ざざむし。

長野のウチダザリガニを食べてみる

ウチダザリガニを初めて食べたのは15年前の2001年、当時は外来生物法もなく阿寒湖の漁協から1200円/kgで生きたまま送ってもらった。
でかいのが38匹も入ってて、どう考えてもオマケしてくれてる感があったが、それより驚いたのは身も甘いがなによりアメリカザリガニと違って何もせず茹でただけでミソが美味いのに驚いた。
想像以上に大きく、想像以上に身が詰まっているのに身離れがよく、想像以上に美味しかった。
阿寒湖産だからというのが大きいのか、とにかく臭さと無縁だったのです。
さすがウシガエルのエサとして移入されたアメリカザリガニと違って、ウチダは食用に輸入されたというだけのことはあると実感したものです。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
それも外来生物法にて特定外来生物に指定されてからは生体移動が不可になりました。
現在は原則、ボイルや冷凍でしか入手することができません。
・・・が、困ったことにこれも本州各地で増えています。
今年は栃木の那須塩原でも大繁殖が確認され駆除されたニュースがあったばかり。
長野では片桐ダム近辺で大繁殖してしまっているニュースもありました。
他にも中部から東北にかけてかなりの場所に侵入しているようです。
他の外来種同様ペットを逃がしたことで定着したのか、もしかしたら法整備前に生体を仕入れてこっそり増やそうとした人がいたのか、今となっては定かではありません。
厄介なのは、より冷水に耐性があり大型化することで、同じニッチでは在来種はもとよりアメリカザリガニですら太刀打ちできないこと。
裏磐梯ではウチダザリガニ釣り大会まで開かれるほど定着していますが、阿寒湖同様に水深のある広大なエリアに侵入してしまうともう手がつけられないので完全な駆除は実質不可能です。
よほど画期的な駆除方法でも開発されない限りは無駄に予算を注ぎ込むばかりで、根絶できなければ中途半端な駆除で空いたニッチに爆発的に増えて振り出しに戻る。
そうなってしまうと、現実的にはこんな感じで利用しながら自然な形で圧をかけ続けていくしかないのではないかと思います。
幸いなことにウチダザリガニは美味しい。

で、今回なんですが、ちょっと用事のついでに道草くって長野は某所を探してみました。
理由は片桐ダムと違って、いるとすれば侵入起源がとてもとても臭い場所だからです。
時は遡り1926年、当時の農林省水産局がウチダザリガニを食用目的で輸入し摩周湖での養殖に成功した経緯は有名だが、実はこの後1都1道1府21県の水産試験場にも配布されているらしい。
そのひとつに長野県も入っておりおおまかに当時の場所が特定できたので、先述の片桐ダムとは100km近く離れていて別水系の場所なのですが近くにいる可能性はあるだろうなと。
天然水域への放流記録は北海道・福井・滋賀・東京だけなのですが、残念ながら隔離した屋内水槽だけで厳重管理するでもなければ水産試験場からの漏洩はザラだと思ってるので、探し方のひとつとしてはこういうのもアリだと思っています。

台風が来ている上に日没まで1時間くらいだし、地図上から予測つけたところを2~3探して終わりそうです。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
いきなりいたw

終了です。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
流れの強い場所ですが、岸際に草が茂っているだけで両岸はウチダ一族の住処になっている模様。
同時にヒゲナガカワトビケラが入ったくらい水質は良く、その後もカジカやスナヤツメがちょいちょい混じる。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
こんなに水質の良い場所に定着しているウチダザリガニが不味い訳なかろう。
水だって沸かせば普通に水道水より美味そうだ。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
いそうでいなくて、1時間ほどでこれだけ。
大型サイズが全く採れず、普通のザリガニサイズまでしかいなかったのは不思議でもあるが、アメリカザリガニはおらず100%ウチダザリガニだった。
完全に置き換わってしまうんだろうね。
もしかしたらこの辺りの子供にとってはザリガニといったらウチダザリガニになってしまっているのかもしれない。

せっかくなので食べたいのですが、外来生物法にて生体移動が禁止されていますので、河川敷で湯を沸かします。
湯が沸くまで暇なので少しガサっていると・・・
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
ぇ・・・
ニジマスでもアレなのにブラウントラウトかよ。
見た目からも明らかに養殖個体だし、放流はしていないだろうから明らかに脱走兵ですよね。
水質は良いのにもう生態系もクソもないわな。

