先日釣った魚に初めて見た生物がついていた。
これ、メダマイカリムシという寄生虫(の一種?)で、ダイバーの皆さんには比較的メジャーらしい。
こんな姿をしていても節足動物門 甲殻亜門でカイアシ類と呼ばれる甲殻類の端くれにいる生物。メダマイカリムシ属には11種以上いるらしいが、どの種だかはっきりしない。詳しく分類している写真も少なくてよくわからない。淡水魚の寄生虫イカリムシはキクロプス目なのに対しメダマイカリムシはシフォノストム目なのでサンマヒジキムシPennella sp.のほうが近く皆さんお馴染みかもしれない。(サンマ体表によく見る穴がサンマヒジキムシが付いていた痕跡なのは有名ですよね)
淡水のイカリムシは見た目が十字を切ったような頭で食いついているので命名されたんだ思う。でもメダマイカリムシは目につく確率が相当高いらしく、実際に見てしまうと最初に確認された見た目が(・`_´・)こんなふうになってたから怒り虫なんじゃないかとも思えたり。知らんけど。
っていうかお前はオシャレか。
オシャレなのか?
そんな訳ないか。しかしこれは初めて見ると異物感が物凄くてギョッとする人も多いかもしれない。
でも、知っていると悪名高いアニサキスのように恐れる必要はあまりないことがわかる。アニサキスなどの線虫の一部には人体に侵入することで悪さをするものがいるが、そのせいで無害なニベリニアまでクレームの対象となったりするのは非常にバカバカしい。
メダマイカリムシやサンマヒジキムシは節足動物門だから言ってみれば昆虫のほうが近いともいえる。有毒無毒は別としても、体内に入って悪さをされるリスクはあまり考える必要がなさそうだ。
眼球内に触手を張っているようにも見えたけど、これはそうじゃなかったことが後でわかる。
全然関係ないけど、後で見たら瞳に空と竿が映っててなかなか良い画。
赤い部分は硬くはないもののかなり張りがあり、スプリング状の部分は引っ張るとビヨーンと伸びる。
初遭遇で3匹ゲットできました。
というか、この日釣れたアカアマダイ2匹に3匹ついてた。
自分の目にこんなのついたまま生活してたら鬱陶しすぎてストレスで死にそうだよ。
ただでさえ眠そうなアマダイの顔が、メダマイカリムシのせいで更にマヌケ面に。
とりあえず、付いていた時にどうしたらいいのか。
これだけで肉質に悪影響が出るとも考えにくいので、普通はサンマヒジキムシみたいに引き抜けば問題ないんじゃないかな?
ちぎれた。
しかもこの真っ赤なの外骨格の色じゃなくて体液の色だったのね。
宿主の体内に頭を突っ込んで体液を吸収しているらしいが、よほどしっかり食い込んでいる模様。
もう一匹にはメスを使ってみるも難しく、最終的には精密ハサミを使った。結構大きく深く切り開かないと抜けてこないので商品にする上ではちぎり捨てるしか手がないだろうと思われる。つまり、寄生されたものが問答無用で捨てられていたのでなければ知らず知らずメダマイカリムシの頭は食べてきてたのかもしれない。
だいぶ切り開いた上でゆっくり引っ張ると、Web上にちらほら転がってる写真のような頭部が抜け出た。
はい。
しかしこれでも食い込んでいる触手?みたいなのが切れたのか、じわじわと体液が流れ出る。
ちなみに皆が疑問に思う後ろの電話コードみたいなスプリングは卵嚢。つまり卵の集合体。想像でしかないけど、産みながら表面積を増やして酸素を取り込み易くしつつ体積を減らした結果こうなったんだろうか。
とりあえず、生で食べるようなことはない寄生虫なのは一目瞭然なんだけど、これだけ目立つ形状をしていて且つ、中身が液体ならば風味によってはオモシロ薬味に使えるかもしれないので生で味見してみよう。
うん。
ダメだね!
なんか血液と海藻を足したような生臭さがある。糸引くし。
胴体部分の皮はこんなに薄いのにポリッポリと物凄い歯応えで、歯応えの凄いフノリを更に強化したような感じ。
卵嚢はチャギチャギと面白い歯応えで、見た目はこんなだけど卵細胞の集合体なんだなって、ちょっとアメフラシの卵を思い出させる不思議食感だけどいかんせん小さすぎて意味がない。
切開して抜けたほうはフライパンで素焼きしてみました。
卵嚢ちぎれた。
加熱したら生臭さや鉄っぽさみたいなものがなくなり、風味は何かの干物を焼いたような感じに変化。
卵嚢は・・・チ゛ャギッ ヂャギッ
生よりも中途半端な食感になり微妙としか言いようがなく、風味がシシャモの卵の皮みたいになった。
現実的にはちぎれようが知ったこっちゃないのでプチッとちぎり捨ててしまうだけで問題ないものだと思う。
ただ、べつに毒がある訳でないのなら目に穴があく可能性もあるのにあえて千切る手間も不要な訳で、アマダイだったらそのまま干物や蒸し物にしても問題ないんじゃないか。
蒸してアツアツ胡麻油かけて清蒸にしてみました。
今回の主役はあくまでもメダマイカリムシですが。
よく熱が通ったようですね。
生の状態だとアマダイの目がかなりしっかりしていて抜くのに苦労したのですが、さすが加熱されると目はトロトロに美味しくなるので簡単に抜けますn・・・
えぇっ・・・
いとも簡単にヌルンと抜けてきた頭がやけに大きい。
目の内部1/3くらいを水晶体の裏側からカバーしてるような大きさ。
アマダイさんは視界ちゃんと見えてるのか?
