海のファミリーフィッシングで注意しなければならない生物がいくつかいますが、その中でも筆頭クラスのものがウミケムシでしょう。
ケムシといっても昆虫ではなく環形動物なので広く見ればミミズの仲間、もっと細かく見れば多毛類なのでゴカイに近いです。ミミズは貧毛綱なので毛が少なくて羨ましいですね。え?
主に投げ釣りで釣れることが多く、イソメや切り身を海底に放置していると丸呑みして釣れてきます。
こいつらが釣れないようにするには海底にエサを放置しないようにすればよく、モミジガイなどのヒトデに悩まされる人も同様の対処でかなり避けられます。
ウミケムシ科には100種以上あるらしいのですが比較的暖かい海に多いので北方に住んでいるとなかなか縁がない生物です。
今回釣れたのも一般的なウミケムシChloeia flavaでしょう。チャームポイントは背中に並ぶ目玉模様。
警戒すると逆立てるこの無数の剛毛が全て刺さると考えてよいです。
非常に鋭くて刺さり易く、本体から抜け易いゆえにコンプラニンという毒成分が体内に長時間侵入することとなり、痒みを伴う炎症で数日間苦しめられます。
最近あまりブッ込み釣りをしなくなったせいか、捕まえたことはあれど何気に釣ったことなかったんですよね。
いるところにはわんさかいるもので釣れるわ釣れるわ。
初めて釣れるとこんなのでも嬉しいです。狙っていた訳ではないのですが。
なかなかの美形。
これは飼ったら楽しそう。
たくさん釣れました。
よかったですね。
これほどまな板が似合わない奴も珍しい pic.twitter.com/kgF1GLbMw0
— ざざむし。の人 (@nekton27) 2017年1月23日
ジップロックに密封したまま2日放置してたのにこんなに元気なんてどんな生命力だよ。
ちなみに少しでも引っかかりがあると容赦なく剛毛が刺さって抜けます。
指紋程度の段差で刺さりまくる訳ですね。
這い回ったあとのまな板の上が棘だらけです。
これも刺されば痒みに襲われることになりますので熱湯をかけるなどして不活性化させて流しましょう。
さて、何故ウミケムシを持ち帰ったかというと飼う為ではなく食べてみる為です。
とはいえ、一応食べられることはわかっていて、古くは「ささめ針」のグルメ探検隊の裏ページみたいなところで食べていたのを見て、当時はこのへん狙ってもあんまり釣れへんからなぁと思っていたものです。
その後もぽつぽつと食べてみる人はいるもののいまいちパッとしない結果のようで、伝聞だけでは納得いかないなぁと。
いずれにしても有毒な剛毛だけがネックというのは共通のようですので、そこをなんとかできればいいのではないでしょうか。
たくさん手に入るということは、処理と味の問題が容易にクリアできれば有望な食材となる可能性はある訳です。
ここらでおあそびはおわりだってとこをみせてやりたい。
カッ!
うまく焼けました。
何故か磯の香りに混ざってほんのりカニの香りがします。
ちょっとヤムチャを思い出しました。
うん。
刺さらないようですが、残念ながら両サイドの剛毛は焼けにくいみたいなので毟り取ります。
あと、サンマの切身で釣っていた外道ですから、未消化のでろでろサンマが入っていると嫌なので切開して消化管を取り去ります。
めんどくさいから大火力で薙ぎ払うのは一匹だけにしておこう。
残りはサッと茹でます。
ものすごいアクと共に湯が緑っぽく濁ります。
ちょっとタコノマクラを思い出しましたが、あれほど酷くはありませんから大丈夫でしょう。
湯上がりの色っぽいウミケムシ達です。
湯船では服を脱いでもらいたいものです。
ウミケムシの毒は60度台で殆ど不活性化するらしいので、これでもう恐れることなはいでしょう。
薙ぎ払ったのと同様、未消化物が嫌なので取り出します。
弱っていたものは口を露出させていたので茹でる前に切り落とし、そこから絞ることができます。
しかし元気なものは全体が引き締まっているので腹か背を切り開いて出すことになりそうです。
先に背中を切ってしまうと棘が毟りにくいので腹からが楽でしたね。
棘もしなやかになっているので刺さることなく毟っていけます。
刺さることなく簡単に・・・
刺さるじゃねーかw
既に毒性の心配はないのですが、特に間接部分や柔らかい指などは触れる角度によってまだ刺さります。間接などの場合、刺さっていることに気付かず曲げると深く入って折れるので注意しましょう。
あらゆる角度に生えているので優しく撫でて引っかかりを感じる部分から抜くことで全て抜き去ることは可能でした。魚用の骨抜きが便利でしたが、美容グッズの毛抜きでもよいでしょう。
どうでもいい話ですがHGヤムチャを貼って骨抜きを貼らないのは合法的にああいう画像を使いたいからという理由だけだったりします。
綺麗に抜けましたね。
こうして見るともう別の生き物です。
何匹か同様に抜きましたが、面倒なので挫折。
ちなみに茹で汁ですが、ウミケムシ出汁が出ていると思うので茶漉しで漉して使ってみましょうか。
このままだと味見の一口で夏場の高温になってイカレた陸寄りの潮溜まりにワープさせられた気分になりますので、控えめに言って無理。
