ざざむし。





ネンブツダイとその仲間達を見直してみる

初心に戻ってみようシリーズです。

釣りを始めたばかりの人の多くは淡水ならフナ鯉ハヤと呼ばれるものから入るように、海だと堤防でハゼキスイワシアジあたりから入った人も多いでしょう。
そういった釣りをしていると中部以南ではまず誰しも釣ったことあるのではないかと思うのがネンブツダイかその仲間。
タイという名がつくけどタイの仲間ではなく、テンジクダイ科に属する別物で、多くの種がいるが釣り人にはまとめてネンブツとか金魚とか言われて蔑ろにされている。
中には岡山のテンジクダイのように好んで食べられるものもあるが、殆どは下魚扱いなのが現実だ。

しかし、釣りを始めた頃ってネンブツでも釣れれば嬉しかったんだよね。
人って大人になるにつれて大事なことを忘れてしまうんです。
ネンブツダイ自体は決して不味い魚ではないんだけど、どうしてもより美味しい魚・より大きな魚などより華やかなターゲットへ移行するにつれ邪魔者となっていってしまいます。
そこで、初心に戻って今ネンブツを食べるならどう料理するかの一例をやってみますので、初心者の方々の参考になれば幸いです。

タカベ狙いの外道で少し釣れたので持ち帰ってみました。
今回は時間帯の関係もあってかオオスジイシモチにクロホシイシモチが少し混ざる感じでしたが、まぁどれも似たような味なのであまり区別する必要はないです。

ただ、他の魚よりは鮮度低下がマシとはいえ、できるだけ保冷はしっかりして持ち帰ることでレパートリーは増やせます。

鱗と内臓を取り、ちゃちゃっとさばいていきます。
身は綺麗な白身で比較的さばきやすい肉質です。
ただし、から揚げにする場合は鱗も骨も取る必要はありません。

テンジクダイ科の魚にイシモチという名がつくものが多いのは、シログチやニベなどいわゆるイシモチと呼ばれる魚と同様にこの大きな耳石があるからです。
耳石からは年齢を調べたりもできるのですが、食べるに際しては邪魔でしかなく、過熱しても噛むとガリッと不快。それはもう砂が目詰まりした軽石を噛み砕くかのような不快さなので、基本的にネンブツの仲間は頭を落として食べない調理となります。

冬になると当たり肝の個体も多く見られるので、今回はこれも使っていきましょうか。
いかんせん小さいので、普通のレバーっぽい赤味がかった肝臓の場合は小さめで手間の割に食べる価値がイマイチです。
保冷しっかりしてきてニオイが出ておらず、フォワグラやカワハギの肝のようなこういった肝臓の時に試してみてください。

まずは押し寿司。
数が少ないのでタッパーで押したからグズグズな見た目ですが、味は普通に美味しいです。
小さな魚なのですぐに締められるのも楽で良いですね。
マダイやチダイで作るような小鯛の押し寿司ほど旨味は強くありませんが、アリだと思います。

中骨や頭でとった出汁に身と肝を溶いた味噌汁です。
小骨が気にならない方ならば、鱗と頭と内臓を取り去り、骨ごと包丁で粉々に叩いて味噌汁に仕立ててしまうだけでも美味しいです。
加熱するととても柔らかく舌に優しい食感になるので、今回のように切身でも良いです。

ド定番のから揚げです。
今回はやたら小さなものも釣れたので試しに丸ごとも試してみましたが、耳石はなんとかギリギリいける感じです。
内臓を取り出す手間を考えてもやはり頭と共に内臓を落としてしまうのが無難でしょう。
鱗をとらないことで風味と食感がよくなりますし、手間が減ります。
最も初心者向けの調理ですね。

ちなみに味付けは塩胡椒して片栗粉だけです。
市販の唐揚げ粉なんか魚の個性を潰すだけなのです。

身だけでも美味しいですが、僅かな甘味が変わるので皮も残して霜皮でいきましょう。
大きな魚でもそうですがこのような小型魚だと尚更、キッチンペーパーをかぶせて熱湯をかけることで下面まで熱湯がまわることなく皮目だけを湯引きすることができます。

好みの野菜と共にレモンと醤油をかけて頂きます。
こうしたポン酢系の味で食べる調理はよほど素材に個性がない限り、あえて高い魚である必要あるんだろうかと思うこともあります。
まぁ、確かに高級魚達と比べるといくぶん落ちるのは確かなんですが、これなんか高い店で出されたら普通に美味しい美味しい言っちゃう人が結構いるはず。