うわぁ(棒)
もう完全に見た目だけはモンスターじゃん。
これ・・・なんかWebで見られるやつらより激しすぎない?
というか、メダマイカリムシ属11種で名前が気になりすぎてたメドゥーサノミダレガミっていう抜群のネーミングセンスのやつってこんな感じなんじゃないの? 全く写真も図解も見当たらないからわからん。
と思ってたら日本産魚類・鯨類に寄生するヒジキムシ科(新称) Pennellidaeカイアシ類の目録のメドゥーサノミダレガミの解説に「飯島(1918:472)は「あまだいノ眼二寄生ス」るLernaea sp.を図示したが,その形態は明らかに 本属のものであるため,ここに収録する。新標準和名は,本種が頭胸部前端にある樹根状分枝がメドゥー サの乱れ髪(ミダレガミ)のように見えることに因る。」と記されている。今回のはアカアマダイなんだけどメドゥーサノミダレガミなんだろうか。おしえて偉い人。
ポリポリ
だったら嬉しいなぁ。
ポリポリ
味は焼いたものほど特記することもなし。蒸しても歯応えだけはあいかわらず自己主張が凄いね。
気になって、生でちぎれたやつも目玉を解体してみたら、やはり樹根状分岐が残っていたようで同じものが出てきた。これでは引っ張るだけで完全に抜くのは不可能っぽい。
なんにせよ、生食はともかく加熱して食べる上で問題になる寄生虫っていうのはよほど大量寄生するかクドアみたいに肉質を悪化させてしまうものなど一部だけなので、過剰に恐れる必要はないです。今回のメダマイカリムシに寄生されたようなケースだとあからさまな違和感のせいで商品価値としては下がる可能性も考えられますが、安ければ私なら儲けものと考えて買っちゃうでしょうね。
クラカケトラギスについたのもいたけど、どう見ても同種には見えない。
メダマイカリムシの世界も奥が深そうですね・・・どうやってあんな広い海で適した宿主に辿り着くのか。
参考:
日本産魚類・鯨類に寄生するヒジキムシ科(新称) Pennellidaeカイアシ類の目録(1916‒2014年) 長澤和也・上野大輔
いつも楽しく拝見しております。初めてコメントいたします。
このネジネジ部分はパスケースを鞄に結びつけるヒモに似ているな、と思いました。
以来、ヒモは外してケースのみで使っています。
ありがとうございました。
べつに外さなくてもw
宇宙家族カールビンソンにこんなのいたような、いないような?
どんなんだっけ
せつなさん、初めまして。
旧ざざむし時代からの大ファンです。
というか、旧HPが閉鎖されてからは、魚拓を眺めて、あああ、もうこのぶっ飛んだ
行動と文章を読めないのかと、1人涙にむせんだものです。
そんな事を繰り返すこと数年、いつしか、ざざむし、も私の頭から遠ざかって行きました。
で、ひさびさに魚拓を見ようとしたら、ん??
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
マジですかあああああああああああああああああああああああああああ!!!!
素直に嬉しいです。これからも頑張って下さい。
で、まさかこんな寄生虫を生で、、と思ったらまさかの行動、、昔のままだあああ!!!!
ほんと、体にだけは気を付けてください。
まあ致命的な食中毒に掛かっても、死ぬまではタイムラグがあるので、絶対アップして下さいね!
(冗談ですよ!!
嬉しくてついついコメントしてしまいました。
これからも陰ながらずっと応援しています!!
可愛い女子高生じゃなく、むさいオッサンなのは我慢してね!
ありがとうございます。
世の中みんな可愛いJKだと思うことにします。
だめっす。メドゥーサノミダレガミ、ググってもここが出てくる不思議!