さて、残りのウミケムシは内臓だけとって揚げてみましょう。
全部粉砕して使うという手も考えたのですが結局ジャリジャリするんじゃ不快ですし、もう揚げ物に頼るしかないともいえます。
一応、ザックリ毟ったものも比較対象に。
あと、多毛類代表として青イソメことアオゴカイも比較用に。
いまどき青イソメくらい誰でも食べているので比較するのにわかり易くちょうど良いでしょう。
できました。
左の炙りからいってみましょう。
・・・うん、香ばしい。
ただし肉に埋まっている部分の剛毛はカリカリになっていないからか、食べているとシャリシャリする。
各地にある年始のお焚き上げ系行事の火に突っ込んで焼いた餅に付いた炭みたいなシャリシャリ感。
味自体は貝っぽいが香りに負ける程度で個性が弱い。
次に中央の湯引き。
歯応えは弱めで、やっぱり貝っぽさがあるものの、どこかほんのりカニの面影を感じる香り。
ただ全てが薄すぎて、トータルではナメクジに負ける。
やはり人間でもそうだけど全教科赤点の人より、殆ど一桁でも一教科だけ絶対満点とり続ける尖がった人のほうが何かやってくれそうな感じがする。
ウミケムシは毒の剛毛に全部ステータス振っちまったんだな。
で、右の赤いやつ。
死にかけで切り取れたのが2匹だけだったんだけど、ウミケムシの口。
加熱したものでも口周りは若干旨味が強いのがわかるが、このように刺身だとより明確に甘い。
完全にユムシやミル貝に迫る甘さで、間違いなく美味しい。
生なので縮まないのもよいところだが、しかしこれだけの為に面倒な思いをしたいかといえば微妙。
ウミケムシの吸い物。
つまりウミケムスィー。
池の鯉にも見えて風情があって良いですね(棒
イカレた濃縮潮溜りにしか感じられなかった液体もネギと僅かな醤油でなんとか飲める程度にはなった。醤油とネギ凄い。
しかし2杯は飲む気になれない強さがある。
ガッツが必要だ。
具のウミケムシもめちゃくちゃ頑張って毛を毟ったのに、ただの湯引きと比べても明確に味が抜けて薄い。
これは労力対効果が酷すぎて悲しい気持ちになる。
そして安牌だと思っていた素揚げ。
刺さる。
超刺さる。
安易に口に入れると舌に突き刺さり、安易に噛むと歯茎に突き刺さる。
揚げて水分が飛ぶことで剛毛の強度が戻ってしまったようで、毒による追加ダメージがなくなっただけで物理攻撃力だけは復活してしまった。
そっと咥えたら奥歯の上へ瞬間移動させて砕くようにしないと口の中が大惨事になる。
軽く毟ってから揚げたものも全く意味がなく、むしろ短毛のほうが攻撃力が高い印象すらある。
これは例えるなら「パパのお髭痛いからキライ現象」というところか。
うかつに咀嚼できないので、たったこれだけの量を食べきるのにめちゃくちゃ時間がかかった。
肝心の味は意外に濃縮されており茹でただけのものや炙っただけのものより味を濃く感じる。
油のおかげかもしれないし、水分が飛んだ結果かもしれないが、正直期待していなかった割に青イソメよりも明確に味は濃いのだ。ウミケムシが素揚げなのに対し、青イソメは天麩羅にしたにも関わらず、衣の味の差があってもなおウミケムシのほうが若干上。
防御力を上げなかったらいろんな生物のエサになっていたんだろうな。
予想よりもだいぶめんどくさく、微妙だった。
結論から言ってしまうと、やっぱりウミケムシは飼育するんでもなければ持ち帰らなくていいと思う。
食べるならば、釣れた時にそのまま引っ張って口を露出させて切り取って海へ返す。
多毛類だから再生するんじゃないのかな。知らんけど。
そして切り取った口だけ食べる。
醤油なくても美味しいので無駄がなくてよいのではないか。
後日また大量に釣れたので頑張って口だけ回収してきた。
ウミケム寿司。
ンまい!
あっまーい!
しかしなかなか口を出してくれないものもいるわ、口だけ切り取ったつもりでも折れた棘が付いていたり、完成するまでに全く気が抜けない。
手間がかかりすぎて到底店に出せるようなものではないので頑張って作るしかないだろう。
寿司や刺身に必要な鮮度のよいウミケムシの口です。小さい破片に棘が1本乗っているのがわかると思いますが要注意です。 pic.twitter.com/re14lwCDQu
— ざざむし。の人 (@nekton27) 2017年2月19日
ただし、不器用な人にはオススメしない。絶対刺されるからね。
口だけうまいやつには気をつけろ。
もしかしてアホなの?(誉め言葉)
こいつ釣れると外すのが面倒で面倒で…
貴方に近海のウミケムシすべてを食べる権利をさしあげますので
どうにかしてry
釣った事ありますけど
流石に怖くてリリースしました
それを食べてみるなんて尊敬に値します
ってか、風に飛ぶ毒針って・・・
キラキラ飛ぶし、地面に置いただけで折れた毒針が散らかるのでうかつに手もつけなくなりますよね。
最初の火炎放射調理法が豪快過ぎて思わずちょっと笑ってしまいました。
口だけは美味しく食べられるというのはユニークですね
本体も甘味はあるんですが、いかんせん棘抜きがめんどくさすぎです。
口だけはガチでうまいので万人向けです。
ヒンッ
死ぬなせつなッ!