そうこうしてるうちに湯が沸いた。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
大量にウニョウニョしてるこれ、ウチダザリガニに付く寄生虫。
この寄生虫を調べることでどこ起源のウチダザリガニなのかある程度わかるという。
だから実際にはこれを調べてみないと移入起源がどこなのかはわからない。
水試関係なくペットルートからって可能性も十分にありうる。
放流というとそのものズバリの種にしか目がいかない人が多いけど、こういうのを移動させてしまう可能性もある訳ですよ。
そして在来種に新たに寄生してバランスが崩れる可能性だって出てくる。これなんかはまだ目に見えるサイズだけど、ウィルスや菌のレベルになると移動させた本人には全く自覚がないまま破壊が進むのでより性質が悪い。
ウチダザリガニに限らず、生物の移動や放流はとにかく慎重にするべきというのが現在の傾向です。OLYMPUS DIGITAL CAMERA
茹でれば寄生虫なんぞ関係ありません。
まとめて軽く塩茹でにします。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
茹であがり。
香りはさほど立たないが、とても美味しそうです。
寄生虫なんか茹でて湯を流せば勝手にみんなどっかいっちゃいます。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
尾の身は同サイズのアメリカザリガニと比較して少し大きい。
そして甘い。
採りたて茹でたてということもあるだろうが、瑞々しくて明確に甘い。
この甘さはとても良い。

が、背ワタが若干ジャリつくので背ワタはとったほうが良いね。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
ミソも美味い。
カニとエビの中間のような風味。
ただ・・・この向こうにある未消化物を含んだ消化管がいけない。
一瞬、鮎っぽさも感じたが違う。
鮎の内臓のような珪藻っぽさにイグサと土を混ぜたような、いわば綺麗な泥の匂い。
そしてジャリつくんだからいけない。

法律上泥抜きができないことが完全に致命的になった。
那須のニュースが流れた時にフォロワーさんが即日速攻で採ってきてレポしてくれたが、頭が変なニオイだったらしい。
おそらく水質や食物の傾向でこの未消化物の風味が大きく変わるんでしょう。

今回のようなかなり綺麗な場所ならまだしも、多少の汚れを感じる場所の場合は尻尾やハサミだけはずして背ワタも抜いてから調理したほうが確実かもしれません。
そう考えると阿寒湖のは凄いなと思う。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
小さめの個体ばかりだったこともあり、手を汚しながら食べるのが好きではないので持ち帰ることに。
茹でたものをジップロックに入れて水路に浮かべ、冷水で荒熱をとってクーラーへ。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
このチビ達も一緒に茹でてきたのですが、これくらいのサイズなら気にならないかと揚げてみます。OLYMPUS DIGITAL CAMERA
とても良い色と香り。
頭からいってみます。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
あれ・・・ダメだこれ。
こんな小さくてもかなりの量の未消化物が詰まっており、畳と土を混ぜたような香り、そしてジャリ感。
これでは快適に食べられない。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
これだ。
頭をめくるとミソを残して胃袋っぽいところが一緒にもげる。
この状態で食べると背ワタ程度は全く気にならず快適でとても美味しい。
エビではあるのだが香りも旨味もテナガエビなどとは違い、なんとも独特の美味さがある。
未消化物さえ取り除ければ臭味は皆無だ。

これは大きい個体も尾からの背ワタ抜きを行って持ち帰り、揚げるというのも十分にアリな気がする。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
では、いちいち剥きながら食べるのが面倒な中途半端サイズのウチダザリガニ達をなんとかしてみます。
ひとまず、ひたすら剥いて可食部だけにします。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
相変わらずハサミも容易に隅々までスポンと抜ける。
これは阿寒湖産と変わらない。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
胴体の殻の下も身がビッシリなので剥がして集めます。
ミソも美味しいので丁寧に。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
そして未消化物の詰まった胃袋を破壊しないように注意し、これは廃棄。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
軽くオリーブオイルとニンニクで炒め、下味をつけてペンネと合わせてホワイトソースで絡め
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
ミソも入っているからかウニっぽい色になってきましたが、更にここにホワイトソースをかけて埋め、チーズを盛って焼きます。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
ウチダザリガニグラタンになりました。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
うまい。

ここまでやったら何のエビ使っても良さなんかわかんねーだろという心配もあったのですが、ここまでしても明確にウチダザリガニの身が甘い。
近所だったら常食しても良いと思えるレベルだ。
未消化物を取り除くのが面倒だが、アメリケーヌソースを作っても美味しくなるだろう。