せっかく冬で鮮度よく持ち帰り易いんだからということで刺身でもいきましょう。
ちなみにこれでオオスジイシモチとクロホシイシモチ各1匹。
身だけでも霜皮でもいずれも上品な歯応えの中に甘味があり、それなりの良さがあります。
しかしポイントはこの肝。
先にも書いた通り「臭味が出てなくて脂肪肝であること」が絶対条件ですが、一瞬湯引きしておいたものに醤油をつけて刺身と共に食べると化けます。見た目の通り、カワハギやアンキモに近い味を上乗せすることができますから不味い訳がない。

うん。
十分すぎるほど満足できました。

ネンブツダイはいままで聞いた中では、高知では煮干にして様々に利用されるし、各地で団子にして汁物や揚物にもされています。
干物で売っていたという目撃例もあります。
よくある小魚やカニが甘辛くまとめられたおつまみの中に結構入っていたのも確認していますが、ああなっちゃうと殆ど何食べても同じ感じの味でしたね。

どうしてもネンブツの仲間って弱いので、釣れてすぐ放しても浮いて死んでしまう確率が高く、ましてや初心者や心無い釣り人の扱いでは「釣られる=死」みたいな魚です。
ピンギス持って帰るくらいならネンブツも持って帰って食べてやれよと思いますし、それくらいのポテンシャルはあります。
ネンブツダイも手間を惜しまなければ楽しむことができる魚であることは間違いないので、いままでより少し大切に扱ってあげてもらえるといいかなぁと思います。

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Comments & Trackbacks

  • コメント ( 16 )
  • トラックバック ( 0 )
  1. はじめまして。初めての船釣りで釣れてしまったときに、船頭さんから捨てろと言われたのを覚えています。食べれる魚だったんですね。勉強になりました。

  2. デュプロカウルスの箸置きが!!!
    かわいい!

  3. おおう…なんということだ…
    うまいうまい(´∀`)~♪とボリボリ頭から噛んでいると突然ガリョッ!!と不快指数MAXにしてくるのは、骨ではなくて耳石というやつだったのですね…

    釣りほぼ未体験の友人を連れ、割と寒い中ボウズという地獄を2回連続で体験させてしまった次の釣行で、今度はボウズじゃないけどお互いネンブツしか釣れずにそれぞれ50尾近く釣って、他のが釣れなくてションボリしている自分の横で、満面の笑みで今日は一杯釣れて超嬉しい!と目をキラキラさせていたのが忘れられません。
    守りたい、この笑顔 というネタフレーズが浮かんできました。ネンブツたん、いつもボウズを救ってくれてありがとう…

    • なんやかんやでわらしべ釣りのエサにもなってくれますし、存在を忘れなければ使える奴ですね。
      耳石はほんと不快ですね。イシモチと違って小さいだけ無視できないこともないんですが。

  4. 前に、骨ごとミンチにしてさつま揚げにしましたが、ヒレがミンチにしても固くて刺さって失敗しました。
    次は生で食べてみたいです

    • 生だと旨味が弱いのでなかなか扱いが難しいところではありますね。
      全身ミンチにする場合、棘条が発達した魚はそこだけ外さないとネックになりがちですね。

  5. ネンブツダイ系の子は、小さいので手間はかかりますが鱗と頭と内蔵取ってヒラキにして、塩振って干物にしたら丸々おやつ&おつまみ感覚で食べれるのでオススメです(´∀`*)

  6. 夜食テロのことはさておき、耳石の知識がまったく自分にありませんでした。
    嫁に話すと「なに!?石!?・・・アタシは石より『こんにちわ虫(タイノエ』のほうが怖い!」とかスカされました・・・
    今度寝てるときに耳に石入れたります。

  7. 以前生き物を殺すのは漠然に「可哀そう」とか考えていたけど釣りを始めて自分が釣って食べる為に殺す魚も今までもそしてもし釣らなかったらこれからも沢山の命を糧にして生きているんだと漸く分かりました。食うために殺すことは自然の摂理で善とか悪を超越しているものなんですね。そして生命の本質は食われる事によって完結するんだと知ったあたり、とても真似はできないけど二瓶哲三さんまじかっけーです(酔払い

    • 死後はどうでもいいと思っているんですが、生物の一員として考えた時に火葬されてどうにかなっちゃうのだけが心残りなんですよね。
      どうせなら何かに食われたい。

  8. 海無し県住みで釣りの知識が殆どない自分はこういうった初心者に優しい記事はありがたいですー
    釣り用語とかちんぷんかんぷんなんで(-_-;)

コメントしたければしてもいいのよ?(カエストハイッテナイ)

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