ざざむし。

豆な話

一般に利用されていないものには理由があることが多いです。
しかしそう思い込んでいただけで実は誰も真価に気付いていなかっただけということがあり得ます。そんな希望を抱いてマイナーなものを口にする人も結構いるんじゃないでしょうか。
私だよ。

野の植物を眺めた時に「なんか食べられそう」と思うものには経験に即した理由がなにかしらあるものですが、その最たるもののひとつにマメ科植物があります。
種を見ると豆。
見たことある食べ物に似ているというだけでなんとなく食べてみたくなるというのは理由としては仕方のないことだと思います。

豆に拘らず利用するならば、レンゲやニセアカシアのように花を天麩羅にするような直接利用のほか養蜂に利用できたり、どこにでも生えていそうなカラスノエンドウのように豆苗的な使い方ができたりもするのですが、今回は豆としていくつか選んで扱ってみます。
ただ、基本的な前提として、マメ科植物は加熱して食べましょう。

マメ科植物の多くにはレクチンやサポニンといった人体に毒としても作用する成分が含まれています。レクチンと一口に言っても様々な種類があるのですがマメ科のレクチンは加熱で無害化できるものが多いようです。
野草に限らず、大豆などにも普通に含まれているので必ず加熱して食べましょう。

ちょっと待って!豆苗のサラダとかどうなの?
と思われるかもしれませんが、元となるエンドウ豆はレクチンが少なく、更に伸びた芽を常識的な量食べる限りは問題が起こるほどではないようです。生で食べた記憶はないけどカラスノエンドウも同様に低いらしい。これらのことからも毒性が低いものを選んで少量ならば生でもいけるものがあるということがわかりますが

種である豆以外は濃度が低いとはいえ、体質による差もありうるので生食はほどほどにしておいたほうがいいでしょう。
見た目だけでそんなに特別うまさがUPするほどのものではないので、リスクは避けたほうが無難です。

同じことの繰り返しばかりになるのは読む人にとってもクドイだけという訳で、今回は野生の小さな豆でイマイチ使えないという結果にしかならなかったものを集めたごった煮記事です。

ヤブツルアズキやフジなど単体で記事に使ってもいいなと思えるものはまた別の機会にでも。

 

とりあえずハマエンドウからいってみましょう。

関東では激減しているというので採る気になれませんが、引っ越してからあちこちに繁りまくっているのが当たり前になりまして。
ハマエンドウは若芽が美味しいです。ただ今回は豆なので…

結実する季節に一株から一鞘ずつ採集するだけでもすぐ大漁。
ちょっと絹サヤっぽい、いかにもエンドウな感じの実ですが、残念なことによほど若い鞘でないと繊維が強すぎてダメだった。
中身の豆だけ食べると美味しいだけにちょっと残念。
浜の環境に依存して減少傾向の植物なので、適度に新芽をいただく程度に留めたいが、それならカラスノエンドウでもいいかなと思う。

 

似た感じで残念だったのがヤブマメ

これは更にミニチュアさやえんどうな見た目。


めっちゃかわいい。
食べちゃいたいくらいかわいい。


食べる。


しかしこれも鞘の繊維がキツすぎて食べられなかった。
種はまさにエンドウの味で食感もよく美味しいので、もっと熟すまで成長させてグリンピース的に使ったらいいのかもしれないと思ったが、食用とする際に重要な物量が確保できなくて断念した。
鞘に時々入ってるメイガか何かの幼虫もいっちょまえにエンドウ味。
ハマエンドウにしてもヤブマメにしても、鞘が柔らかい株が発見できたら品種を固定していくことで美味しいものができそう。

 

エンドウっぽいやつの対極として大豆に似てるのがツルマメ

指がなくてサイズ感がわからなかったら枝豆?って思っちゃう人もいると思う。
これまた小さくて可愛いが、見るからに毛深い鞘なので試すまでもなく中の豆だけを食べることになる。大豆の原種と言われるだけあって塩茹ですると枝豆っぽい旨味は感じますが、小さすぎて塩味の主張に負けてしまいます。

