ざざむし。





カンゾウタケは肉っぽいと思って食べてはいけない

食べられるキノコの中で異彩を放っているものがいくつもある。
シャグマアミガサタケベニテングタケのように有毒でニッチなものから、一見キノコに見えないトリュフのように知名度抜群ながら採れる人は少ないようなものまで様々。
中華で有名なキヌガサタケだって知らない人がグレバの臭さを嗅いだら食べようと思わないだろうし、アミガサタケだって知らない人から見ればただの気持ち悪いキノコだろう。

そんな中で、誰しも初めて図鑑で目にした時に
エッ!?
ってなるのがカンゾウタケだと思う。

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とにかく目立つショッキングピンク。
形は普通で目を引くのは色だけかもしれないが生でも食べられるという記述に衝撃を受ける。
アメリカでは貧者のビ-フステーキとも呼ばれているらしい。
知らなかったら食べないでしょこれ。

子供の頃から図鑑で知ってはいたけど、キノコマニアでもない私はなかなか出会う機会がなかった。
ちょうどツイッターでカンゾウタケが生えていたという報告を目にするようになり、今時期なのかと探しに行ってみた。
スダジイの老木に生えるというが、老木がある所がある程度絞れれば早いのかもしれない。

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あった!
小雨の中、遠目にも巨木とわかるものを目当てに歩いていくとあからさまに違和感のあるピンクの腰掛が次々と見つかった。
中には倒木に生えていたものもあった。
共通してエクスデスの顔が付いていそうな老木ばかりで、若い木には全く生えていなかった。

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なんというフレッシュなカンゾウタケ!
普通なら即、美味しそう!となるのだが、あまりに毒々しい。
15個程度見つかったので、いくつか持ち帰って食べてみることにする。

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断面は本当に肉っぽいね!
これは肉の例えが多いのも頷ける。

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切り方にもよるが、少し斜めに切れば大抵は霜降り肉のように見える。
採取して時間が経過すると色がくすんでしまうのが勿体ないが、そんな色も肉っぽい。

せっかく生で食べられるというので味見してみよう。
\\サクッ//
Σ(・w・)!?

想像してた歯触りとチガウwww
さつま揚げのように張りがあるでもなし、白ハンペンのようにフワリとするでもない。
歯を押し返すような弾力は全くないが、ボソボソでもサクサクでも言葉足らずになる。
これはなんと表現したらいいんだろう。
刃牙のようなオリジナリティーある効果音でないと表現できそうにない。

そして咀嚼してすぐに口に広がる酢。
ジューシーでもないのに軽いキノコ臭を覆うその味は紛れもない酢そのものだ。
ナンデ!? 酢!? カンゾウタケナンデ!?
これは頭が混乱する。
見た目から想像できる歯触りと味のベクトルがてんでバラッバラだw
これは確かに苦手な人は苦手だろうなぁ。

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サッと一瞬湯引きして冷水で冷やしてみたが酸味は変わらない。
極端に柔らかくなり、少しでも加熱しすぎれば芯までクタクタのキノコになってしまう。
キノコにしては珍しく生食で中毒しない訳だから、やっぱりこのクセと言っても良い酸味とどう向き合うかが肝になるんじゃないだろうか。

とはいえ、もう慣れた。
もともと酢が好きなほうなのもあり、こういうもんだと納得できたので大丈夫。
ただ、純粋に美味しいかどうかだけで判断していこう。

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個人的には生でも全然平気だったのでサラダでも何度か食べてみた。
カンゾウタケの酸味が苦手という人はこれくらい薄切りにしてしまえば違和感なく食べられると思う。
でも存在感なくなりすぎてつまらないので私は5mm~1cm程度の厚さがよかった。
このへんは好みで使い分ければよいと思う。

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最も有名なステーキは一体どんなソースを合わせたらよいのかサッパリ見当がつかなかったので、とりあえず塩胡椒のみでソテー。
縮むので最低1cm以上の厚さに切らないと意味がない。生でも食べられるのだからぐっと厚めに切って、両面をサッと加熱するくらいでいい。

見た目が肉っぽいのに明らかに酸っぱい。
こりゃ知らずに出されたら体が拒絶反応する人もいるだろう。
レモンや梅干なら最初から酸っぱいとわかっているので脳も理解するんだろうが、カンゾウタケは見た目とギャップがありすぎて腐っている酸味だと脳が誤認してもおかしくなさそうに思う。
しかも歯触りは厚く切っても肉感はなく、明らかにキノコで柔らかくもジャキジャキ感がある。

