ざざむし。

シャグマアミガサタケを毒抜きして食べてみたけど

フィンランドで有名な食品3強といえば、個人的にはサルミアッキハパンシラッカシャグマアミガサタケです。
サルミアッキ世界最マズと言われるお菓子、ハパンラッカは世界最強悪臭シュールストレミングのフィンランド版、シャグマアミガサタケは猛毒ロケット燃料キノコです。
私の中でフィンランドは物凄く偏っていますw

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シャグマアミガサタケの毒の主成分はギロミトリン(ジロミトリン)Gyromitrin
wiki先生によれば、採取したものをそのまま食べると食後7-10時間を経て、吐き気・嘔吐・激しい下痢・腹痛・痙攣などを起こし重症の場合には肝障害とその結果としての黄疸・発熱・めまい・血圧降下などが現れるとともに、脳浮腫とそれに伴う意識障害ないし昏睡、あるいは腸・腹膜・胸膜・腎臓・胃・十二指腸などの出血をきたし、最悪の場合には2-4日で死に至るらしい。
まぁ怖い!

ギロミトリン(C4H8N2O)は煮沸することで加水分解しモノメチルヒドラジンとなる。
モノメチルヒドラジンCH6N2)は水溶性で沸点が87.5℃と揮発性も高い。
モノメチルヒドラジンは1-メチルヒドラジンなので単にメチルヒドラジンともいうが、厚生労働省の安全データシートを見ると、食べ物にあるまじき危険性・有害性がこれでもかと並んでいて楽しいので、上から下まで是非見てみてほしい。
皮膚に接触するだけで生命の危険など非常に物騒極まりないだけあって、使用上の制限が農薬・医薬原料、ミサイル推進薬となっている物質がメチルヒドラジンだ。

シャグマアミガサタケの学名Gyromitra esculentaは直訳すると「ギロミトリン持ってるけど食べれる奴」ってことになるんだろうか。
「フグ毒持ってるけど食べれるよ」ってのとレベルは変わらない。
「メンヘラだけど美少女」というより地雷回避方法が確立してるだけ全然マシですね。

フィンランド食品安全局(Evira)の示す毒抜きの方法は、「キノコを大量の水(キノコ1 に対し水3 の割合)で5分以上煮沸してから茹で汁を捨て、大量の水で充分に煮汁を洗い落としてから、もう一度5分以上茹でる」というもの。
案外簡単そうである。
しかし水3って、重量だろうか。
アミガサタケに近く空洞があり体積だと同量くらいになるので、見た目は大量の水って感じがしない。

とりあえず、煮沸することで加水分解するようなので煮沸しよう。
先述の厚生労働省の安全データにはこうあるが。
_人人人人人人人人人人人人_
> 環境への放出を避けること <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
お、おぅ。

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配慮ったってどうしようもないので、普通の人は外出しない丑三つ時に外で湯を沸かし投入します。
この時間からなら作業中に近所を通るのは新聞配達人くらいでしょう。
キノコが多すぎて混ぜてやらないと沈んでくれませんね。
着々とメチルヒドラジンが出ていそうでちょっと怖い。

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泡が立ち、写真には写らないがもくもくと湯気が出ている。
この中には相当なメチルヒドラジンが含まれているのだろう。
なんせ77個分だからね。
しかし引火性物質だけど引火しない程度なのでそこまで高濃度ではないのではないか。
いやしかし、余裕で中毒死できるくらいの濃度はあるのかな。

せっかくなので香りも味わっておく。
なんだろう、キノコ臭はキノコ臭なのだが、嗅ぎ覚えのある臭気。
なんというか、藁を煮出しているような香り。
樹皮や草の皮を煮詰めている時の臭いのほうが近いかもしれない。
そこに若干、干して太陽の恩恵を受けたキノコ臭を足したような感じだ。

あんまり嗅ぐと死ぬかもしれないのでほどほどにしておく。
5分以上茹でるということだが、投入量が多くて水温が下がり最沸騰のタイミングがよくわからない。
とりあえず10分以上放置。

ボイルしたポイズンウォーラーをスルーアウェーィする訳ですが、気持ち的には外の側溝に流したい。
しかし水棲生物に対しても毒性が強いようなので、下水道に流れるようせめてもと室内で流す。
メチルヒドラジン自体ならば一般家庭の下水に流すなどもってのほかだろうが、ここまで希釈された含有成分程度なら問題なかろう。(と思いたい)
シンクに流すと部屋がキノコ枯葉臭の蒸気で満たされる。
換気はしてるけど絶対吸うよこれ。

