ざざむし。





キアゲハは意外に平凡な味だった

先日、久々にキアゲハの幼虫を見かけた。
まだ小さいが、目の前のセリ1畳ほどだけでも8匹付いていた。

キアゲハはセリ科の植物に付くので、セリ・ニンジン・パセリなどに付いているのを見かける。

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アゲハの幼虫といえば臭いツノ。肉角または臭角というのだけれども。
キアゲハもご多分に漏れず、強い臭気を持つ肉角を出して外敵を威嚇する。
不思議なことにこの肉角、ナミアゲハとキアゲハでは食べてる食草が全く違うのに似たような臭いがする。

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成長ステージの異なる2匹を持ち帰ることにした。

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持ち帰ったセリをもぐもぐ食べて育つわ育つわ。
見る度に大きくなっている。

もぐもぐしている姿を眺めていると可愛くて時間を忘れるから困る。

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これくらいあれば十分かなと持ち帰ったセリが僅か3日にして危険な雰囲気に。
ここで2日近く家を空けるのだが・・・嫌な予感がする。

そして外出・・・

帰宅。

1匹もおらーん ヽ(´д`)ノ
カプメンに植えたセリは丸坊主。
どこ行った?
1匹はキッチンの脇にあった発泡スチロール上を歩く音を察知して捕獲。
もう1匹は天井にいた。

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こんな勢いで食うんじゃ、そりゃ害虫駆除もされるよね。
明日セリ採ってきてやらないとなぁ・・・

と思っていたら、1匹は蛹になってしまった。

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指先くらいだったのに立派になって・・・

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蛹になって半日。
数日待てば成虫が見られるだろう。

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だが空は飛ばせない。
花咲かせる前に刈り取られるキャベツ達もこんな気持ちなんだろうな。

余談だが、家の目の前の虫なら観察して逃がすのも構わないと思う。
しかし旅先で捕獲したものを持ち帰り、観察して逃がすようなことも夏休みの子供なんかはやりがちだ。
外来種でなくとも本来いなかった場所に生物を移動させることはするべきではないし、幼虫や蛹の場合は寄生バチなどが体内に侵入している場合もある。
意図していなくても身辺の自然を破壊する片翼になる可能性があるので、生き物を扱うということには責任が生じるのだということを心の片隅に置いてお子さん達と付き合っていただきたい。

正しく飼う、放つ、標本にするなどと同列に、食べるのも責任の取り方のひとつだと思う。

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沸騰した湯の中で1分弱。
投入した瞬間に肉角を出し、例の臭気が充満したがそれも30秒程で消えた。
この臭気、熱で消えるんだね。

ナミアゲハの味が強烈なミカンやサンショウの味だというのは以前から聞いてはいたけど、近所にある柑橘やサンショウにはどこもナミアゲハが付かなくて食べたことがなかった。
セリが好きな自分としては、キアゲハは濃縮セリみたいな希望的観測があり気になっていたのです。

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うむ・・・
サナギは普通にフレッシュサナギ味。
クリーミーで強いナッツ系の香りと旨味がありつつ、極僅かにセリのような香りがあるが殆どわからない。
目を瞑って食べさせられたら何のサナギかよくわからないが、普通に美味しいサナギだ。
まだ蛹化から1日経過していないので皮が薄いのも良い点だろう。
おそらく数日経過していたら僅かなセリっぽい風味もなくなっていただろう。

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サナギは予想の範疇だが、問題は幼虫のほうだ。
特にこの肉角。

まずは肉角だけ咀嚼してみる。
・・・

殆ど味ないな。
威嚇に使うのも一瞬で効果がないといけないから、相当な揮発性なんだろうか。
だから煮沸後すぐにニオイが消えたのか?

