ざざむし。





ナメクジは腹壊すという一部の説を考えながら食べる

みんな知ってるエスカルゴはカタツムリの仲間で、陸生の巻貝の一種になります。
ナメクジはざっくり言えばその陸生貝類の殻が退化したようなもの。だからナメクジの仲間には小さな貝殻の欠片のようなものをもっているものもいます。

それなのに、何故かナメクジはカタツムリよりも嫌われているように感じる。
理由は様々考えられます。
「殻がないことでヌメヌメ感だけが目立ってキモイ。」
「野菜に穴をあける害虫。」
ちょっとわかってる人なら「広東住血線虫の宿主として危険性があるから」・・・とか。
そう、最近また鉄腕ダッシュでアフリカマイマイがネタになったからか、アフリカマイマイは危険だから触っちゃダメと言ってアフリカマイマイだけ避ける人が増えそうな感じ。広東住血線虫はカタツムリの仲間にはつく可能性が高く、ジャンボタニシことスクミリンゴガイにもつくそうだし、カタツムリであれば在来種のカタツムリ全般も中間宿主になりうる訳です。つまりみんな危ないし、歩いた後の野菜などは全て危ないということになる。能動的か不可抗力か問わず「生で摂取すれば」ですが。

そう考えていくと、似たようなものなのにアフリカマイマイやナメクジだけ突出して嫌われる理由がわからないんですよね。
貧乏アパート住まいの学生時代の思い出ですが、階下の友達が叫んでたので何かと思ったら
「おまえ何そこで絶えてんだよ!」
って、勝手に部屋に侵入して空の鍋の中に入って干乾びてたナメクジに対して叫んでた。
うん。それくらいの経験した人なら嫌ってもわかる。

よくよく話していくと、食べるにしてもカタツムリはいいけどナメクジは腹壊すからダメという話も出てくる。
昔、猿岩石もそんなこと言ってたような。違ったかな。
その理由は定かではないんだけど、プラセボは除外するとしてもおそらくこうだろうという理由は考えられるので書いてみてもいいかなと思った次第です。

まず前提として貝は大きく分けると2つあるじゃないですか。
アサリやハマグリなどの二枚貝と、サザエやアワビなどの巻貝。
二枚貝も巻貝も当然何かを食べて育つ訳ですが、プランクトンを濾過して食べる多くの二枚貝は食べるものを選択できないので、有毒プランクトンの発生する地域や季節によっては貝毒を蓄積します。ホタテやカキが有毒化するのはこの為ですね。この場合、中腸線内のものが排出されるまでは安全になりません。
対して巻貝は自由に歩いて食べ物を選択できますが、それだけに専食する餌が有毒な場合はその貝の内臓も有毒となることがあります。ホラガイの仲間がヒトデやオニヒトデを食べるのでフグ毒で有名なTTXを蓄積するような例です。この場合、内臓を取り除いて足と呼んでいる筋肉だけを食べる分には問題がない。
この2例をまず覚えておきましょう。


さて、それではナメクジはどうでしょうか。
歩く形状からして巻貝タイプです。
ところが殻がない。内臓はどこに格納しているかというと、当然ながら体の中な訳です。
ホタテガイのような二枚貝であれば有毒化したら中腸線の入った部分を取り除いて貝柱とヒモだけ食べればいい。多くの巻貝であれば足だけ食べれば中毒リスクは減らせる(毒を攻撃に使うタイプは歯舌や毒針などのある頭の部分も取り除くのが安全)。いずれにしても有毒部位を取り除いてから調理するのが中毒しない条件です。
ところがナメクジ食べて腹壊す例を聞くに、生食は寄生虫の問題があるので論外としても、極限状態だとか度胸試しだとかで内臓を取り除いてないように思います。

ナメクジは様々なものを食べます。
カタツムリが大量にコンクリートの塀を歩いているのはカルシウムとってるから~なんて噂も聞きますが、その真偽はともかく歯舌で食べられるものを削りとっているのでコンクリ成分は体内に入るでしょう。ナメクジも同様に塀に多く出没するので同じでしょうね。
コンクリくらいなら仮に大量に内臓に詰まっていてもジャリジャリするだけかもしれません。
しかしこうなるとどうでしょうか?