これはアレだ。
例えば、たまに「カツ丼なんかカツじゃねぇ!」とかいう人がるが、あれと同じ。
サクサクなカツだと思うからいけないのです。
カツ丼は出汁を吸って口当たりをよくする為に衣を利用している料理であって、余計な情報をカットしてカツ丼という完成形で評価をすればいいだけのこと。

カンゾウタケは紛れもなく肉じゃない。
整理してみると
肉質は生であれば歯切れ抵抗が弱くもシャープな白ハンペンという感じ。
軽く加熱するだけで極端に柔らかくなるが厚さを残せばジャキジャキ感は心地よい。
風味は紛れもなくキノコだが、芳香といったものではなく平凡なキノコ臭。
自己主張の強い完全な酢の味がある。

以上を考慮に入れて美味しい調理法はないものか。
と言っても、私はそんなに調理スキルもないし、面倒なのは御免である。
茸本さんがカレーにしたらハヤシライスに化けるとか言ってたのでカレーは安牌だから同じことしても仕方がない。
カレーがハヤシライスっぽくなるなら、余計な香辛料がないシチューにしたらもっと近くならないだろうかね。

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なったwww
手抜きでビーフシチューの粉末ルーを使ったとはいえ、肉なしなのに旨味がかなり強い。
そしてトマトも入れてないのにめっちゃハヤシライスっぽい酸味。

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管孔が脂身みたいになって見た目だけちょっぴり豚肉っぽい。
しかし口に入れるとギョリッギョリと響くような歯触りで、なんだろう・・・ナメコの軸を超巨大化させたような感じに近いかも。

肉が全く入っていないのでビーフシチューと思ってもいけないしハヤシライスと思ってもいけないが、これはこれで普通に美味しい。
最初から最後まで美味しいと思って食べられたからこれはアリだろう。

この旨味と酸味、もっとシンプルに生かせないものか。

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そのまま食べられるベーコンの角切りと、倍くらいに角切りにしたたっぷりの生カンゾウタケを塩胡椒で和えて穴を開けたパンに盛って~

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とろけるチーズを乗せて焼いて~

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モリモリ食べてみる。

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おぉ

ピクルス使ってないのにピクルス入ってる味がする。
赤いキノコ汁が染みているが加熱はギリギリな感じなのでカンゾウタケのキノコ風味も歯触りもしっかり残ってる。
これはまずまずいけるね。
ただ、バゲット使っちゃいけなかった。もっとソフトなパンで作ったほうがバランスよくカンゾウタケが生きると思う。

ピクルスっぽくなるなら、そのまんまピクルスにしてみたらどうかね。

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フランスでは牛の舌と呼んでいるらしいが、外見だけでなく断面を見ていて納得してしまう。
しかし牛タンだと思って食べると投げたくなるのでそう考えてはいけない。

一瞬湯引きして雑菌だけ殺し、スライスしたものをワインビネガー、塩、胡椒、砂糖で適当に漬けて3日待った。

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液が真っ赤になった。

周りの酢のせいかカンゾウタケ自体の酸っぱさに違和感を感じない。
歯触りも適度なジャクジャク感で、これは何かのつけ合わせに使っても十分イケそうだ。
普通に美味しかったのでこのまま全部食べてしまった。

ピクルスは煮込みとは違った意味で力技っぽくも感じるのでもうひとつ試していた。

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チャーシューの切れ端みたいだけど、カンゾウタケの糠漬けです。
そもそもキノコの糠漬け自体あまり聞かないのだけど、自然に生じる酸味でうまくまとまることを期待。
丸のままサッと熱湯をくぐらせ、水分を切って糠床で4日寝かせた。

糠を軽く洗ってみると色褪せていたが肉質は意外としっかりしたままで切るのも容易。
切り付けてみるとパッと見キノコに見えない。

食べてみると、糠による乳酸発酵の酸味と元々のカンゾウタケの酸味が良い感じに混ざっているのだろうか、この酸味はトゲもなく嫌な感じがしない。
そして歯触りはピクルスよりもしっかりしていて柔らかめなザーサイのような感じか。
キノコの香りは元よりむしろ強く感じるくらいで、これはつまみになかなか良いのではなかろうか。