結局は雑食性ゆえに、繁殖してしまった場所のメインの餌と水質に影響されるというのは間違いないんでしょうね。
泥抜きができないので調理が限られてきますが、普通はもっと大きな個体も多いので食べる価値は十分にあると思います。
広大な水域はともかく、特に小さな水路などの小水域への侵入当初ならばまだ駆逐できる可能性がある。
もし見つけたら、根絶やしにする勢いで食べてみても良いのではないでしょうか。

その際、くどいようですが生体移動はできません。
茹でる・頭をピックなどで一突きする・尻尾だけもいで持ち帰るなど、なんらかの形で殺してからでないと繁殖水域からの持ち出しは許されず罰則の対象となりますので注意しましょう。
キャンプ先にいた場合はその場で調理してしまうのがいちばん楽ですが、泥抜きができないので丸ごと他の食材と共に安易に煮てしまうと全てがダメになる可能性もあるので、そこも注意したほうがいいでしょう。

今月からイケアのレストランでもウチダザリガニは提供されているらしいし、持ち帰り用の冷凍も買えるとか。
お手軽に試してみたい人は買ってみても良いかもね。
冷凍したのが美味いかどうかは知りませんが。

~~~ 追記 ~~~

ウチダザリガニの冷凍ボイルものがスカスカだったという報告をいくつか頂きました。

私はウチダザリガニの冷凍ボイルを食べたことがないので断言できないでいたのですが、アメリカザリガニは確かにそうなんですよ。
殻に身がついてしまい、プリッと身が剥けるようなことがなく、スカスカで出汁にしかならない。
冷凍処理も方法や時間により結果が変わるかもしれず、一概には言えませんが、もし食べてみてそんな感じだったら、生鮮だと全く違うということを心の片隅に置いておいてもらうと良いかなと思います。
べつにウチダザリガニが悪い訳ではないので。

やっぱりとって食おうZE!

URL :
TRACKBACK URL :

Comments & Trackbacks

  • コメント ( 20 )
  • トラックバック ( 0 )
  1. 初めまして。
    北海道でブラウントラウトやウチダザリガニを採って食べている者です。
    長野は幼少時一時暮らし、そのことが自然や生き物好きへと誘いました。
    噂には聞いていましたが、ウチダに加えてブラウンまで居るんですね・・・。
    ショックです。

    ところでこのウチダザリガニの食材としての考察は素晴らしいです。
    私もワタの処理と運搬禁止の規則が悩みでした。
    味噌を活かして消化器だけ採るというのは目から鱗です。
    是非今年はそれで食べてみたいと思います。

    • ブラウンはさすがに定着はしていないと思います。水試や養魚場の近くではアルアルな脱走兵ではないかと。

      カニでも沿岸性のカニやモクズガニなんかでも同じ部分を潰すとエグ味が強く広がるので調理によっては取り去ってしまうのですが、ウチダの場合はここが想像以上に大きくて絶対に問題になる部位だと思いました。
      実際、現場で胸部を刺し殺して持ち帰った方の話では変な臭味が出てしまい不味かったという話でしたので、頭側にどうにか切れ目など入れて簡単に問題部位だけ引き抜くことで絞められれば最高なんだけどなぁなどと考えています。
      手間かかったら意味がないのでなかなか難しいですね。

  2. アメリカ南部、ディキシーランド、ディープサウスと呼ばれる地域ではアメリカザリガニは高級食材なんだとか…アメリカザリガニはかなり泥臭いと聞きますがやはり泥を吐かせた方がいいんですかね?友達はうまいうまいって片っ端から乱獲していって近所のザリガニが一時期絶滅したと言ってましたが…

    • 尻尾だけ食べるなら泥抜きはそんなに気にしなくてもいいですが、ミソまで楽しんだり全体の出汁を余すところなく使うつもりならば清水で数日飼育したほうが良いです。
      特にミソと消化管内から出る臭味が悪影響を及ぼしますが、綺麗な水で絶食させればただのエビになります。

  3. 阿寒湖産、生体移動物とボイルの冷凍物を食べましたが、明らかにボイルの冷凍物は味が落ちました。
    そういえば、福島の裏磐梯で【Zari-1GrandPrix ウチダザリガニ釣り大会世界選手権】というのをやってました。こういうイベントが増えるといいですね。

    • 甲殻類全般に言えるけど、やっぱり生鮮には勝てないですね。

      イベントはいいんだけど、本質を伝えながら維持していってほしいですね。
