ざざむし。

ニベリニアは食べても無害だから安心してね

見えないものを極端に怖がるのは世界共通な気がしますが、細菌やウィルスの存在までが知識として広がっているだけに日本ではその傾向が顕著なのかもしれません。私も好きなこと以外の知識はサッパリですし、全ての人が全ジャンルに完璧などということはあり得ないけれど、勘違いするとまずい段階で止まっている中途半端な知識というのは風評被害を生むんですよね。


今まで生物由来の風評被害は様々なものが発生してきましたが、中でも寄生虫に関するものは何度も同じことが繰り返されている感じがしてなんとも不思議です。それはやはり気にしていなくてもギリギリ見えてしまう=気付いてしまう大きさというのが理由としては大きいのかもしれません。そして、気持ち悪いという偏見から近づかない=調べず終わる。
「魚の寄生虫といえばアニサキス」
というくらいにアニサキスが有名になりすぎたせいか、寄生虫がいるだけでアニサキスと決めつける、または危険なものと決めつける人も多いようで、以前のネット情報にはニベリニアをアニサキスと間違えて記事にしているものも多くありました。そういうのも事態を悪化させていた要因のひとつではあると思います。いまはみんなの中にいるアニサキス警察が動いてくれるおかげでニベリニアはアニサキスではない事実が少しずつ広がっている気がしますが。

魚に限らず寄生虫と言っても様々で、摂取された段階で「無害(死んで消化される)」「終宿主として寄生が成立する」「成虫になれないが体内を彷徨い悪影響を及ぼす」といった違いがあり、それらは普通に存在するものなので「無害」だとわかっているものを無駄に恐れるのは非常に愚かなことだと思います。(中にはアニサキスのようにそれそのものをアレルゲンとしたアレルギーもありますが、アレルギーは何だって発生する可能性があるので話が違う。)
代表的な寄生虫は東京都福祉保健局の食品衛生の窓に寄生虫の項目があり、最小限の情報量でわかりやすく記載されているので、見たことない異物が出てきた時は参考にすると良いかと思います。

その寄生虫のページでも最下の「人体に影響を与えないが苦情の多い寄生虫」というやつなんですが、ほんと当たり前にみんな普通に気付かず食べている面々が多いです。気付いた時だけ無害でも騒ぐ不思議。
加熱で問題ないのは勿論ですが、生きたままで大丈夫なのかどうかというのは特に刺身などの生食が浸透した日本で重要なところです。
サンマの内臓にいるラジノリンクスやカサゴの消化管内に大量にいるフィロメトラなどがそのまま人体に入ることは普通の食生活をしていればありえないことですが、ニベリニアやテンタクラリア、ディディモゾイドなどが元気なまま摂取されることはありえなくはないです。(目立つから普通は気付くけど)

中でもニベリニアについては丸ごと購入されることが多いイカに多いせいか一般人の目に触れる機会も圧倒的に多いと思われ、しばしば話題になりますね。
それも冷凍販売されているものはニベリニアも死んでいるのでホントどうでもよいのですが、刺身用として売られている指で触れると色素胞がまだ動くような鮮度のものだと、寄生しているニベリニアも元気です。

釣ってくると当然ニベリニアもすべて元気ですので、釣人にはお馴染みかもしれませんね。
普段はこの子達、イカの外套膜の下にいることが多いんですが、結構元気なので宿主の死後にはイカの内部から出歩くこともあります。稀に販売されているパック内を出歩いていることもありますが人の意識関係ないタイミングで出てくるのだから仕方のないことです。


外套膜といっても内側に多く見られますが、たまに外側の皮の下に引きこもってる子もいます。
かわいいですね。


移動の際には四吻目の名の通り、先端に出る4つの突起を伸ばして張り付きながら伸び縮みして進みます。突起の内側にはカエシがあって、これで引っ掛けるように吸い付くようで、元気なものを指に置いてみると結構しっかり吸い付くことができます。柔らかいイカの皮の表面や魚の内臓表面などならばより吸い付き易いのでしょう。
突起が出しっぱなしになった状態で触れると引っかかるので、冷凍されて死んでいても引っかかる場合もあります。引っかかってもそれは死んでいます。安心してください。


一寸の蟲にも五分の魂といいますが、一生懸命生きてる感じしませんか?
無闇に嫌わないであげてください。
散々ニベリニアと呼称していますがニベリン条虫の幼虫(プレロセルコイド)で、ニベリン条虫は「オキアミ類→スルメイカ・硬骨魚類→ネズミザメ」といった生活環をもつのでネズミザメの多い海域ならばもっと多数見られるのかもしれません。逆にネズミザメがいない海域でもかなりニベリニアはいるので、海は繋がっているんだなぁという感慨がそんなところにも湧きます。他のサメでも成虫になれるんだろうか。