猛毒なシャグマアミガサタケ食っちゃってますね。
テングタケやシャグマアミガサタケなど、人が死ねるレベルのキノコもナメクジの前では無力。穴を開けて中にいることもあります。つまり彼らの体内には食べたもの次第で人体に有害なものもが詰まっている可能性がある訳です。ナメクジ駆除剤としてはメタアルデヒドが使われますが、民家の近くであれば他の殺虫剤や駆鼠剤などナメクジに効かない有毒物質を食べている可能性もありうるでしょう。
何食べたかわからないようなものを丸ごと食べれば、そりゃ加熱したって腹壊すこともあるでしょうよ。ドクツルタケ食べてた個体がいれば量によっては簡単に死ねそうな気がします。そんなくだらない死に方は嫌ですね。

だから、個人的な考えでいくとナメクジの食べ方は2択です。
1)安全なエサで飼育してから丸ごと調理
2)内臓を取り除いて筋肉部分だけを調理

1)安全なエサで飼育してから丸ごと調理
これについては、エスカルゴだってブドウの葉を食べさせた専用の種がうまいと言いますよね。
三重のエスカルゴ牧場では大豆由来の専用の餌でブルゴーニュ種を養殖しているようです。
でもナメクジで実際にやってみると、飼ってるうちに愛着がわくのは他の生物と同じです。
また、通気性が悪い状態で飼育を続けると調理してもカビ臭いものが出来上がります。
脱走防止なども考えるとなかなかハードルが高く、その割にそこまで美味いものができる訳でもないのであまりオススメができません。

ついでに言うと繁殖行動はじめると結構グロい光景が見られることもあります。卵が美味しい的な話も聞くのですがなかなか機会がありません。
(残念ながらこの子達はかなり昔の写真で、幾度の移動を経るうちに画像大量破損に巻き込まれて調理写真は残っていません)

体内をある程度安全だとわかっているものに置き換え、または完全に絶食させて加熱さえすれば、有毒種でもない限りはおそらく丸ごといっても大丈夫でしょう。

ナメクジポン酢とか。
ヌメリが強烈でクニップツッちゅるんといった感じで悪くないです。
ただ、丸ごとの場合は大型になるほど苦味を感じるものもあるので、種の違いなのかなんなのか、小型だけに留めておいたほうが良いような気もします。なめぽんという響きも可愛くて良いですね。

2)内臓を取り除いて筋肉部分だけを調理
これは面倒で小型相手にやってられないので、大型がいた時にオススメです。
ヤマナメクジの仲間なんかが大きくていいですね。

こんなくらいの、昔は平地の近所にもいっぱいいたんだけど、最近は山のほうでしか多くは見かけなくなりました。


縮んでこれくらいのマグナム達がいたら食べてみてもいいんじゃないかと思います。


芯まで軽く熱が通る程度にサッと茹でると激しく泡立ち・・・


これぞムチンって感じのヌメリの塊を纏った茹でナメクジができあがります。


切れ目を入れて内臓を取り出します。
想像以上にたっぷり内包されているので驚くかもしれません。
そりゃぁ、これが苦ければ「苦くて不味い」ともなるでしょうし、有毒未消化物もあれば毒物となります。


中身を捨てると随分と軽くなります。
ちなみに周囲に固まったヌメリは綺麗にとるのも大変ですし、本調理でしっかり加熱すれば問題ないので気にせず食べればいいと思います。


中身スッカスカになると凄く残念な気持ちにもなりますが、ある意味もう貝っぽさしかありませんね。


旅先でバジルがなかったので大葉で代用しましたが、やはり貝っぽいものはバターが合いますね。
この時は個体差もあるといけないので2匹をそのままの形状で、2匹を輪切りにして炒めてみたのですが、意外なことに輪切りにしたほうが歯応えが良いことがわかりました。加熱の際に縮む方向と長さ、噛む時の向きが切り方によって変わってくるので、ナメクジのサイズによって切り方に最適解があるように思います。突き詰めたらナメクジマスターになれるでしょう。
そのあたりは「この肉質のこの魚のこの部分だから〇〇で食べるならこの切り方がいい」というような普通の食材の調理と考え方がなんら変わらないことがわかり、やはり単純な食べ方一通りで思い込んではいけないなぁと思い知らされます。

とはいえ、貝としてもさほど美味い部類には入らない。
未だナメクジで腹を下したことはないのですが、いかんせんめちゃくちゃ縮むので安全に食べようとすると機会は少ないし手間もかかり、その割に味は薄いですから食用としては微妙かなということになります。

ナメクジといえばゴキブリのように多くの人には嫌悪の対象かもしれません。
私も正直、好きか嫌いかと言われればその存在は嫌い寄りです。暗闇や沢登りの際に何気なく手を置いた所にナメさんがいてヌルッとしたりなどするとちょっとビビりますし。
でもナメクジの粘液から優れた医療用接着剤が研究されるなど、直接的には邪魔そうな生物でも人類に役に立ってくれる生物多様性の恩恵の例として結果が出てきているので、嫌う前にちょっとはナメクジのことも考えてあげてほしい。
その上でただ殺すならやむなし。

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Comments & Trackbacks

  • コメント ( 12 )
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  1. せつなさんご結婚されていたのですね(/_;)
    せつなさんのような旦那さまだと頼もしくて奥様羨ましいです!!

