軟体動物門腹足綱前鰓亜綱盤足目ムカデガイ超科ムカデガイ科オオヘビガイ属オオヘビガイ。 殆ど日本全国の磯にいる貝だけど、貝だと知っている人は非常に少ない。 しかも日本近海と朝鮮半島にしかいないらしい。 不規則な形で岩壁についていて移動できない。
食事は粘液の糸のようなものを流して、くっついてきたものを手繰り寄せて食べるという変わり者。
そんな食性のおかげか、肝は殆どジャリつくこともなく、海藻臭さや腐肉食などの未消化物の懸念も不要だ。
探す時はこの特徴を踏まえて想像すると見つけ易いはず。
中身がスカのものはイソギンポなどの棲家になっているので、生きていると確認できるものを採っていく。
ちょいちょい殻を破壊してしまうので、割れてしまったものはその場で食べながら採り続ける。鳥の糞にしか見えないがw
パクリ。
口に入れると一気に来る濃厚な旨味。
腹足はコリコリとして甘味がありサザエを少し柔らかくしてツブと混ぜたような感じか。
肝のそれはカキに近いミルクっぽい旨味なのだが、白ツブの肝のような風味もある。
カキの場合は塩水を多く含んでいることもあり、潮の香りからミルク香にシャープに移行する感じだけど、オオヘビガイの場合は潮の香りと殆ど同時に超濃厚なミルク香と旨味がいきなり
ドゥンッ!!!
っとくる感じだ。
好んで食べている地域は非常に少ないそうだが、カメノテどころではない密度の低さなのであまり流行らなくていいと思う。
一般には塩茹でや酒蒸しが簡単。できあがり。
だよ?
殻の尻尾側を割って空気穴を開け、口から吸い出して食べるから「吸い口」とも呼ばれるが
殻が綺麗なやつじゃないとジャリジャリしたり、そもそも不規則な形なので尻尾のほうがうまく割れないものあったり。
たくさんある地域なら見本みたいな綺麗な個体も多くてやりやすいかもしれないけど、うちの近所だとそういうのは少ないので結局割って取り出して食べる。加熱すると千切れにくくなって食べ易いのだけど、あの強烈なミルク香がどっか飛んじゃうんですよね。
やっぱりエキスもだいぶ流れてるんだろう。
それでも、こんな小さいのに旨味の凝縮っぷりが凄い。
何の貝に近いとか、表現が難しい。
これだけを食べたらきっとそこそこ感動はするんだろうけど、先に生の衝撃を味わってしまうと霞んでしまう。
しかし浮遊物を拾って食べてるだけでこんな旨さが生まれるなんて、究極のリサイクラー。
出汁が勿体無いと思うので、加熱時に出るエキスも無駄にしたくない。ということで生で剥いてみた。
しかし殻の真ん中付近に貝柱で繋がっているので、どうしても千切れ易い。
・・・。
引きで見るとやっぱり大量の鳥の糞。
殻が混ざるので取り除く。
洗いすぎるとエキスも流れてしまうので流水は厳禁だと思う。
少量の水の中で洗って身を拾い出すか、少量の塩水や醤油ベースなどでサッと加熱して身を拾い出して上澄みも使うというのが良いと思う。30匹分にこんなに殻が混ざってた。
このまま料理してたらと思うとゾッとするね。
さて、とりあえず素材の味をシンプルに見たい。吸物。
見た目は肝吸みたいだが・・・上品すぎる。
なんかもっとこう、ガツンとくるものを期待していただけに、コレジャナイ感。釜飯。
実はこれが食べたかった。
黒バイのバイ飯が異常に旨かったので、超えるものを想像したらマガキガイとかオオヘビガイあたりしか浮かばなかった。
しかし普っ通ー。
あまりに普通すぎる。
旨味は確かに強いけどオオヘビガイである必要性を全く感じない、普通に巻貝系の釜飯だ。あれだけ面倒な思いをしてこれではなぁ。
たくさんあるならやはり塩茹で。
少量なら、やはり数段上の衝撃を得られる生食がいちばんのオススメだね。
無人島に流れ着いたら、とりあえずこれの生食で一時しのぎできそうだし。
磯遊びのときのおやつです。
そのあと、磯ツブとハヤトウリとツルナとハマエンドウの新芽を採って帰ります。
いい生活してますねぇ。
その生活の空気を忘れないでいられることを願います。