      単に消費的に流されていくだけになると同じことを繰り返すことにも繋がりかねないと思うので。

  4. 良いこと考えた。
    罠を三日ぐらい沈めて、その間に泥抜き。
    中は筒がいっぱいあって、共食いしない。
    勝手に作ってくれてもいいぜ。

    • 考えはしたけど、設置型の罠の時点で殆どの場所じゃ許可ないと違法になっちゃうんよね。
      めんどくさいから尻尾だけもいで帰るのがいいんじゃないかな。

  5. おお!?那須の件は僕の事ですね!?
    なんか嬉しい!!

    やはり匂いの原因は未消化物ですよね。
    僕はナイフで突き刺して〆たので、未消化物の匂いが頭の中全体に広がったのだと反省しています。
    もう少し水温が下がったら、また捕獲しに行って報告します。(数が減ってるとは思えないので味的に)

    • そういえばそうでしたね。ナイフで一刺ししてたから胃袋ブシャァってなってそうですね。
      海のカニですらあれを潰すと不味くなるので、ザリガニでは絶対ダメだと思いました。
      そんなの予測しないもんなぁ。
      報告お待ちしてます!

  6. あらかじめ綺麗な水とバケツを用意して他の探索の合間にその場で数時間泥抜きでも気休めにしかならないかなあと素人ながら思ってみたり。
    手間と時間を考えるとやはり消化器官を取り除いたほうが楽そうですね。

  7. 屈斜路湖畔でキャンプする度にあたりめで釣って各々持ってきた香辛料を適当にブチ込んで茹でてます。
    数時間とはいえキャンプ場の水場で養生して背ワタも取り、香辛料で誤魔化してるせいか屈斜路湖産もあまり泥臭さは感じなかったですね。
    背ワタは生きてる内に尾扇をクルッと捻って引っ張るとズルッと取れて気持ちいいですよ!

    • 北海道は行ったことないんで、ウチダがいるようなところならどこでも綺麗そうなイメージあるんですが、そうでもないんですかね。
      背ワタ抜きはわりとエビに共通して使えるので今回も大量にとれるようなら鍋に入らない分は尻尾だけ持ち帰ろうと思っていたんですが杞憂でしたw

  8. 冷凍物は冷凍期間にもよりますが、身離れが非常に悪い気がします。

    水分が、抜けスカスカな事も多いですね。

    • 外食で食べたアメリカザリガニなんかまさにそんな感じで、殻にへばりついてスカスカだったりしましたね。
      売ってるカニでもそうですが、特にボイルしてからの冷凍は水っぽくなるものが多いような印象があります。
      やはり採りたてには敵わないだろうとは思いつつ、食べてもいないのに否定もできないのですなw

  9. 寄生虫のくだりを読んでいると息子が合流してきたので、コレをそのまま教材にして「不用意な放流の危険性」をテーマに議論することにw
    息子の感想・・・
    「外来種だけじゃなく、在来種も、可哀想だからといって逃がしたら、逃がした川の生き物が食べられたりして居なくなる。我が家の水槽の魚も逃がしたらダメ!」
    息子の結論・・・
    「逃がせないなら食べたらいいやん!」
    ・・・いい方に向いてきたやん(笑)

    ざざむし先生ありがとうございます(まじめ)

    • 自分の意思でそちらに向いてくれるには良いかと思います。
      それはそれで、爬虫類や両生類から鳥類、犬猫哺乳類になってくるとまた難しくなるんですが、そこまで先を考えて安易に飼育を始めたりしない人が増えるといいんですけどね。

  10. ちょうどIKEAに妻を連れてって食べさせようとしていたところで
    天然ものを捕獲する場合の事も考えていたのでタイムリー感をもって
    拝見できました。併設レストランで食べられるみたいなので
    美味しかったら冷凍モノ買って帰ろうと思います。

    長野だと片桐ダムかと思ったら違うんですね。
    生息地探索のコナンくんぶりスゴイですw

    • ぶっちゃけ片桐のほうが帰り道に寄れたんですけど、わかりきってて行くのもつまらなくて全く逆方向に走ってみました。
      冷凍ウチダは食べたことないんでわからないですが、冷凍アメザリだと殻に身がついてしまいスカスカな記憶しかなく、出汁にしかならんなーという印象なんですよね。
      ボイル冷凍だった場合、そこが心配です。

コメントしたければしてもいいのよ?

*
*
* (公開されません)

CAPTCHA


よく読まれている記事らしい

Return Top
ツールバーへスキップ