茹でたキノコは水に晒す。

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眠かったので続きは朝から。
握れば砕けてしまうほど脆かったシャグマアミガサタケだけど、普通のキノコ同様、加熱で弾力が出て壊れにくくなった。

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2回目の煮沸。

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まだ若干、泡が出るなぁ。

これさ、普段からメシマズを装って
「あなたぁ~♪ 買い忘れたものあるから鍋見ておいてね~♪」
なんて言って計画殺人するのがドラマやコナンに出てきてもおかしくなさそうだけど、まだ無いのかな。

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煮汁もまだ赤っぽく濁る。
まぁ、朝までに揮発すると思って3分くらいしか水に晒してないしな。
毒が抜けるのはいいけど、旨味も流出しきってしまわなければいいのだが。

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しかし隣が空き部屋でよかったよ。
人が住んでたら隣の家の前にカセットコンロを放置するなんてテロでしかないからね。

同様に茹であげたものを湯切り、水洗いして絞ったが見た目は1回目の煮沸後と変わらない。

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絞った後、多すぎるのでとりあえず食べる分を除き大半は干した。

さて、これである程度は確実にメチルヒドラジンは排除できたはず。
ただ、「水溶性=全て水に溶出する」ということではない。
ある程度は絶対に残留していると思う。
採って食べてみたいと思う方は、採りに行く前に厚生労働省の安全データを再び見てみよう。
特に「11.有害性情報」を見てもらえればいいと思う。
毒抜き前のシャグマアミガサタケ100g中にギロミトリンは120-160mg程度含まれているらしいので、普通は数個~数十個を処理することを考え単純に量で掛け、毒抜き後にメチルヒドラジンが1%でも残っていたらどうかと考えてみよう。

一食で食べる分量を考えると、マウスのLD50値が32mg/kgなので、まぁよほど失敗してなければいきなり死ぬことはないはず。
1度食べるくらいなら問題にならないと思いますが、発癌性・胎児奇形に繋がる生殖毒性の示唆は気になるところなので、怖いなら恐怖を圧してまで食べるものではないでしょう。
常食してきた文化圏では人体もそれに対応して進化している例はいくらでもあるので、フィンランドの食文化がおかしいとは思いませんけどね。
藻類の細胞壁を分解できる酵素を持っている日本人だけが海苔やワカメを消化できるように、フィンランドの人は多少のギロミトリンには対応して進化しているのかもしれません。
わからんけど。
バラムツのワックスに慣れて問題なくなってしまう人もいるし、ありえなくはない。

ということで、おそらく残留していても死ぬほどではないはずなので食べてみる。
まずはそのまま味見。
お?
あんなに煮て流したのに、そのままでもしっかり味がある。

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基準の味見にサラダ油とバターで炒めたものも比べてみる。
・・・・・うん。
確かに、あれほど茹でこぼし、水に晒して絞ったのに旨味はある。
でも想像したほど強くないなぁ。
嫌いな人は少なそうな、クセが全くない旨味。
食感も旨味も基準は熱湯に溶かず落とした卵の白身の塊を2倍くらい強くしたような感じで、そこにキノコの香りを上乗せしたような感じだ。
アミガサタケに近い仲間にされていた時代もあったけど、これは味でも全く違うね。
とにかく卵の白身っぽい蛋白感が強く印象に残る。
他のキノコではあまり記憶にない感じ。

これなら肉料理に合うといわれるのもわかるし、オムレツにしても喧嘩はしないだろう。

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香りが弱いので2つ作ってカラムシの新芽ソースとケチャップで食べ比べてみた。
どっちも普通に美味かった。
ケチャップだといろいろ負けちゃうんじゃないかと思ってのことだったがさすがに旨味は強く、ケチャップで食べてもキノコの強い味が後を引く。
何のキノコかといきなり聞かれたら未経験な私には答えようがなかっただろうね。

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中にはタマネギと共にバターで炒め、塩胡椒しただけの刻んだシャグマアミガサタケを巻いてみた。
白身っぽい旨味からどこか肉っぽい旨味も生まれ、油と合うんだろうなと感じる。
ただやはり香りは弱く、藤の花一つと共に咀嚼するだけでキノコの香りは完全に打ち消される。
旨味重視で戦うべきキノコのようだ。
(ちなみにフジはマメ科なので生では毒性があるはずです。マメ科は主に豆の毒性が高くなるため加熱し無毒化して食用にされますので、花であっても生で多く摂取するのは控えたほうが無難でしょう。耐性には個人差があるものです。)

確かに旨い。
でもなんだろうなこの感じ。
ちょっと高すぎた期待に肩透かしくらった感は否めない。
このために家族や近所からクレームくらうくらいなら、べつに食べなくてもいいんじゃね?
というのが正直な感想だ。