  2. 子供のころ、ナメクジが食べていたイチゴを奪って食べてみたら
    おいしかったということがありました。今思えば結構怖いことしたなあと思います。
    自分的に、山にいる大きいトラ模様のナメクジはかわいい気がします。
    でもコウガイビルちゃんのほうが好きです。

  3. 爬虫類が嫌いな御仁でも亀は大丈夫な場合が多い!殻(甲羅)を背負うとビジュアル的に嫌悪感が下がるようです。

    旨味が低いなら、エスカルゴみたいにガーリックバターの方が相性が良いかも知れませんね。
    お元気そうで何よりです。

    日本人はトチ餅のように苦くて渋くて食べられなさそうな木実すらも、時間を掛けて美味しく食べられるようにするので地方によっては食べている地域もあるかも・・・・・・検索に引っ掛からないですが(笑)

  4. 実際沸騰してから何分ぐらい茹でてるもんなんでしょうか?
    縮み対策したりしてますか
    中華の如く砂糖塩入れた熱湯で下ゆでしてから炒めたりしているのですか

  5. サムネイルがアロエの切り身に見えました!

  6. 薬指に指輪をしてることを発見!

  7. 久しぶりに記事をアップされて,大変嬉しく存じます。以前にも何度かお便りさせていただきました。

    食べる,という観点から観た時,「美味くないのであまり食べられていないもの」と,「食べたら美味いのに,偏見等が原因で食べられていないもの」の二つがあると思います。前者はよく貴兄が指摘しておられる,「人間にとっての毒は苦い」,というようなものが多く含まれますね。美味くない,あるいは,食べてmお不味いもの。
    ところが,後者には,見た目はもちろん,文化的要因の結果,食べることを忌避されたり否定されるものが多々あります。人口がどんどん増え続け,人間の食べる自然の恵みが減る一方である昨今,私は,そういう偏見を否定していくことが正義のひとつなのではないかと思ったりします。(私自身は何もしてませんが)

    クジラやイルカの漁の問題も,偏見が背景ですね。絶滅させるまで獲ると問題ですが,適宜なら,問題はないでしょうし。海のゴンズイなど,偏見の最たるものでしょう。
    人間のペットの犬も,中国や韓国では食材のひとつだし,戦前の日本でも普通に食材でした(「赤犬は美味いので,戦争中に全部食われてしまった」という話を聞いたことがあります。)。猫も蛇も,広東では普通に食材です。

    その一方,犬猫が,日本国内では今,年間10,000頭以上,殺処分されているそうですが,そんなバカなことするくらいなら,食材かあるいは家畜として食材にするか,あるいは,畜産家畜や養殖魚の餌にしたら良いのにとも思いますね。

    私は基本的には文化相対主義なのですが,それ以前に,無駄な殺戮というよりも,無駄な「殺生」するなら,相対的に全てを捉えて,「毎日,俺に,犬肉を供給してくれないか?」と思ったりします(笑。

    貴兄のスタンスやパースペクティブは,極めて客観的で科学的ですから,天職であることは誰しも否定されないと信じております。
    どうか,このサイトを継続して頂きたく存じます。

  8. ざざむし。見てると、あっコレ食ってみたいとか実物見てみたいとか
    その生物に対する関心というか好感度が必ず上がります。

    ただしナメクジ、テメーはダメだ!

    言われ無き偏見だって分かってる。
    でも、大事に育ててる植物の新芽や蕾を狙って食いやがって。許せんっ!
    お前なんかKGBに食われてりゃ良いんだよ。
    そして、そっちを せつなさんが食べると。 ねっ。

  9. あれ、結婚してたんですね。

  10. ↓スッポン「せやろか」

  11. 虫捕りしてて、うっかり触っちゃうとヌメリが手に残って困ります。
    あのこべりつくヌメリの強さが、嫌われる一つの要因かも?
    カタツムリは殻をつまめばヌメリませんからねー。

    昔、テレビでムツゴロウさんが生でナメクジ飲んでましたね。
    おれたちにできない事を平然とやってのけるッ
    そこにシビレる!
    あこがれるゥ!

  12. 殻がないだけで急に気持ち悪く見えるのはちょっと不憫である

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