ツルマメも同様、あまりに小さいので物量に頼ることになるが、そこは問題ないので大豆の代わりとして試してみます。


鞘が黒くなってきたものから適当に摘んできます。


ダンボールにでも入れて日向に放っておくと乾燥して鞘が弾けます。
ヤブツルアズキは弾けた鞘がクルクル螺旋になって豆を離してくれないものが多く困るのですが、ツルマメは軽くガシャガシャするだけで鞘からだいたい落ちてくれるので選別が楽です。
小さいけれども採取・選別が楽というのは食料として見た時に長所といえます。


形こそ大豆っぽいけど、粉を噴いたような黒い豆。


大豆のように水に一晩漬けてから調理。


一晩で水を吸ってだいぶ大きくなりますが、吸うものばかりではないようです。
このへんはヤブツルアズキと似てる。


とりあえず圧力鍋で3分圧力かけて余熱処理。
短時間でレクチンをぶっ壊すには圧力鍋は便利ですね。
ちなみに銀杏が入っているのは、同じ熱量を使うのなら他のものも加熱したほうが無駄がないので比較用です。


大豆っぽいのなら極小納豆ができないかね?ということで納豆を仕込みます。
この菌、買ったらなんでもかんでも使わないと菌が使いきれないというのもあります。

蒸す、または茹でた豆に溶いた納豆菌を振りかけ、圧力鍋で一緒に熱したスプーンで軽く混ぜたら炊飯器に少量の水を張って一晩保温。

できました。


見た感じは納豆になってるっぽい。
しかし誤算。
混ぜると糸は引くし、ニオイは納豆なのだが、粘性でまとまって持ち上がるほどには糸を引いてくれずバラバラのままだ。何故なんだろう?味も大豆の納豆に近いが大豆ほどは旨味に深みがない。そして小粒納豆より更に半分くらいのサイズにも関わらず、皮の厚さが大粒大豆と同じくらいに感じるので皮の違和感を強く感じてしまう。皮の厚さのせいなのか、タンパク質が大豆より少ないのか、小豆で作ろうとした時のような残念さが目立ってしまうので謎が残る。粘りの成分はγ-ポリグルタミン酸と果糖が繋がったものらしいので、なるほど口に入れた瞬間に旨味が足りないと感じてしまうのは粘性の少なさがストレートに影響していると言え、豆の中身自体はちゃんと納豆しているだけに惜しい。

加熱時間や発酵時間、菌の量などを変えても意味はなかった。そもそも比較も兼ねて同時に作っている大豆や銀杏が大成功するのでツルマメの問題なのはほぼ間違いない。
皮が問題ならひきわりで試したいところだけど細かすぎて無意味に大変なだけなので諦める。


こうなると改めて普通の大豆の納豆の優秀さを実感する。
納豆は大粒も小粒もひきわりもそれぞれの良さがあって好きなので、遜色のない超極小納豆ができたら面白そうだと思っていただけに残念。

それに比べて

たまに銀杏で作る納豆は皮も感じず芯までねっとりしていて相変わらず優秀です。
大豆とも比較にならない重量にも関わらず全体が持ち上がるこの粘りからも旨味成分の多さを想像していただけるのではないでしょうか。豆じゃないから今回は外野だけど。

ところで銀杏には4’-MPNという物質が含まれていて、この物質は熱に対して安定なので過剰摂取するとビタミンB6欠乏と似た症状が現れる中毒を呈します。マメ科の中にもこれに近い配糖体をもつ種があるそうなので、未知のものをいきなり大量摂取するのは当然ながら危険だが、少し食べて大丈夫だったからといって量を増やしていって中毒が発生する可能性も忘れてはいけない。特に幼いうちの銀杏は命に関わるので要注意です。(私は100個まで平気)

ちなみに普通に大豆でできた納豆も食べすぎでセレン中毒を発症する例があります。
まぁそんなこと言ったら水でも塩でも死ねる訳で、何事もほどほど適量がいいですね。
それらを踏まえた上で、作りたい方は納豆菌を買ってお好きなもので作りましょう。

温度が高すぎる機種でもなければ炊飯器の保温でできますので。
ただし、なんでもできるとは言いませんが。
あと、抗凝血薬(ワルファリン)服用中の方は納豆が効果を阻害するそうなので控えましょう。

話を元に戻します。

ツルマメ納豆が残念だったので無難に煮物にでもしましょうか。
例によってツルマメだけ加熱するのも無駄があるので、今回も他の食材と共にやっていきましょう。


ヌスビトハギです。
草むらを歩くとペタペタくっついてくる三角形のアレですが、花を見るとなるほどと思うはずのマメ科です。服に付く実が泥棒の足跡みたいに見えるからヌスビトハギ。
食用例は聞きませんが毒性も聞かないし同じマメ科なのでなんとかなるでしょう。アレチと混ざっていると思いますが気にしません。


煮たら何故浮いた?