ニベリニア(名前は今知った)、家でも長らく有害指定でした。緑青も超有毒とか、結構違うじゃん!って事多いですよね。ドヤ顔で人に言ってたりしてたらほんと怖いわぁ…
しかし中々個性的なご尊顔の生物ですな…。
気付いたら(´^ิ益^ิ`; )こんな顔してました
メドゥーサノミダレガミはほんと情報少ないんですよ。この時代でもこんなのあるんだなって。
地獄鍋もそうだったけど当たり前に耳にするものでも眉唾なものってまだまだありますからね。
旧ざざむし時代から楽しく拝読させて頂いてます。
県西部でアマダイ釣りをしていますが、いまだかつて
ジャラジャラの付いた個体を見たことがありません。
黒部で釣りをしておられるのなら、もしかして、
ダムの排砂の影響があるのかもしれませんね。
県西部なんですけどね。
石川福井あたりでもやっぱり付いてるのが上がってるそうです。
いつも楽しく拝見させていただいております。
1999年の論文写真と比較して遜色ないのに、プチ感動してしまいました。
これからも楽しい記事を心待ちにしております。
http://spo.nwr.noaa.gov/mfr614/mfr6146.pdf
Phrixocephalus cincinnatus (j) from Wilson (1908)
それくらいだとまだ最近の部類でしょうけど、昔の人は見つかるものが知らないものだらけでパラダイスだったんだろうなと思います。
だんだん甘鯛自体をメデューサの乱れ髪見たさで釣りたくなってきた。
どんどん自分の中で甘鯛が可愛くなっていく(笑)
いい位置についてればまだしも、鬱陶しい位置についてるのなんか見たら痒くなりそうです。
まぶたにボディピアスをしている友人を思い出しました。彼の耳たぶは向こう側が見えますw
まぶたは裏まで貫通させないで穴あけるんでしょうかね。眼球に触ると痛そうですが。
わーい、ちぎれたちぎれたーきゃっきゃっきゃwwwって読み進めていったら、うっぎゃああああああああああああ!ってなりますた・・・
ちぎれた瞬間は1秒くらい真顔になりました
鰤に付いているハダムシとかカリウスみたいなものだと思えば怖くないのでありんす。
ハダムシは遭遇したことないんですよね。
数の暴力はやっぱり限度がある気が。
メデューサな寄生虫の素敵な写真に興奮しました!
このサイトが復活して楽しい文章と丁寧な料理に再会出来ると思ってなかったので嬉しいです。
ずっと前も今も更新を心待ちにしてます!
大好きです!!
あー昔のはいきなり消してすみませんでした。
この寄生虫で興奮できる人には楽しめる場所にしていきたいですね。
自分もアマダイ行きますがみたことないです。
寄生されたら見えてなさそうなので、
うまくすれば寄生された個体を狙って釣れそう。
いや、見えない分健康な個体の方が先に釣れるのかな。
この仲間自体は全国にいるっぽいですが、アマダイからの目撃例はいまのところ日本海北陸近辺が多いですね。
やっぱり生活環が出来上がっているんでしょうね。
宿主が無駄死にし易くては意味がないと思うのである程度見えているとは思うんですけどね。外見上は瞳は綺麗なものばかりだし。
イカシタ形の寄生虫じゃないですかー。
近所の模型屋さんで売ってた謎モンスターのメタルフィギュアを思い出しました。
男の子はこういうのって好きですよね。
淡水のイカリムシは鯉とか金魚売ってた時によく見ました。
あとウオジラミ(チョウ)も爪で潰して遊んだり。
チョウは魚から離れて泳いでる時があるんですよね。
そこを掬ってぷちっと。
関係ないけどアマダイ美味そうでモヤモヤします。
この見た目でも自走しないからなんてことないですね。
アマダイは年中釣れるみたいなので飽きない程度に常食したいと思います。
甲殻類とは思えない形状・・・生物の進化ってすごい
ほんと進化論だけじゃ説明できない気がする
こんななりしてコペポーダですからね。生き物って面白い。
アマダイさん達の中では目のアクセサリを付けるのが一種のステータスに……?
落ち込んでいる時にこのサイトを見るとなんだか勇気づけられる様な気がします。
北国の体験も、楽しみにしております。
人間でも顔にアクセジャラジャラ付けてる人いるし、慣れればなんてことないかもしれませんけどね。
目悪くてもコンタクトすら嫌な自分にはちょっとこの寄生は耐えられんのでアマダイに生まれなくてよかったです。
KGB食ってたときの皿だ(笑)
書こうかと思いつつスルーしたのに気付く人がいた
ミダレガミて、食いこんどる頭?の方の形状なんすね~。なるほど~。おじさんてっきりコイツがわんさか寄生したお魚がメデューサみたいだからかな?とか思ってましたw(いやそれじゃむしろレゲエのおっさんか・・・)しかし、これほど眼球の中ではばきかせて居やがるとは・・・普通の怒りくんが可愛く思えますわw
単にメドゥーサイカリムシでもよかったろうに、メドゥーサノミダレガミって付けたセンスが好き。
イカリムシは飼ってたソウギョの鼻に発生したことあり懐かしく。
私服警官のインカムに見えました。
耳でなく目ですが。
なんかかっこいい。
そして情報の質が高杉。
付く位置によってはインカムにも見えますね。
魚の種類(メダマイカリムシの種類?)によっては背中についたりもするみたいです。
アマダイについてるのよく見かけますが、寄って観察までしたことなくて寄生生物だとは知りませんでした。オデキみたいなもんだと思ってた……
卵嚢は産卵期だけでしょうから、赤い部分だけなら知らなきゃナンダコレ?ってなるかもしれませんね。