ここまでなんやかんやで8個食べて1日経過したが全く問題ない。

あとは干したものが水で戻してどんな感じに化けるかかな。
シャグマアミガサタケ12白身っぽいので和風出汁にも合うだろうと、試しに味玉味に煮含めてみた。
右が茹でただけのもの、左が半渇きのもの。

明らかに半渇きのほうがキノコ臭が戻ってきている。
が、若干の差こそあれどよく出汁を吸っており歯触りは似たような感じで・・・生のどんこ椎茸の傘を煮たような歯触りになってきたかも。
当然、椎茸臭がないので椎茸が香りのせいで食べられない人にはいいかもしれない。
椎茸臭がないので椎茸好きには物足りないだろうが、クセがなく味や食感に違和感がないので煮物や精進料理に混ざっていても何も気付かず食べてしまいそうな味だ。
高野豆腐なんかと煮たら美味しそう。
香りが弱いので炊き込みご飯などは旨味担当として、香りのよいものと併せると相乗効果で良いのではないかな。

いずれにせよ見た目が美しくないのは欠点なので、人に提供する料理ではどうしても刻んで調理する料理に傾いてしまうんだろうなという印象。
毒抜きも味も料理人次第っていうキノコですね。
使いこなしてキノコソースなんか作ったら絶対に美味いでしょう。
微妙にハードル高いね。

とりあえず、ここまで14個食べたけど全く問題ないので、急性毒性は回避したでしょー。
あとは気が向いたら乾燥シャグマでいろいろやってみますかね。
なんかアレだな・・・うまいんだけど、手間とか危険回避とか考えたら正直、椎茸詰め放題のほうがいいかな。
住宅密集した市街に住んでいる人にはちょっと難しいかもしれないけど、田舎暮らしで近所で採れて外で茹でるも自由気ままにできるならアリかなという感じでした。
怖いイメージはあったけど、やっぱりメンヘラよりは全z

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Comments & Trackbacks

  • コメント ( 10 )
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  1. Falloutって核戦争後のレトロフューチャーなアメリカ(1950年代の人達が想像したような感じです)で生き残るってゲームがあるんですけどこのキノコに似たキノコからメンタスと言う薬物(飲むと頭が良くなる モデルはメントスとデューン/砂の惑星に出てくる人間電算機メンタート)が生成できるらしいんですけどね…このガスが出て人が死ぬ確率があるって言うの見る限りどうもそういう成分は抽出されなさそうですね…もしかして放射能の影響でそうなったのか?…

    • もしかしたら何かあるかもしれないけど、とりあえずメチルヒドラジンに耐えられるように鍛えてからがんばれよって感じですかね。

  2. 採っては来たものの親には言えず、夜中シャグマを持って相当悩みました。中坊が夜中コッソリタバコを吸うような、または夜這いを招くようなドキドキ感が、、、。そしてまだ冷蔵庫。まだまだ色んな料理出来そうですね。

    • 乾いたらプルーンみたいな物体になってしまいました。
      黙って茹でてて誰かが近付いて事故っても困りますしねぇ。
      気をつけて。

  3. メンヘラは大好物☆
    そう思っていた時期が私にもありました。
    今も嫌いではないけど、深く付き合うと怖い(笑)。

    美味そうだけど、手間とリスクが大きいですね~。
    食べてはみたいけど自分ではとても出来ません(^^;)。
    あと全然関係ないのですが、ものべのというエロゲに出てくる
    『赤シャグマのすみ』という妖怪が脳裏に浮かびます。
    いえ、なんでもないです。

    • メンヘラは食物にあらず。
      手間は案外たいしたことないのですが、リスクとかいろいろどうなんだろという感じですかね。

      赤シャグマのすみは知りませんでしたが、私的には「サワキちゃん!」という声が聞こえてきそうです。

      • >メンヘラは食物にあらず。
        ぐへぇ。

        サワキちゃん、なんの事かと思ったらクランゲですか(笑)。
        次回予告の時に、クランゲが「おい山岡~!?」と
        言っていた事があって、驚愕したのを思い出しましたよ(笑)。

  4. 毒抜きの方法が確立されていて、他に似たような姿のキノコが無いのなら、下手に怪しいキノコ食べるよりかは安全な気も…
    周囲への影響は別ですが。

    それはそうと、オムレツ上手ですね。

    • 秋だったら他に美味しいキノコがいくらでもあるから意味ないけど、この時期だから余計に食材としてはアリとも言えますね。
      あまりに華がない見た目だったので物理的に花の力を借りましたw

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