。
豆腐の中には悶えて体を捻らせたどじょうが沢山突き刺さっていました。
正直、食べるのが苦痛でした。
順番とか良く覚えていません。
熱湯にした時にどじょうを入れた様な記憶が有ります。
どじょうは一瞬で豆腐の中へ・・・。
忘れられない思い出です。
うちの母が言うに
地獄鍋は四角い日本の豆腐ではなく
豆腐のどじょう鍋らしい
若い時に中国人の経営するレストランで仕事していたのですが、どじょう鍋は食べてないそうです。
祖父が存命中に作ってくれた。
40年以上前の頃だろうか。
普通に水を入れた鍋で似ていた。
少し熱くなってくると、どじょうたちは偉い勢いで豆腐に潜っていった。
出来上がると悶絶した状態で豆腐の中に入ったどじょう。おえっ。
とてもショッキングでした。
食え食え言われたけど、箸がなかなか進まなかった。
どぜう鍋、そこらへんの鰻屋よりはるかに美味しいじゃないですか。あたしゃ飯田屋とかでわざわざ金払って食べますよ。
あ、地獄豆腐に限らず、昔のレシピは間違ってたり嘘だったりするもの多いですよ!
出典忘れたけど、昔の「作ってる!」ってとこは、地獄豆腐はホントは燗酒で締めたドジョウを木綿豆腐にブスブス差し込むはずで、黄身返しは緩衝材(味噌とかオガクズとな)に包んだ生卵を詰めた樽を誤って転がしたんじゃなかたったかしら。
初めまして
面白い検証見させていただきました
見て思ったのがドジョウの習性で暗がりかつせまいところに入りたがりなので
豆腐パックより広いレベルの水で放置していれば勝手に豆腐に入り、その豆腐を鍋にするという方法が良いのかなと
割と暴れたがりだから熱で急かしても動画のように外に出る方が多いと思います
その点ぬるま湯は良い着目点ですね
問題は時間かけてドジョウと一緒に長く入れてた豆腐が保険衛生上大丈夫なんかというね。
そうでなくても案外入ってくれないですよ。
豆腐屋さんだったら
よく煮たドジョウを閉じ込めた豆腐を作れるように思います。
型にドジョウと豆乳を入れ固めるという工程で。
そうやって店で出てくるドジョウ豆腐は作られているのではないでしょうか。
できそうですが、写真を見る限りでは単に穴あけて絞めたのを突っ込んでる風ですね。
そのほうが断然コストかからないでしょうし。
何やってんの?
そこは豆腐じゃなくてアワビを使おうよ!アワビに突撃させるべき!
凄いですね!
素晴らしい検証結果だったと思います。
それにしても、まだ、自然のドジョウを食べられるような水質の綺麗な場所があることに感謝です。
私はドジョウを飼っているので、なかなか食べようという気にはなりませんが。
まぁ、あえて食べんでも・・・という魚ではありますよね。
昔はそれこそU字溝にもウヨウヨといていくらでも採れたんですけど。
初めて読まして頂きました。
楽しい内容が沢山ですね。
潜りドジョウの作り方。
40年ほど前に聞いたのを、思い出しました。
自分で作ったことはないのですが、参考までに。
ドジョウを水の入ったお鍋に入れ火にかけます。
水温が上がり、ドジョウが暴れだしたら冷たい豆腐を投入します。
熱さから逃れるためドジョウが豆腐にもぐり、煮えたら完成。
豆腐は絹ごしの方が潜りやすいかも。
それがまさに山のような屍を積み重ねてきた都市伝説とされてる作り方なのですよ
なのですよじゃねーよ気持ちわりいな
まず本文読んでからコメントしろks
「自分で作ったことはない」ものを何が「参考までに」だよ
「なのですよ」といった論点に関係ないところに突っかかって話をそらすな
まず本文読んでねぇーだろ笑
いつも楽しみに拝見しています。
子供のころ、1度だけお袋がチャレンジしたのを、おもいだしました。
もちろん、上手くいかず、味はかわらんやろでかたづけてました。
検証結果を読んでスッキリしました。
味は変わらないし、むしろ火が通り易くてバラバラのほうが良いかと。
しかし聞けば聞くほど、ちょっと昔の人はかなりの確率で試してるのでいかに有名な話なのかがよくわかりますね。
むかし初めてドジョウ豆腐のとんち話を読んだとき「吉四六さんはきっと豆腐に穴を開けていたに違いない」と小学生ながら思っていたのですが、どうやら間違ってはなかったようですね。
検証ありがとうございます。
多分、ゆるい絹ごしくらい柔らかければ穴がなくてもなんとかなる気がしないでもない。
あとは、ゆ~っくり加熱していけば出来るという説もあるけど、そもそも発祥の時代にそんな過熱調節ができたのかという話だし。
カンディルみたいに標的にゴリゴリ集まって潜る姿は想像しにくいですよね。
お箸か何かで穴を開けておいて・・・と考えたことはありましたが確かにストローの方がよさそうですね。
地獄鍋を食べてみたいとは思いませんが、実現できる可能性があると分かって感動しました。
できないと言われると、できるだろって感情が湧いてきたのでやったまで。
ほんと、単に話の種的な悪趣味なだけの料理だと思うので、できるとわかってしまえばもうやる意味はないと思いますね。
検証素晴らしいですね。
以前に某グループでもやったことがありまして、そのときは全然潜らず。
豆腐に穴を開けておくと入っていくと。なるほど。
豆腐を入れた容器にはあらかじめ水などは入れておくのですか?
ああ、ごめんなさい。一番最初は水を入れないと書いてありましたね。
加熱しているときは?水を入れず?
最後まで水は入れません。
もともと水が枯れても湿ってれば陸上で1週間とか生きてる魚なので、水がなければ窪みを探すと思ったのです。
手で掴んでも指の隙間に入ろうとするのと同じですよ。
観察も兼ねて今回は豆腐パックでやったけど、牛乳パックくらいの高さがあれば脱出も防げるので、回復できる温度の上限までわかれば無駄は少ないと思います。
できないと言われてるからやったけど、ほんとに意味ない料理ですね。