ということで冒頭の豆しば「ねぇ知ってる?」は茹でヌスビトハギ豆しばでした。
煮たら倍くらいに膨らんだ感じがします。


自分は何をしているんだろうという気持ちになる。


ぼじゅわー


ヌスビトハギの煮豆のできあがり。
やってみたかっただけ感満載。


ヌスビトハギに比べればツルマメは大きいです。
褒められたい人が下位の存在を引き合いに出す気持ちが少しわかる気がしますが、地力が伴っていなければ評価されなどしないということを思い知るフラグです。


ほら普通に料理っぽい


ツルマメ煮の完成。


大豆が銀杏に見えるくらい、どれだけ小さいのかがおわかりになると思います。
だが小さくても美味しければ問題ないのです。


まずヌスビトハギ
豆の味はあるのだけど大豆寄りじゃない。なんというか、レンズ豆のほうが近い感じがする。それでいてサイズ不相応に皮が強めに感じるので、噛み潰さないと豆の旨味を感じない。それなのにこんなゴマ粒みたいなサイズというのは食用としては微妙と言わざるを得ない。
やる前からわかれ。

対してツルマメ
納豆の時に感じた通り、サイズの割に皮が強く感じるのは変わらないが、大豆っぽい味は煮物にはそれなりに合う。しかし何度か煮てみてわかったのは、温かいうちは良いのだが冷めると縮んで硬くなってしまうものが結構多い。
大量に採れて保存も効くのだけど、一度に調理して冷えたまま食べる常備菜に向かないというのはマイナス点だと思う。そう考えると、品種改良していかない限りはサバイバル条件下で繋ぎのひとつとして利用するか、見た目の可愛さ目的に栽培するくらいしか使い道はないのかな。
ヌスビトハギの後でなかったら全然ダメじゃないか。

同じ栽培面積で食用目的ならやっぱり大豆育てちゃうよ。

しかし言葉にならない素質を感じるのでまだ納得できない。

炒ってみたらどうか。
吸水させないのでサイズ的にも芋虫毛虫の糞にしか見えないけど。


節分の香りがしてきたところでストップ。
これは・・・完全に節分の炒り大豆の味だ。
このままでうまい。風味も旨味もそのまんまだからお茶請けになるぞ。

ということはアレもできるのでは?

ミルサーないけどサイズ感同じだしペッパーミルでなんとかなるだろ。
炒ったツルマメをゴリゴリ挽いていく。


いくらなんでもちょっと粗いな。


篩って二度挽きしてみよう。


もう完全にきな粉だコレw
香りも味もまさにきな粉。むしろ出来立てなだけに香りがめちゃくちゃ良い。
黒い皮も粉にするだけでこんなに目立たなくなるとは思わなかった。
これなら密封しておけばある程度の保存もできるんじゃないのかな。


うまい。
ツルマメを大豆の代わりに使いたいならコレしかないよというひとつの結論がでました。
味的には炒りツルマメときな粉が双璧ですね。
楽に美味しく食べるなら炒りツルマメ、きな粉で食べるなら仕上げを擂鉢で当たればもっと完成度は上がるでしょう。

しかしツルマメが本当に大豆の原種なのであれば、ここからどれだけの苦労を繰り返して大豆を生み出したのかと考えると先人の努力に頭が下がります。
ダイズスゴイ。

豆は加熱して食べようということで話してきましたが、最後に、マメ科でも凶悪な毒性のものがない訳ではないです。
トウアズキやクララなど加熱したところで人が死ぬレベルのものは食べてはいけないので覚えておきたいところ。湘南の海沿いなんかだとエニシダの仲間の黄色い花が記憶にある人も多いのではないかと思いますが、あれもヤバいらしいので食べたことはない。葉がマメ科っぽいのが判りやすいだけに安易に実を食べてしまうと致命傷になる可能性があるので、とりあえずソレが何なのかを調べてから食べる癖をつけたほうが良いですね。
安全な野食はマメな人のほうが向いてます。