ハフン
一昨年海で泳いでたらこいつに遭遇
これだけ毛を毟ると別の生き物になるんだね
まさかの素揚げで剛毛強化とかどんだけ毛に恵まれてんだろう
また毛の話してる・・・
青虫なんて、あんなゴム臭い
ケミカルな汁のでる物
食べた事ないですよ(笑)
海毛虫釣った事ないッス
瀬戸内にいないのか?
運がいいのか?
生と茹ででめちゃくちゃゴムですね。
生で評価するのは卵巣だけ、丸ごとでは揚げしか評価できないです。
ウミケムシ、相模湾も手前のほうは超少ないんですよ。伊豆方面とか駿河湾は多いのに。
誰馬
馬
「いまどき青イソメくらい誰でも食べているので」
ウミケムシよりもこの文章が一番印象に残ってしまった…w
😀
かわいいね?
かわいいよ!
夜釣りでたまに釣れますがライトで当てると毛がキラキラして規則的にウネウネ動くのでちょっとケミカルな感じがしますね
断熱材に使われるガラス繊維によく似てると思います見た目も刺さるところなんかも
こういう造形好きなんですよね。
1mくらいあったら海中では遭いたくないですが。
ウミケムシと言えどもちゃんと料理してやれば、
立派な食材に……見えてこないですね、なんででしょう。
もうね、実際やると手間がハンパなさすぎて結果がどうでもよくなりますわ。
フナムシよりかは美味しそう
それな
次はギンピー・ギンピーですな
日本にあれば試すところですけどね。
イラクサ同様なら茹でてしまえば勝ちなイージーさしか想像できないんですけど。
ヤムチャクソ笑いましたw
それになにあのフィギュア、超欲しいw
買わないけどw
バーナーって持ってないんですけど、良い物ですね(爆)。
最近、バーナーと真空パック器が欲しいんですよ。
これらはたぶん、遠からず買います(笑)。
やすもののばーなは
やめなよ?
了解いたしました!
最安値の物は避けるように心がけまっす。
あれめちゃくちゃ売れたらしいですよ。
バーナーは2000円前後で買えて腐るもんでもないのであると便利ですよ。
あれが売れるっていうのは、案外悪くない気がしますね。
ネタにお金や労力を出せる人って嫌いじゃないです(笑)。
バーナーはちょいと下調べしてみます。
カッ
放置していたキス竿にコイツラが三連ヒットしたのは、今は遠い思い出です・・・
「毒があるから触るなよ!」と針からはずしてくれた今は無きオヤジのひとさし指の仇を討ってくれてありがとうございました。
ペンチもなんも持っていってなかったのでハサミとテンビンでくるりとやりました。
たまにカサゴの口の中からコンニチワするんですけど、彼らも好んで食べてるわけじゃなさそうですね。
失礼
食べてたのは雌のカサゴでした。
いや、そこどっちでもいいけどねw
ミズウオもハリセンボンとかフグとか食ってるし、魚の感覚ってようわからんよね。
うん、やっぱり口ですよ、口を食うものです。
口だけはガチでうまい
久しぶりの更新がいつも通りで安心しました。動いてる海毛虫を初めて見ましたが何だか宇宙を感じますね。
まな板の上の宇宙!
ハナオレウミケムシならうちの水槽にいますけど普段隠れててあまり見ないしヒトデのエサ横取りするし水替え時に刺されるしであまり良いことないです。
残飯処理係としては優秀なんですけどね・・・。
なんやかんやでウミケムシもノーマルが完成されてる感ありますよね。
夜のほうが釣れるけど夜行性なんですかね?
消灯後に水槽見るとたまに表を徘徊してるので多分夜行性だと思います。
エサの匂い嗅ぎつけるとライト点灯時でも出てきますがw
ヒトデもですがこの食い意地は誰に似たのやら・・・。
環形動物でも飼い主に似るんでしょうかw
いつもにも増して「食いたくねえ」「食った後腹壊しそう。」「腹の中で毛が刺さったりしねえのかな。」「管理人、良くこんなもん食えるな。心臓にも毛が生えてる?」「マジキモイ(褒め言葉)」という感想しか出ませんw
ダンジョンでモンスターを食すメシ漫画「ダンジョン飯」とが、まだ普通に見えてきます。
いっそアレの後書きとか帯に一言書かてたりはしませんかね。
「あの『ざざむし』管理人も絶賛。『私もまだレッドドラゴンだけは食べたことはありません』。」みたいな。
そういう仕事の話なら楽しそうなので喜んで受けたいですが、知名度的に平坂さんが呼ばれるんじゃないのかなぁw
でも口の刺身はガチでうまいです。