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頭から食べ進むとすぐに体内が緑のものに占められていることに気付く。
これ、未消化のセリです。
悪く考えればウンコの素なのですが、食べているものが新鮮なセリのみですし、人間が持たない酵素で分解して栄養を吸収しているはずなのでむしろこのまま食べるほうがセリの栄養成分の消化吸収も良いと考える。

ただ、味がなぁ。
もっとガツン!とセリの風味がくるかと思ったんだけど、セリはサンショウやミカンの葉ほど強いインパクトがないからか明らかに風味が弱い。
セリそのままの場合はシャキシャキ感と風味の良さがあって良いのだが、キアゲハの中身のセリは細かく噛み砕かれているので流動食みたいなものだ。
非常に薄い肉にはそれなりの甘さがあるが、いかんせん肉が少なすぎる。
皮が薄く毛もなく食べ易いのは良いが、あまりにも平凡だ。
食草がパセリだったらもうちょっと強い風味だったかもしれない。

これなら発見次第採集して食べてしまって、同時にセリはセリで収穫して楽しんでしまうほうが賢いだろう。

せっかくなので隅々までチェックします。

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養育中にカプメンの器を更にボウルに入れ、外に落ちた糞だけ集めてありました。

乾燥し、軽く炒って煎じてみます。
有名なところだとカイコの糞は「蚕沙」と呼ばれる漢方であり、煎じてお茶にしたり、お菓子の抹茶色素の原料とされています(天然色素となってる抹茶色の色素はだいたいこれらしい)が、食草によっては他の虫でも糞が良い味を出すものがあります。
今回のキアゲハの場合はセリを食べているのでセリの長所が生きたお茶になれば十分なのですが。

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湯を注ぐとすぐに良い色が!
ほうじ茶っぽい香りも立ち上がってきた。
これは期待できるか?

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僅か1分で紅茶のような良い色が出た。

どれ・・・

・・・。
やっぱりベースはほうじ茶だ。
しかし口に入れた瞬間と、喉越し後に鼻腔に抜ける薬臭さが目立つ。
セリっぽさはというと、後味に青っぽさが引くだけで私には明確にセリとは言い当てられない。

蚕沙よりは明らかに自己主張の強い茶になったが、かなり人を選びそうなクセがあるので、総合的には蚕沙茶に負けてると思う。
香りの秀でたモンクロシャチホコ糞茶の座はそう簡単には動かなそうだ。

結局のところ、キアゲハは全てにおいて微妙だという結論に。
他と肩を並べて戦えるのはサナギだけかな。
沢山採れる虫ではないが、特徴ある芳香が生きるならばアクセントとして使える食材になるかと思ったのだが、ちょっと残念。

 

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Comments & Trackbacks

  • コメント ( 10 )
  • トラックバック ( 0 )
  1. 私が幼少期に飼っていたキアゲハの角が見たくて検索してここに辿り着きました。
    てっきり成虫の模様が意外と地味だったお話しだと思い読み進めたのですが、ま、ま、まさかの虫食べる人だったんですね!
    大変勉強になりました!
    今では都会に住んでもう幼虫を見かける事もありませんから、うっかり生態系を壊さないように次世代に伝えます。ありがとうございました!

  2. 屑野郎!!

  3. 始めまして。旧ざざむしの時から、こっそりファンでした。最近になって、ざざむしで検索したら、新しくなっていて、すごく嬉しいです。昔と同じクオリティで文章も面白いです。あんまり嬉しかったので、ついコメントしてしまいました。今、一気読みさせてもらってます。これからも楽しみにしています。

  4. 発泡スチロール上を歩く音を察知!!羨ましき”デビルイヤー”・・・

    我が家はムカデ多発につき”プチデビルイヤー”くらいにようやくレベルアップしたところっす。

    • ムカデはどうにも普通に使って美味しいカテゴリにはもっていけないし、噛まれると叩きつけるような痛みだし、あんまり多発されたくはないですね。
      巨大なら話は別ですけど。

      視力が下がってるのでいろんな機能が地獄耳になりがちです。

  5. こいつらは芋虫の中でもダントツの可愛さですよね。
    ツノも模様もおしゃれで可愛いです。
    おいしかったら完璧でしたね。

    • キアゲハボーダーのTシャツとかありそうで見たことないなぁ。
      ワンポイントで済まないから本気で作らないとダメだからか。
      あったらちょっと売れそう

  6. しなびた角が出ている様にグッときました(笑)。

    ナミアゲハの幼虫は探せば結構見つかると思いますよ。
    子供の頃、よく捕まえて観察してました(^^)。
    幼虫見てるのも楽しかったし、蛹化や羽化も面白かったなぁ。

    • もう答え聞いてるものに対して労力割くだけの価値がなかっただけのことですよ。
      その気になれば実家の庭のキンカンで毎年回収できますし。
      越してきた頃は家の周囲の木に付いてるのも飛んでるのもよく見たけど最近はいなくなりました。

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