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Comments & Trackbacks

  • コメント ( 10 )
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  1. なつかしい。自分も子供の頃学校で納豆を作りました
    豆の味が濃くて美味しかったなぁ

    そういえばハリネズミの記事拝見したのですが、ディ〇カバリーチャンネルのある番組で地面に穴掘ってそこに石を敷いてそれを熱してハリネズミを置いて水分保つために植物を上に乗せてその上に熱くなった土を被せて火を通したら引っ張るだけで簡単にごっそり針が抜けてたので似たような火の入れ方なら脂肪のとこもまるまる食べれていいかもです!
    その人もすごく濃厚な味だって言っていたので食べてみたくなりました(笑)
    県内だから捕まえに行こうと思えば行けるんだよなぁ……w

  2. 「桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?」というマンガのKindle版1巻が100%ポイント還元で実質無料になってます。 https://www.amazon.co.jp/dp/B01LWTQA25/

    主人公が自ら蛙料理やサソリ料理などなどを作って食べるという、なんのひねりもない料理漫画ですが、ここはひとつ、エキスパートのざざむしさんの目からの評価も聞いてみたいです。

    「カエルの捌き方が間違ってる」とか、そこは隠し味でコレを入れた方が美味いとか、「美味いのは○○ガエルであって、それじゃない」とか。

  3. とってもすごい

    すごいけど

    いかんせん納豆が苦手・・・

  4. ザザムシ氏の話は2005年頃から何度も閲覧してますが
    彼の知識は誰から得たものなのだろうか
    これからの若者などに継承できる技術的な知恵として
    まとめられたらいいのに、と思う。
    最近小泉武夫氏の漁師の肉は腐らないを読んでますます
    そう感じます。
    継承してこその知識だよ。

  5. 普段、法律とか定義にクソ厳しいスタンスで意見してんだから豆しばのキャラクター勝手に使うのはやめたら?
    使用許可とってんの?

    ダブスタが普段から透けて見えんだよ

    • 確かに。
      でも生態系に関しての法は不可逆的な影響があるからこそ堅く守らなきゃいけないのに対して、キャラクターは「ダメだから消せ」と言われればすぐにでもオフできるものだし、姿勢の矛盾があるとはいえ重さが異次元レベルで違うと思うけど。まぁでも無断使用(なの?)はいけないよね。俺は著作権のこと全く知らんから偉そうなこと言えないし豆しばの権利あーだこーだなんて知ったことじゃないけど、つまらん火種から炎上してこの最高のブログが閉鎖されたら非常に悲しい。

      • 豆しばを使ったのは、バンクシーと同じスタンスなんじゃないんですかね。
        騒いだところで、ご飯のおかずにもならないですよ、多分。

  6. 前世は皇帝ペンギン

     先人達の苦労の末に今の生活があるのだと実感できる話ですね…品種改良の概念が無い時代でも自然と有用な種が選ばれていったのは必然だけど不思議な感じです。育てている種の些細な変化も見逃さないくらい生活が厳しかったのでしょうかね…。淘汰された品種の中に可能性を感じさせるものもあったのではと思うとちょっともったいない?気もします。ツルマメがダイズの原種なら、今のダイズに失われた可能性がツルマメの中に眠っていたりするのでしょうかね。ご先祖様のパワーを借りて人間により奪われた力を取り戻すダイズ…なんというロマン
     ヌスビトハギは味が分かりづらかったとのことですが、ゴマペーストみたいにすれば分かりやすかったかも?柔らかめのお餅にかけてグニョグニョしたら面白そう。ペーストにしたときにどれだけロス出るんだって話ですが…。今日早速きな粉餅食べよ…(感染 この調子で現代版「かてもの」を出版できるところまで突き抜けてくれると勝手に期待しています

  7. ヤブツルアズキはモンクロシャチホコの記事でもチラッと登場してましたね。あのあんことても美味しそうでした。記事楽しみにしてます。

  8. うん、毒無しな記事もまた宜しいですね。

コメントしたければしてもいいのよ?(カエストハイッテナイ)

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