採取や調理で取り除く際にもわかるのですが、意外に体に強度があり簡単にちぎれません。あんな小さな吻にあるカエシだけでこの吸着力を生み出すというのは大変興味深いですね。
本体は包丁の刃では簡単に切れるのですが人の歯は押し切るだけで包丁ほどの切断力をもっている人はまずいないでしょう。噛んでもなかなか容易には切れないので、刺身と共に噛んで簡単に粉砕できるとは思えません。
ニベリニアは無害とされているので以前に飲んでみたことがありますが、何も起こりませんでした。


今回、何気なく拾い集めてみたら14杯のスルメイカからニベリニアらしきものが35匹ほど見つかりました。
らしきものというのは、正確に同定した訳でもないから違う種も混ざっているかもしれないからですが、見た感じいずれも四吻目だろうと思いますがこの仲間でイカについていて有害とされるものを聞かないので、おそらく無害であろうと思います。


ただ、ヒトの消化管内に吸着されることもあるという話で、吸着されるならダメじゃんって思う人もいるんじゃないでしょうか。
べつに一時的にくっつくくらい許してやれよと思うのですが、痛いなら話は別ですし、経験してみないとなんともいえないですね。
経験値35倍ならきっとわかるでしょう。


ということで、安全なはずなので全部まとめて飲んでみました。
味わおうと思ったら舌の裏に1匹吸着されましたw
変な反応してるのはそれです。成功です。
特に痛みもなく、すぐにとれて喉へ飲み込まれていきました。が、食道にも僅かに違和感があります。ここにも1匹2匹くっついたと思われるが放置。
しかしこれも1時間もしないで違和感がなくなったので息絶えたのではないでしょうか。アニサキスでよく言われるような痛みは皆無で僅かな異物感があるのみ、魚の小骨が刺さるより全くたいしたことはなかった。
食道でファイト一発やってるニベリニアが脳裏に浮かび、オロナミンCが飲みたくなりました。

結果、元気なまま35匹飲んで一晩経っても何も起きませんでした。
これだけの数を元気なまま飲み込んでも平気なので、彼らはすぐ死んでしまうタイプなんでしょう。無害といわれるのは本当ですね。

ちなみにサケ科魚類にも似たものが付いていたりしますが、一見同じに見えるプレロセルコイドでも日本海裂頭条虫の幼虫である可能性があるので、終宿主になりたくなければ淡水生活を経る天然サケ科魚類の刺身はそれなりの注意が必要です。エキノコックスがいるエリアなら生食自体が問題ですが。

アニサキスでもそうですが、よく噛めば大丈夫というのは迷信だと思っています。アニサキスらしきものもたまに切れ易いものがいるのですが、刺身などで元気なまま摂取されるとすればおそらくシストに入っているものか、誤った扱いで後から混入したものでしょう。そうなると刺身については対処が即効性で効果があるか、食べても安全かが重要です。

第83回日本寄生虫学会大会で「日本周辺海域に生息するサバにおけるアニサキスの感染率とヒトへの簡易な防虫方法の検討 」という報告があったみたいですが、その中にワサビと食塩水による実験があり、水道水20㎖にワサビ1~5g、塩は0~1gを溶かしてアニサキス10匹を24時間の浸漬して結果を見たものがあるらしい。(らしいというのはその大元のソースがいま見られないので)
結果としてはワサビでは100%の防虫効果があり、食塩水では0~60%しか死んでいなかったという。そもそも食塩水も最大5gだったら飽和に近いのに何故上限1gにしたのかが謎なのだけど、1g/20㎖=5%の食塩水でも24時間で40%死ぬなら私の飽和近い濃度で一気に攻める締めサバの作り方なら表面のアニサキスくらいはある程度殺せてるんじゃないかと思ってる。
問題は短時間でどれほど効果があるかであって、普通は刺身にワサビ付けたらすぐ食べるので全く何の役にも立ちそうにない話なのですが、その中にショウガ・醤油・料理酒・ウィスキーでも100%の駆虫効果があった(炭酸水、食用油、米酢、タバスコは効果なし)という話があったそうなので、いわゆる沖漬けや塩辛の安全性には繋がる話だという意味では良い報告だと思うんですね。それがアニサキスだけでなく旋尾線虫や顎口虫などにも有効かどうかはまた別の話ですが、効きそうな気はしてる。


微妙にアニサキスに脱線しましたが、そんな訳でニベリニアに関しては元気なまま飲み込んだところで何も問題はありません。
見えていて怖くもないものを恐れることはありません。

いつもわからないことがあると調べはするのですが検索しても意外にそのまま使えるものばかりでもなく、美味しさと安全性は両方のデータが揃って初めて気持ちよく送り出せるものなので、一般人の一般的な調理にすぐに流用できるようなデータがもっとあったらいいのになぁと思うのでした。

誰かお願いします。(お前がやれ?