いずれにせよ酢が苦手な人にはどうしようもないキノコだなという結論ですが、体に悪い成分でもないならば活かして食べたいなと思える個性でしたね。
歯触りについては幼菌と老菌でだいぶ変わるので、生で食べる場合は若いものを使うと良いと思います。
肉と偽ってドッキリに使えそうだけど、そんなに生えまくるキノコでもないので吐き出されたら可愛そう。
素直にカンゾウタケはカンゾウタケ、断じて肉ではないと思って食べるのがいいかな。

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Comments & Trackbacks

  • コメント ( 14 )
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  1. 初めまして。
    過去記事に失礼致します。

    カンゾウタケ、当方には苦手な味でした。
    でも残った物を捨てるのもなぁ、と思い、
    たまたまその時、家にあった気の抜けたシャンパンに2~3日漬け込んだ所、
    苦手な酸味が爽やかな物に変わり、シャンパンの甘さと相まって
    アンズの様な、色も香りもデザートにぴったりな物になりました。

    新鮮なカンゾウタケにはそれ以来遭遇出来ていませんが
    収獲する機会があった時、次回は白ワインに漬けこんでみようと思っています。

    こんな食べ方もあるかも、と言う次第です。
    突然失礼致しました。

    • あれは特殊すぎて苦手な人が多いのも頷けます。
      煮込みはしたものの、単純にアルコールに漬けるというのは考えもしませんでした。
      感覚的には酢なんだけど、あの酸味の正体が何なのかも謎なままなのでいろいろやってみる価値はありますね。
      貴重な例をありがとございます。

  2. はじめましてこんにちは
    お酢っぽくて赤いのでしたら紫蘇との相性がいいのではないでしょうか。
    あとは蕪とか大根とか。

    • ドーモせつなです
      千枚漬けとかも大好きなので合いそうですね。
      しかも赤紫蘇や梅酢を使わなくても赤くなるのは間違いないですし。
      すごく時期も保存時間も限定的で調理が難しいキノコだけど、酢漬けの類は保存も効くのでカンゾウタケにはかなり使えそうです。

  3. 酸っぱい……ペカーン!
    タイ風にエビとぶっ込んでスープにしたら美味しそう♪
    ペカペカーン!はっ!?
    酢豚に偽装して知人にふるまったら楽しそうww

    • トムヤム風な何かは考えたんですが、どうにも煮るとてろんてろんなのでやめました。
      汁は赤くなると思われ、やりようによっては面白いものができそうです。
      酢豚は衣が剥がれそうで偽装が難しいかも。

  4. 肉と思ってはイカンゾウ
    と覚えておきます

  5. あらためてまぁ……なんでこんなに……ピンクなんでしょうねぇw
    スダジイからなに生成してんだが……

    • ちょっとピンクすぎですよね。
      あまりの違和感に一瞬固まりましたw
      スダジイもサクラみたいに皮から色素とれたりするんですかね。

  6. キノコスレイヤーさん、コンバンワ。
    カンゾウタケも食べた事なくて気になってるんですが、コレだけ探しに行くのもというタイミングに生えるのでご縁ありません。でもいつか食べたいので、調理例が非常に参考になりました!
    赤い液体もニンジャソウル感じますね(o^^o)

    • 中途半端な時期なんですよね。
      私も長年気になってたものに区切りがついてよかったです。
      赤い酢を使えばネオサイタマ風のスシも作れそうです。

  7. おもしろかったです!

    世の中にこんなキノコがあったなんて…!
    キノコを食べて酢とはまったく想像できないですね…

    それにしてもどう見てもたんぱく質にしか見えない!まったくもって肉じゃないですか(笑)
    色味がでてくるのはアレですけど、酸味をいかした料理には本当によさそうですね!
    ビーフシチューとかすごく美味しそうでした!

    • ちょっと酸味が~くらいじゃなくてほんとに酢だなって思うくらい酢ですねw
      すっぱ!ってほどではないのですが、苦手な人はとことん受け付けなさそうです。
      シチューがシチューにならないのでカンゾウタケで想像するシチューを作るのは不可能かもしれませんw

コメントしたければしてもいいのよ?(カエストハイッテナイ)

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