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Comments & Trackbacks

  • コメント ( 12 )
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  1. 昨日たらの煮付けを作っていて、なんだか卑猥な形の寄生虫がついているなあ、と思いながら取り除いて食べたのですがニベリニアというのですね。
    豪快に丸呑みにしている映像を見てとても安心致しました。貴重な解説と動画ありがとうございます!

  2. ひっそりとざざむしを読ませて頂いておりました。
    今回のこのニベリニアを見て、あ、こいつ職場で良く見ると思いついついコメントを残したくなりました。
    職場は秋になるとスケソウダラを捌いて生タラコを取り出して漬け込み、塩たらこを製造し出荷してるのですが、こいつ、この白い小さい子がたんまり居ます。元気だと本当に手に吸い付いて引っ張るとちょっと出血したりするんですよね。
    職場の方々もみんなこれは無害だと知りつつ名前は誰ひとり知らなかった訳ですが、長年の謎が解けました。
    害はないけれど苦情の対象、全くその通りです、塩たらこの内部に潜り込んでるのは流石に取れませんし時々苦情も頂きますね…。

  3. つまり宿主が客船で寄生虫は乗客って事ですね!そして食中毒を起こすのがジャック犯……

  4. >>一寸の蟲にも五分の魂といいますが、一生懸命生きてる感じしませんか?無闇に嫌わないであげてください

    BLACK☆KGB「セツナサン…(ポッ♡」

  5. アカヤガラ検索しててサイト見つけました!
    ざざ虫復活嬉しいっ♪
    これからも頑張ってくださいね、フォローさせていただきます(^.^)

  6. ざざむしの旧サイト時代からどの記事も楽しく読ませて頂いています。
    かれこれ早10年、食への偏見ができる前の幼少期からせつなさんの食レポに触れていたおかげで、今では食の好き嫌いはほとんどありません。
    コメントをするのは初めてなので、この機会に一言お礼を言わせてもらいたいです、ありがとうございますm(_ _)m

    さて、少し自分の話。
    数年前、刺身と塩辛を作ろうと思い、スーパーの生スルメイカを2杯購入した際に、発泡トレイ側の外套膜下に30~40匹ほどのニベリニアがワラワラと寄生していたことがありました。目視で軽く確認できるだけでもその量、多分もっと寄生されていると考え、生は諦め(そのままでは食感が悪そうですし、取るのは面倒)、焼いて食べました。

    それ以降も変わらず月1回ほどスルメイカを捌いているのですが、それだけの量に寄生された個体には出会ったことがないので、あの時のスルメイカは何であんなことになってたのだろうと時々思い返しては疑問が浮かびます。

  7. 命という名の冒険

    先月、自作のシメサバでアニサキスにやられたものです。

    捌いた時点で内臓に4、5匹いたのでやめとこうかなと思いつつ、まあ内臓回りの肉は漉き取って山盛りの塩で〆れば大丈夫だろと思ってやってしまったのですが…甘かったです。

    胃カメラの先生から「アニサキスは塩や酢では死なないよ。こないだニュースでやってたでしょ」と叱られ、貴重な土日を失い、1万円強の出費…高い授業料でした。
    以前からサバやイボダイを食べたあと猛烈な吐き気に襲われることがあったのですが、どうやら随分前からアニサキスアレルギーだったようです。

    シメサバ大好きなので心の傷が癒えたらまた作りたいのですが、今度からは虫眼鏡で内臓と腹の中を調査して1匹でも見かけたら即塩焼きに切り替える方針にしようと思います。

    • アニサキスアレルギーが確定だとすると加熱してもダメという話があります。
      アレルギーと一時的な寄生は別に考えないと苦しみは避けられないですよ。

  8. 寄生虫フェチにとって様々な寄生虫達は目を楽しませ心を踊らせ血肉と化してくれる素晴らしい生き物ですよね
    まるごと飲み込みはしませんが観察→食すコンボはやりますやります
    寄生虫博物館で買ったアニサキスのキーホルダーは今でも宝物です

  9. ちんこだこれ

  10. もにこだいすき

    アニサキスに当たったら、飲める人はウィスキーをストレートで飲むと良い、は私も本で読んだ記憶がありますね。
    寄生虫関係で有名な藤田さんの著書だったかな?
    残念ながら当たったことがないので試したことはないのですが。

    • ウォッカやスピリタスでぶち殺すというのは試してみたいと思いつつ、なかなか当たらないので機会がありません。
      能動的に機会を作るしかないんでしょうかね。

コメントしたければしてもいいのよ?(カエストハイッテナイ)

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